
求人に応募する際は、履歴書に加えて職務経歴書の提出が求められます。とりわけ研究職では、職務経歴書を通じて専門的な経験やスキルを的確に伝えることが大切です。本記事では、強みを効果的に示す職務経歴書の書き方を、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。ダウンロードして活用できるテンプレートも紹介します。
目次
研究職の職務経歴書のポイント
研究職の職務経歴書を作成するうえで押さえておきたいおおまかなポイントを紹介します。
| 1.研究職の提出書類は、履歴書と職務経歴書、論文概要や研究業績リストなど。研究業績リストには、主な論文、学会での発表、出版した書籍などを記載する。 |
| 2.職務経歴書には、研究内容以外に、分析手法や使用機器、プログラミングスキル、使用した経験がある統計解析ソフト、解析手法などまで記載。評価されるとは考えていなかったスキルでも採用のきっかけとなる可能性がある。 |
| 3.過去にどのようなポジションで研究業務をしていたか、組織構成を記載すると、自身が担当した研究内容について、より具体的に伝えることができる効果が期待できる。。 |
| 4.研究の具体的な成果(論文の被引用数、特許出願の有無など)、企業など外部との共同研究の実績や成果も記載することで、よりアピールにつながる可能性がある。 |
研究職の職務経歴書のテンプレート見本【テンプレート・ダウンロード】
研究職の人が職務経歴書を作成するときの見本を紹介します。必要に応じてテンプレートをダウンロードして活用しましょう。
職務経歴書の書き方見本
職 務 経 歴 書
20xx年xx月xx日現在
氏名 ○○ ○○
■職務要約
○○大学院修士課程において分子生物学を専攻し、おもにがん細胞の発生(エピジェネティクスとDNAのメチル化について)の基礎研究を行ってきました。公立△△研究所に在籍してからは、造血管細胞・CD分子といった、免疫系に作用する化学物質の解析を中心に担当しております。
■職務経歴
□20xx年xx月~20xx年xx月 ○○大学
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期間 |
業務内容 |
| 20xx年xx月
~ 20xx年xx月 |
転写制御のモデリング因子分析 |
| ・クロマチンの構造変換解析 ・DNA精製 |
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| 研究員5名 | |
| 20xx年xx月
~ 20xx年xx月 |
葉緑のDNAメチル化と遺伝子発現 |
| ・共同研究の技術担当 ・実験計画の作成・実験手法の開発 ・特異発現の発生条件についての検討 ・分子生物学雑誌への準備 |
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| 研究員5名 |
□20xx年xx月~現在 公立△△研究所
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期間 |
業務内容 |
| 20xx年xx月
~ 20xx年xx月 |
可溶性蛋白の解析 |
| ・免疫組織学的解析 ・DNAクローニング ・分子機能解析(RT-PCR) |
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| 研究員7名 | |
| 20xx年xx月
~ 現在 |
VEGF発現の制御機構分析 |
| ○○大学との共同プロジェクト ・受容体(アロマターゼ)の変化検索 ・創傷治癒時のVEGF発現の詳細検討 |
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| 研究員6名(大学側から2名参加) |
■活かせる経験・知識・技術
習得手技
植物細胞培養(XXX法)、結合たんぱく質の精製、電気泳動、DNA抽出、酵母遺伝子シークエンス、DB開発、HPLC(XX法)、PCR(XX法)
取扱機器
SANYO MCV-B131F、TOMY MX-150、ZEISS AIS2、OLYMPUS CK40、3100 Genetic Analyzer、7700HT Detection System,Multimek96/386, Millipor MiliQ Jr, Marubishi MDL500, Akta Explorer, KURABO PI-100S, bio-craft MJ-300E, TAITEC BR-160LF, Applied Biosystems GeneAmp PCR9700, Ventana Japan Ventana NX, ThermoShandon Cytospin4, Leica SM2000R
マネジメントスキル
20xx年にリーダー、20xx年にマネージャーとなってからは、個人業績だけでなくチーム、グループの業績やモチベーションをいかに最大化できるかを常に意識しております。メンバーの行動管理を徹底しながらも、業務量が多いために体調管理やモチベーションの維持をグループ独自でノー残業制度を導入したり、自らの提案で支社の表彰制度にグッドプラクティス賞を導入したりすることで図っておりました。結果、競争の激しい新橋エリアにおいても高い達成率を実現しました。
■論文・特許・学会発表
・特許出願 8件(うち外国出願1件)(cf. WOxxxx/xxxxxx)
・学会発表
「○○○○の理論解析と最適化条件の実証的検討」第○○回○○○○学会、東京、20xx年xx月
「○○○○の構造と活性」第○○回○○○○学会、大阪、20xx年xx月
・論文
「○○○○と○○○○の構造活性と変質の関係性」○○○○研究雑誌、132、○○○○学会、20xx年xx月
■資格
・TOEIC 720点(20xx年xx月)
■自己PR
