マネジメント人材のニーズが増大しています。次世代リーダーやマネジメント層の社内育成に課題がある中で、人事戦略の一つとしてタレントマネジメントを自社に導入・活用する企業が増えており、管理職の中途社員採用を積極実施しているところも。そこで今回はマネジメント層に求められる経験・スキルや、その評価方法を解説。効果的な採用に必要なこと、把握しておくべきこともご紹介します。

管理職・マネジメント層が転職を考える理由

能力が正しく評価されず、やる気を失っている

株式会社リクルートキャリアが、2019年に実施した調査では、転職意向のある管理職のうち49.8%の人が「仕事の達成感が感じられない」ことが転職活動のきっかけになったと回答。「自分の仕事が評価されていないと感じる(44.9%)」「上司のマネジメントへの不満(44.9%)」も4割を超える結果になっています。

一方で、転職先選びで重視することは、「自分の専門性を活かすことができる(69.5%)」「仕事の成果や業績が正当に評価される(60.7%)」。これらを総合すると、マネジメント層が持つ能力や専門性を正しく評価できておらず、社内で十分に活かされていない実態がうかがえます。

図1/図2 出典:~課長以上の役職に就く管理職に聞いた、転職の意向とは?~ 半数が「仕事の達成感」を感じることができず転職を意識ハイクラス転職サービス『CAREER CARVER』アンケート集計結果

管理職・マネジメント層の業務が難しくなっている要因

メンバーの価値観が多様化している

管理職の大きな役割は、メンバー(部下)を育成し、仕事の成果を最大化することです。しかし、女性の社会進出、グローバル化、少子高齢化などを背景に、かつてよりも多様なバックグラウンドを持つメンバーが組織に集うようになりました。そのため、全員一律のマネジメントが通用せず、一人ひとりの価値観や志向性の違いを尊重した仕事のアサインや育成支援が求められるようになっています。

社会の激しい変化に晒されている

また、内部環境だけでなく、社会全体に目を向けてみても現代は変化の激しい時代です。象徴的なマネジメントの変化は、新型コロナウイルス感染拡大によってリモートワーク(テレワーク)が一気に広まったことが挙げられます。距離の離れた場所でメンバーをマネジメントすることは、これまでの多くの人にとって経験がありませんでした。このような急激な変化が起きる中で、これまで培った経験・スキルだけでは乗り越えられない局面も増えています。

育成が追い付かないまま、期待値だけが上がっている

上記のような環境の変化に対応していくためには、新しいスキルを獲得する必要があります。しかし、企業によっては管理職への支援が十分でなく、本人に“丸投げ”しているところもあります。その状態で「メンバーの多様性に向き合う」ことや「リモートワークに対応する」ことも求められれば、マネジメント層は疲弊してしまいます。
難易度が以前よりも上がっているからこそ、企業がマネジメント人材に不足感を感じるのも当然で、社内外からマネジメント層の体制強化を行おうとしているのが今の実態と言えます。

管理職・マネジメント層を社外から採用するメリットと注意点

即戦力の人材を配置できる

一番のメリットは、管理職の経験・ノウハウを持つ人材を配置できることです。社内の若手社員からも将来の管理職候補は育てていくべきですが、急にポストに空きが出た場合など育成が追い付いていない時には効果的な手段と言えます。

社内にはない知見を獲得できる

新規立ち上げなど、社内に知見があまりない部門の責任者は、外部から招聘することは有効な選択肢の一つと言えます。例えば、近年ニーズが高まっているデジタルトランスフォーメーションの推進部門に、ITコンサル出身者を採用するようなケースです。また、ダイバーシティ&インクルージョンの観点からも多様な人材のマネジメント経験がある方や、様々な人材観・キャリア観を社内に取り入れることは効果的です。

既存社員からのハレーションが起きるリスクには注意

一方で、社外からマネジメント層を採用することにはそれなりのリスクもあります。代表的なのは、管理職を目指している既存社員のモチベーションを下げてしまいかねないことです。また、転職してくる管理職にとっても、一からメンバーとの関係を築くことになりますので、採用にあたっては転職者・既存社員双方との丁寧なコミュニケーションが必要です。

