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魅力は「投資額」と「社会的インパクト」の大きさ。自動車業界が今、そしてこれから求める人材

シニアコンサルタント
所 寿紀

在アメリカ日本大使館にて勤務、帰国後、大手半導体メーカーの商品企画課にての商品企画、技術営業を経験。
リクルート(旧:リクルートキャリア)に入社後、技術専門領域のキャリアアドバイザー、関西大手企業の営業を経て、東海圏の製造業担当サーチコンサルタントを担当。現在は、東京本社にて自動車専任のシニアコンサルタントとして、ハイキャリア領域のコンサルティングを行う。

制御系エンジニアの転身が続々。データサイエンティストも動く

自動車業界といえば、一昔前までは主に機械系エンジニアの職場でした。しかし、次世代自動車の開発が進むにつれて、電気・電子、化学、ソフトウェアと、幅広い領域のエンジニアが集まってきています。

近年、特に採用が進んだのは、組み込み・制御系エンジニア。
自動運転の開発が実用化に向けて加速していく中、自動車の「目」となる画像認識のアルゴリズム開発、「手足」となる制御システムの開発といったポジションでの採用が活発化しました。
特に、家電・民生の領域からの転職者が多数。「自動車は莫大な投資のもと技術革新が進んでいく。市場が大きく、社会にインパクトを与えられる」という点に魅力を感じ、2016年~2017年にかけて多くのソフトウェアエンジニアが自動車業界に移っていきました。

また、自動車の「頭脳」ともいえる経路生成のアルゴリズム開発を担う人材として、データサイエンス・機械学習・数理統計などに精通し、ビッグデータ解析による最適化問題に取り組んできたエンジニアも求めています。担う役割は、まだ世に出ていない自動運転のシステムにおいて、どのような環境下でどのようなデータが収集でき、どんな環境を構築していくかのシミュレーション。民生品とは異なり、とめどなくデータが入ってくるため、大規模なデータをさばいて最適化する分散コンピューティングの知見も活かせるポジションです。

こうした「データサイエンティスト」についても、採用事例が生まれつつあります。
実際に転職を果たしているのは、インターネットサービス企業やSIer、ITベンダー、電機メーカーなどでビックデータ解析に取り組んできた経験者。 車における判断は、より高速で行わなければならないため、「難易度が高い課題を解決したい」と、チャレンジ精神を持って転職するエンジニアもいらっしゃいます。

一方、「コネクティッド」の領域でも新たな人材ニーズが発生しています。
車のセンサーがインターネットに接続されることで、車は人、クラウド、インフラ、他の車など、あらゆるものとつながる「ネットワーク・プロダクト」へと進化していきます。これに伴い、ネットワークインフラ開発、無線通信開発、セキュリティー開発などの採用が進んでいます。

これから求められるのはサービス開発を担うWeb系エンジニア

では、これから自動車業界が求めるようになるのはどんな人材か。
それは、コネクティッドカーの価値を高めるためのサービス開発を担う人材です。

コネクティッドカーが提供する機能の一例を挙げると、シンプルなところでは、走行中に近隣のレストランを探す、目的地に向かう途中に席やチケットの予約ができる、燃料が少なくなったら近くのガソリンスタンドへ自動的に案内する、など。
そしてさらに進化を遂げていくと、車中での会話などをもとにドライバーや同乗者の好み・希望を把握し、それに合う目的地を提案してくれるようにもなります。

コネクティッドカーは、ドライバーが自主的に操作をしなくても、音声、体温、心拍数、スピード、現在地情報などを取得し、データセンターに蓄積。データマイニングによってドライバーの意図や状態を分析・推定できるため、どんなアプリケーションにつなげていけばいいかを考えられる人材が求められています。

自動運転が進化するほど、車は「交通手段」だけでなく「自分らしく過ごす空間」となっていきます。そこで何ができるかを考え、サービスとして実現していく人材のニーズはこれから顕著に表れてくるでしょう。今は「サービス開発」などの名称で呼ばれていますが、新たな職種名が生まれてくるかもしれません。

そして、これを担う人材要件として挙げられているのは、インフラ領域もしくはWebアプリケーション領域で高い専門性を持っている方。そして、自ら手を動かして構築ができる人です。多くの部署と協力して推進する必要があるため、組織を横断しての連携力、根回し力、調整力なども重視されます。

最近では、大規模ECサイトでプラットフォームの構築を手がけていた方、ミドルウェアやUI/UXの知見を持ちゲームの開発を手がけてきた方が完成車メーカーに迎えられました。

「環境・風土が違うのでは?」の不安は解消されるのか

このように自動車業界にとってIT系人材の獲得は必須の命題となっています。
しかし、IT業界に身を置く方にとって、メーカーは未知の世界。「環境」「風土」が大きく変わることへの不安の声が聞こえてきます。実際はどんな状況なのでしょうか。

「ITの開発環境は十分に整っているのか?」
これについては、正直なところ、IT業界に比べて遅れをとっています。しかし、遅れているがゆえに柔軟に導入していく姿勢があるようです。実際にIT業界から完成車メーカーに入社した方にお話を伺ったところ、「○○がまだ導入されていないことに驚いたが、提言するとすぐに導入してもらえた」とのこと。投資には積極的であるため、エンジニアが「必要」と声を上げれば、その判断が尊重され、叶えられるということです。「自分たちで理想の環境を創り上げていきたい」という方には、むしろ面白い環境といえそうです。

「本社のある地方に移住しなければならないのでは」
どの会社も首都圏に拠点を持っています。「IT人材の採用がしやすい」という背景もありますが、最先端の情報を求めるエンジニアたちが、それを入手しやすい環境に身を置けることを重視しているのです。ただし、車の走行テストコースは本社にありますし、キャリアを積んでいくプロセスで、いずれ本社勤務を命じられる可能性はあるでしょう。

「堅い習慣や制度に縛られないか」
テレビなどで目にする「メーカー」の様子から、制服を着なければならない、朝礼では全員でラジオ体操、勤務時間が厳密に決まっている…など、堅苦しいイメージを持っている方も見受けられます。実際には「朝8時にラジオ体操」といった実情はありませんし、服装も自由です。勤務時間についてもフレックスタイム制の職場が多いようです。

「体験を設計する」ことで、価値を創出する

2035年、発売される新車の9割以上がコネクティッドカーになるという予測があります。その頃には、車はパーソナライズされ、所有者にとって、より愛着あるパートナーとなっています。

そうした次世代に向け、幅広い業種が自動車業界に参入しています。「今後車のマーケットを制するのは自動車メーカーではなくグーグルなのでは」などという声もあります。実際、車の購入やシェアリングサービスの利用にあたり、グーグルのプラットフォームが搭載された車を選ぶ消費者も多くなるのではないでしょうか。

そうした中で、自動車メーカーの優位性は、UXに対する姿勢にあると考えています。ドライバーやその家族が満足できる「ユーザー体験」をいかにして提供するか。それを重視して仕様を創っていけるのは、やはり自動車メーカーならではといえるでしょう。
「体験を設計する」ことで、ユーザーを満足させ、ファンを増やしていくこと、自分が手がけた車が街中のいたるところで目にできること――それが次世代自動車の開発に携わる醍醐味だと思います。
「第一人者」となれる今、業界を飛び越えて新たなキャリアを開拓してみてはいかがでしょうか。

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