遺伝子学・免疫組織学的アプローチを得意としており、プロジェクト内でもプロジェクトリーダーから頼られる存在でした。実験の効率性の改善を常に意識してプロジェクト全体を見る目を養いました。また大学時代から所属していた研究室が積極的に他大学との交流や、産学協同研究を進めていたこともあり、多くの方との研究をしてきました。新しい環境には早く順応できると思います。
以上
研究職の職務経歴書の構成
研究職の職務経歴書を構成する要素を紹介します。
1.職務要約(概要)
これまでの職歴を簡潔にまとめます。自分のキャリアをひと言で表すとしたらどうなるかを意識し、100字程度で要約しましょう。
2.職務経歴(詳細)
これまでの業務内容について、「いつ」「どこで」「誰に対して」「何をしてきたか」を明確に記載します。具体的には、在職時期(期間)、会社名、企業規模・組織規模・チーム規模、事業内容、担当業務・ポジション・役割などを整理します。数字を用いて実績を示すと効果的です。
3.活かせる経験・知識・技術
業務で使用した分析手法や使用機器、プログラミングスキル、使用した経験がある統計解析ソフト、解析手法などを詳細に記載します。実績や成果を上げるために工夫した点や、業務において心がけていること、実務を通じて磨いたスキルなども端的にまとめましょう。
4.資格・スキル
応募先の業務に関連する資格やスキルは必ず記載しましょう。関連しないと思われるスキルでも、可能な限り記載するとよいでしょう。
5.自己PR
文章または箇条書きで、自身の強みやコアスキルを示します。箇条書きなら3点程度、文章なら5行以内を目安にすると読みやすくなるでしょう。
研究職の職務経歴書の書き方
研究職の職務経歴書の書き方を説明します。
「研究テーマ」「研究実績」を示す
研究職の採用では、「研究テーマ/専門分野」「研究実績(論文・特許出願の数や内容など)」がチェックされます。とりわけ応募先の業界や応募するポジションと関連する経験・スキルは、漏れなく記載しましょう。
「共同研究」「リサーチ活動」があれば盛り込む
他機関や他大学、ベンチャー企業などとの共同研究は、評価につながる可能性が高いため必ず記載しましょう。また、学会参加や論文調査など、最新知見をキャッチアップするリサーチ活動も、「活かせる経験・知識・技術」に盛り込むと効果的です。
ポータブルスキルもアピール
以下に挙げるスキルや経験は、特定の業界・職種や研究分野に関するものではありませんが、どのような環境でも活かすことのできるニーズの高いポータブルスキルです。少しでも経験があれば、記載しておくとよいでしょう。
●プロジェクトマネジメントの経験
「研究テーマリーダー」や「研究プロジェクトリーダー」として社内外のメンバーをとりまとめた経験は高評価につながる可能性があるでしょう。
●社外活動の経験
専門学会、さまざまな国や企業が参加する標準化委員会、政府の分科会などに、自社を代表して参加した経験など、社外での活動もアピールにつながることが期待できます。
●英語などの語学力
英語論文の執筆・査読、海外特許出願、国際発表などの語学力のアピールにつながる経験や語学検定のスコアなどがあれば、記載するようにしましょう。
学生時代の研究テーマ・研究業績も明記
研究職の応募では、職務経歴に加えて学生時代の研究テーマや研究業績も評価対象となるため、記載した方がよいでしょう。学生時代の研究テーマと研究業績は、職務経歴書の後半に以下のような形式で記載します。
<学生時代の研究テーマ>
学生時代の研究テーマは、その分野での基礎力・基礎知識や専門性の深さ、研究テーマの一貫性が伝わり、指導を受けた大学・大学院の教授から推察される研究職としてのレベル感や信頼性も示される情報として、研究職の選考に大きく影響を与える可能性があります。以下の要領を参考に記載するとよいでしょう。
- ○○大学大学院(博士)○○研究科○○専攻(博士課程)(○○研究室)
研究テーマ/博士論文について - ○○大学大学院○○研究科○○専攻(修士課程)(○○研究室)
研究テーマ/修士論文について - ○○大学○○学部○○学科○○(○○研究室)
研究テーマ/卒業論文について
<研究業績>
研究業績は、「原著論文」「総説」「学会発表(国際/国内)」に分けて記載しましょう。なお、「総説」には、本、紀要を含みますが、単なる学会発表に伴う紀要は除きます。
- 原著論文
申請者に下線を引き、全員の著者名/発行年/タイトル/雑誌名/号数/ページ数/査読有無を記載。 - 総説・本
申請者に下線を引き、全員の著者名/発行年/タイトル/雑誌名/号数/ページ数/査読有無を記載。 - 国際学会発表
発表者の前に○印をつ付けて、申請者に下線を引き、全員の名前/発表タイトル/学会名/日付/場所を記載。 - 国内学会発表
発表者の前に○印をつけて、申請者に下線を引き、全員の名前/発表タイトル/学会名/日付/場所を記載。 - 知的財産
特許出願の実績なども追記しましょう。なお、その際は、筆頭者についても明記します。 ・国外特許 出願/国外特許 登録 ・国内特許 出願/国内特許 登録 ※筆頭者を明記します。 - 研究費・助成金の獲得実績
科学研究費助成事業 や財団からの助成金事業などから研究費や助成金を受給した実績があれば、追記します。
<記載例>
科学研究費助成事業(科研費) 若手研究(x)
「新規○○分子の構造解析と機能評価」
研究代表者, 20xx年x月〜20xx年x月, 総額 x00万円, 日本学術振興会
提出前に最終チェック
提出前に、以下についてチェックしましょう。
□ 誤字脱字がないか
□ 入学/ 卒業や入社/ 退職などの年月を間違えていないか
□ 見出しやタイトルがあり、読みやすいレイアウトになっているか
□ 日付や氏名など基本的な項目が抜けていないか
□ 文章は誰が読んでも意味が分かるように書けているか
□ 具体的な工夫が入っているか
□ 履歴書など他の応募書類の内容と齟齬がないか
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。