目次
コミュニケーション能力とは
コミュニケーション能力とは、「対人的なやりとりにおいて、意思疎通、協調性、自己表現能力」のことで、「人との関係性を築く能力」ともいえるものです。コミュニケーションの語源は、ラテン語の「コミュニス(Communus)」から来ており、「共有」「共通」を意味しているといわれています。
※出典:厚生労働省『「YES-プログラム」 (若年者就職基礎能力支援事業)
の対象講座(254講座)・試験(29試験)を新たに認定』(2009年3月)
コミュニケーションの種類
コミュニケーションには、大きくわけて「言語」「非言語」の2つがあります。
言語コミュニケーションは、意見、意思、考え、価値観、知識、感情などを言葉で伝えるコミュニケーションです。また「伝える」だけでなく、伝えられた内容を受け取って理解する「聴く」スキルも必要となります。
非言語コミュニケーションは、身振り、手振り、表情、視線、声のトーンなど、言葉以外の部分で情報を発するコミュニケーションです。「目は口ほどに物を言う」ということわざもありますが、非言語コミュニケーションは言葉以上に大きな役割を果たすといわれています。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが非言語コミュニケーションの実験で導き出したのが、「7-38-55のルール」とも呼ばれる「3Vの法則」です。この実験では、人に与える影響の割合は、会話内容である「言語情報」が7%、声の大きさや話すスピードなどの「聴覚情報」が38%、表情や視線など見た目や仕草による「視覚情報」が55%であると導き出しました。このメラビアンの実験でわかったことは、言葉と口調・表情などが一致していない場合、人は表情やパフォーマンスを優先して判断する傾向にあるということ。無意識のうちに、非言語コミュニケーションを重視しているともいえるでしょう。
コミュニケーション能力を構成する4つの要素
コミュニケーションには、「伝える」と「聴く」の2種類があり、それぞれに言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションがあるため、計4つの要素で構成されています。
1.言語×伝える
考えを論理的に伝える力、相手を説得する力、プレゼンテーションする力、相手の感情に訴えかける力、相手の理解力に合わせて説明する力のことをいいます。コミュニケーションの場や相手に応じて使う言葉や伝える内容、順序などを工夫することで、より正確に効果的に情報を伝えることができます。
2.言語×聴く
相手の話を深く理解する力、話の要点を押さえて聴く力、ニーズを引き出す力、相手の立場を考えて気持ち良く話をさせる力、相手に共感して寄り添う力のことをいいます。相手が話しやすいように「聴く姿勢を持つ」「話を促す」「質問する」といったコミュニケーションにより、会話を深め、相手のことを理解することにつながります。
3.非言語×伝える
コミュニケーションの中で、ジェスチャーや表情、声の調子などを変えることで、相手に親近感や安心感を与えたり、感情に訴えかけたりする力のことをいいます。
4.非言語×聴く
相手のしぐさや声のトーン、文脈などから、具体的な言葉としては表れていない相手の本当の想いをくみ取る力のことをいいます。わかりやすくいうと「空気を読む力」とも言い換えられます。「言葉と表情があっていない」「声のトーンが乱れている」といった微妙な変化に気づくことで、コミュニケーションをより深めていくことができます。
コミュニケーション能力が高い人の特徴
コミュニケーション能力が高いと呼ばれる人には、どんな共通点があるのでしょうか。先ほど述べた4つの要素ともリンクした以下のような特徴があるといえます。
「伝える」だけでなく、「伝わる」ことを重視している
コミュニケーションには必ず相手がいますので、単に自分のいいたいことを伝えればいいわけではなく、相手がきちんと理解できるように「伝わる」コミュニケーションをする必要があります。具体的には「伝えるべきポイントを明確にした上で伝えている」「相手に伝わる言葉や話し方を選ぶ」「相手の興味を引く話の引き出しをもっている」などの特徴があります。
傾聴のスキルが高い
傾聴とは、単に話を「聞く」のではなく、相手の話に丁寧に耳と目と心を傾けて、真摯な姿勢で相手の話を「聴く」会話の技術です。このスキルを活用することで、相手を深いレベルで理解できるようになり、信頼関係を構築しやすくなります。傾聴力はコミュニケーション能力の一つといえます。
傾聴については、下記の記事をご参照ください。
・ビジネス力を高める「傾聴」とは?効果や種類など傾聴力を高めるトレーニング方法
身振り手振りや話し方なども意識している
たとえばプレゼンテーションをする際、提案する内容だけでなく、身振り手振りを交えたり、話し方や話すスピードを意識したりすることも重要になります。こうした言葉以外の情報も含めて、相手に伝わるような工夫ができることもコミュニケーション能力の一つといえます。
相手に興味・関心を持つ
