現在、さまざまな企業がAIを導入し、業務の効率化や新たな商品・サービスの創造に取り組んでいます。従来、人事業務でAIを導入するのは難しいとされていましたが、技術革新が進むに従い、エントリーシートなどの書類選考や面接の効率化を目的にAIを導入する企業が増えています。ここでは現在、採用の領域でどのようにAIが活用されているのか、事例とともにご紹介します。

採用業務でAIは何ができるのか?

現在、製造業、金融業、サービス業、流通業などの幅広い業界でAI(人工知能)が活用されています。活用目的は事業成長、新たな付加価値の創造、業務効率の向上、コスト削減などさまざまです。総務省 財務局の調査によると、利用側の先端技術(IoT、AI等)の活用目的で最も多いのは、業務効率の向上(従業員の負担軽減)、次いでコスト(人件費、保守費用等)の削減となっています。

出典:財務省「財務局調査による「先端技術(IoT、AI等)の活用状況」について」2018年

人事の領域でも「HRテック(Human ResourcesとTechnologyを組み合わせた造語)」という言葉に代表されるよう、AIなど最先端の技術を導入することで、採用、人材育成、評価などの人事に関わる業務を効率化していこうという動きが始まっています。

市場調査・コンサルティングを行う株式会社シード・プランニングによると、HRテック市場規模は年々伸びており、2021年は1.716億円、2025年は3,278億円と予測されています。

出典:株式会社シード・プランニング「HRテクノロジーの現状と将来展望 2021年版」

改めて「AI」とは

「AI」は「Artificial Intelligence(人工知能)」の略で専門家の間でもさまざまな定義があり、「画像認識」や「音声認識」、「自然言語処理」、「機械学習」など、150~200もの技術で構成されています。中でも、コンピュータが過去のデータをもとに学習し予測や分析などを行う「機械学習」やコンピュータ自らが大量のデータを反復的に学習しパターンを見つけだし、それを利用して新たなデータを分析したり予測したりする「ディープラーニング」などは、近年、注目が集まっている技術分野です。特に「ディープラーニング」は、必要なデータさえ用意すれば、自ら学習に必要となる特徴量を抽出できるため、より複雑な構造のデータでも精度の高い分析・予測を行うことが可能になると期待されています。

採用領域におけるAI活用

採用の領域では、書類選考や面接にAIを活用した「AI採用」を行う企業が増えています。株式会社ヒューマネージが企業の採用担当者向けに実施したアンケート調査結果によると、新卒採用においてAI採用を導入済、あるいは準備中・検討中とAI採用を積極的に取り入れようとしている企業が全体の26.3%を占めています。

採用予定人数別にみると、採用予定人数が101名以上の企業は、「既に導入している15.6%」、「導入が決まり準備中 2.2%」と全体の17.8%(約5社に1社)は、導入済・導入準備中と採用人数が多い企業ほど積極的に採用にAIを活用している動きがあります。

出典:株式会社ヒューマネージ 「AI採用に関する企業アンケート調査」2018年8月30日調査

採用業務のなかでも過去のデータ蓄積がなされている書類選考は、活用されることが多いとされている業務です。

「ディープラーニング」の技術を使い、過去の応募者の書類から合格者の情報をAIに学習させ、自社に適性の高い人物像を認識させます。その蓄積されたデータを活用して新規の応募書類の中から自社にマッチした候補者を絞り込んでいきます。現段階ではAIだけに頼るのではなく、AIが判定した後に再度人による選考を行うなど、AI+人での運用を行っている企業が多いようです。

採用にAIを活用した企業

AIを積極的に採用業務に導入し、効果を生み出している企業も増えています。実際の活用例をご紹介しましょう。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、2017年5月からIBM Watsonを活用してエントリーシート選考にかかる時間を約75パーセント削減しました。また2020年5月からは、新卒採用選考において応募者をより客観的かつ統一された軸で評価することを目的に、動画面接の評価に株式会社エクサウィザーズと共同開発したAI(人工知能)システムを導入。AIシステムが合格基準を満たすと判定した動画については合格として次の選考を行い、不合格と判定した動画については人事担当者が動画を確認し、動画面接の合否を最終判断することで選考の正確性を担保しています。

出典:ソフトバンク株式会社「プレスリリース」2020年5月25日

株式会社吉野家

株式会社吉野家は、アルバイト採用において株式会社タレントアンドアセスメントが提供する、AI(人工知能)を使用した面接サービス「SHaiN EX ライト」を 2018年11月15日より一部エリアにて実験導入を開始。応募者と面接者の面接日程調整が不要になり、選考期間を短縮し面接の直前キャンセルをなくすほか、採用後のミスマッチをなくし定着率を高めていくことを目的としています。

出典:株式会社吉野家 「プレスリリース」 2018年11月15日

また実験導入により、「応募者の直前キャンセルを軽減」、「採用しない人との面接をなくす」、「アルバイト雇用にマッチした応募者を採用できるようにする」という3点について、当初見込んでいた効果を得られたことから2019年4月から関東(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)で本格導入を開始。応募から初日勤務までの期間を短縮し、店長の業務効率・改善を図り、よりスピーディーな選考を実施しています。今後は新規店舗オープン時の採用にも「SHaiN EXライト」を活用した会場費や面接官の人件費の削減も検討しています。

出典:株式会社吉野家 「プレスリリース」 2019年4月1日

AIはあくまで、目的を達成するための手段のひとつです。求める人物像の設定や採用基準の作成、候補者のポテンシャルの判断、選考過程でのフォロー、入社後のサポート・育成等など、人事・採用の領域には、現時点で人でしか成しえない業務が数多く存在しています。AIを活用することで効率化できる業務と人によらなければならない業務の住み分けや、AIと人がどう融合していくのが最適か議論していくことが、採用力の強化にもつながるのでは、ないでしょうか。

参考:リクルートワークス研究所『Works』第156号(2019年10月発行)

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