管理職・マネジメント層の採用方法

効率を追求するなら、対象を絞ってマッチングするサービスが有効

一般のポジションを採用する場合と同様に、求人媒体、人材紹介(転職エージェント)、ダイレクトリクルーティングなどを活用でき、どれが効果的かはケースバイケースです。ただし、管理職は必然的に求める人材要件が多岐に渡り、条件にあてはまる人は限られるもの。大量の母集団から募集するのではなく、限られた条件にあてはまる人材の方だけに出会いたいという効率性を追求したい場合は、人材紹介やダイレクトリクルーティングなど、ピンポイントで出会えるサービスを選定する方が良いでしょう。

人材紹介とヘッドハンティングの違い

また、採用コストは高くなる傾向にありますが、ハイキャリア人材やエグゼクティブにフォーカスしたサービスを活用するのも効果的です。そうしたエグゼクティブ向けのサービスに多いのが、「ヘッドハンティング」です。これは、人材紹介とは性質が少し異なることも押さえておきましょう。
企業と求職者の間に人が介在することは共通していますが、人材紹介は、転職を検討している登録会員の中から条件にマッチする人を紹介するビジネスモデル。対するヘッドハンティングは、自社の人材データベースに登録されている人に限らず、様々な人脈を駆使して広く世の中から希望に合う人を探し、口説くサービスです。対象が転職顕在層だけに限らないため、企業にとってはそれだけ幅広い人の中から探せるのもメリットですが、その分成果報酬フィーは高くなる傾向があります。

管理職・マネジメント層採用を成功させるポイント

役職名などの表面的な情報よりも、具体的な経験内容を把握する

例えば、同じ「課長」という役職の人でも、企業規模、業種、企業のカルチャーによって経験してきた内容は千差万別です。メンバー30名の課長であれば、課内に主任やリーダーといった役割を間に設けるチーム体制だった可能性が高く、メンバー5名の課長であれば自分も直接顧客を担当するプレイングマネージャーだった可能性もあります。役職名に惑わされず具体的な業務内容を把握しましょう。
同様に、自社の課長でも部門によって求められるスタイルが変わってくるはずです。求人情報などには募集組織の規模や体制などを詳細に記載して、業務の実態を求職者に伝えましょう。

自社のカルチャーにフィットするか、相互理解を丁寧に進める

管理職は経営をはじめとした上層部と現場のメンバーの橋渡し役。どんなに経験・スキルを満たしている人であっても、価値観や志向性が合わなければ、経営ビジョンや経営戦略を正しく伝えられなかったり、メンバー育成の方向性がズレてしまったりといったことが起きる危険性があります。
カルチャーフィットはどんなポジションの採用においても重要ですが、管理職の場合はその影響度も大きく、より慎重な検討が必要です。面接で特に丁寧に確認を行ってください。例えば、職場見学で現場の雰囲気を伝えることや、上司になる方とのコミュニケーションの場を設けたりと、多面的にお互いの理解を深めて見極めるプロセスが大切です。

管理職・マネジメント層の採用成功は企業の大きなプラスに

事業成長のキーパーソンとなる可能性も

最後にお伝えしたいのは、管理職の中途採用は、組織の変革を促すカンフル剤になりえるということ。部門のトップが入れ替わることは、低迷していた組織に風穴を空けるのには効果的です。また、敢えて異業種から管理職を採用することで、業界の慣習にはとらわれない斬新な視点のアイデアを取り入れ、競合にはないサービスを生み出したケースもあります。
ただ、ここまでお伝えしたようにマネジメント層の採用はその進め方を間違えると組織の崩壊を招く劇薬にもなってしまうため、安易な採用は逆効果です。管理職・マネジメント層の採用に長けた採用パートナーに相談しながら、丁寧に進めていくことをおすすめします。

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