相手の言葉を深く理解し、相手の非言語コミュニケーションから本当の想いをくみ取るには、何よりも大切なのが相手に興味・関心を持つことです。相手を知ろうとすることで「具体的にはどういうことですか」「もっと詳しく教えてください」といった質問につながり、より深いコミュニケーションが生まれていきます。また興味・関心を持って相手を観察することで、表情や声のトーンの変化に気づいたり、相手の感情を敏感に受け取ったりすることができます。
コミュニケーション能力が低い原因
コミュニケーション能力が低い理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
相手の話を最後まで聞かない
コミュニケーションは、会話のキャッチボールが基本となります。相手の話を途中で遮ってしまうと、結論まで聞かないためにピント外れの会話になってしまったり、自分のいいたいことばかりをいって相手にフラストレーションを与えてしまったりして、コミュニケーションが成立しにくくなります。
伝えたいポイントが明確ではない
コミュニケーションを取る意思があっても、うまく伝えられない人もいます。話の内容が伝わりにくい理由としては、自分の中で会話の目的や伝えたいポイントが明確になっていないため、話の内容がわかりにくくなってしまうといった原因が考えられます。
相手に興味・関心を持てない
興味・関心が持てないと、相手の話をしっかり聴く姿勢が持ちにくくなります。相手の話を聞かなければ、話の内容を理解したり、相手の本音を引き出したり、的確に自分の意見を主張したりすることも難しいものです。また、興味・関心のない態度は相手にも伝わるため、有意義なコミュニケーションは生まれにくくなります。
相手の立場や考えを理解できない(しようとしない)
自分の価値観や立場ばかりを押し付けていては、双方向のコミュニケーションにはなりません。相手の話に耳を傾けて、自分とは違った意見も理解しようとすることがコミュニケーションの基本となります。
コミュニケーション能力を上達させる効果的な方法
コミュニケーション能力の基本は相手との意思の疎通にあります。常に相手の立場になって物事を考え、相手の伝えたいことを受け止めること、自分が話す時には相手に伝わるように意識することが何よりも重要です。コミュニケーションを構成する「伝える」「聴く」を上達させるために、今すぐ実践できる効果的な方法をご紹介します。
伝える力を磨く
相手に伝えるための技術として、まず結論から伝え、それを説明する情報として5W1H(When:いつ、Where:どこで、Who:だれが、What:何を、Why:なぜ、How:どのように)を付け加えることでより具体的にイメージさせることができます。相手が理解できるように、専門用語をつかわず、たとえ話などを交えるのもいいでしょう。また、一方的に話すのではなく、話の途中で「どう思う?」など相手の反応や理解度を確認しながら、会話の方向性を意識することも大切です。
話し方の練習方法としては、「エレベータートーク」というものもあり、エレベーターに乗っているわずか数十秒の短い時間の中で、自分のいいたいことを簡潔にわかりやすく相手に伝える会話術のことです。短い時間で伝わるよう「伝えたい要点を明確にする」「結論から先にいう」「相手のメリットを伝えるなど相手に興味を持ってもらう工夫をする」といったスキルが磨かれます。
聴く力を磨く
「傾聴力」を磨くトレーニング方法には、「相槌や頷きを返す」「アイコンタクトで反応する」「相手の言葉をそのまま返すオウム返しや相手のジェスチャーを真似するミラーリングをする」といったものがありますので、ぜひ以下の記事をご参考ください。
ビジネス力を高める「傾聴」とは?効果や種類など傾聴力を高めるトレーニング方法
先ほどの5W1Hは質問をする際にも有効です。5W1Hを活用して問いかけることで、より情報が深まっていきます。また、相手に話してもらう方法として、自分から情報を開示するという手段もあります。まずは自分がオープンに話すことで、相手が安心し、心を開いて話がしやすくなるからです。
仕事におけるコミュニケーション能力を高めるコツ
報連相
一緒に仕事をしていく上で重要となるコミュニケーションが「報連相」です。必要なタイミングで必要な報告・連絡・相談を行うことが求められるため、伝える目的を明確にして、相手に正確に情報を伝える、基本的なコミュニケーション能力を高められます。メールやチャットで報連相をする際には、的確な文章力も必要となります。
議事録
打ち合わせや会議の内容をまとめて、多くの人に共有する議事録。一見すると簡単な業務に見えますが、情報を分類・整理し、読み手を意識してわかりやすく伝えていく力が磨かれるため、新人教育の一環として取り入れる企業もあります。
プレゼンテーション
伝える力を磨くために非常に効果的なのが、言葉だけでなく、身振り手振りや声のトーン、資料の内容など、言語・非言語でのコミュニケーション能力をフル活用して相手に伝えるプレゼンテーションです。正確に情報を伝えるだけでなく、わかりやすく、相手の興味をひくコミュニケーション能力が磨かれます。
コミュニケーション能力は、仕事においても、日常生活においても、良好な人間関係を構築する上で重要となるスキルです。言語コミュニケーションだけでなく、非言語コミュニケーションも意識して、実践で取り入れてみてください。