企業の採用担当者の間で「オウンドメディアリクルーティング」が注目されています。
オウンドメディアリクルーティングは、自社に必要な人材を、採用するための新しい手法の1つですが、具体的にどのような手法なのかがよくわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、求職者の採用に関して、オウンドメディアリクルーティングの背景やメリット・デメリット、採用サイトにどのように関連させればよいかなどについて、詳しく解説します。

オウンドメディアリクルーティングとは

オウンドメディアリクルーティングについて説明する前に、「オウンドメディア」について解説しましょう。

オウンドメディアとは

オウンドメディア(owned media)とは「自己(自社)のメディア」と直訳される英語です。例として、自社サイトやブログなどのコンテンツがあてはまるでしょう。
オウンドメディアと対比される言葉として「ペイドメディア(paid media)」「アーンドメディア(earned media)」というものがあります。ペイドメディアは他者が運営するメディアであり、お金を払って広告などを掲載するものです。アーンドメディアは「利益・信頼を得るメディア」と直訳され、自社のサービスを利用した顧客のSNS投稿などが該当します。

オウンドメディアリクルーティングとは

「オウンドメディアリクルーティング」とは、上述した「オウンドメディア」を活用して人材採用活動を進めていくことを指します。自社で採用サイトを立ち上げて求職者に訴求する例や、SNSページを開設して企業情報や求人情報などを発信する事例もあります。

訴求する例や、SNSページを開設して企業情報や求人情報などを発信する事例もあります。

※採用サイトに関しては、以下の記事もご参照ください。

採用サイト・ホームページのつくり方とは?応募が増えるサイトのポイントを紹介

オウンドメディアリクルーティングが注目されている背景

近年、オウンドメディアリクルーティングが注目されており、その背景はさまざまです。ここでは、考えられる理由についてご紹介します。

働き方の多様化

近年、人々の働き方が多様化してきているといえるでしょう。特にコロナ禍によりリモートワークを導入する企業が増えてきたのを契機に、多様化の様相はますます大きくなっています。そのため、求人媒体や人材紹介サービスの活用といった従来の人材採用手法だけでは、採用したい人材に自社の魅力を十分に訴求することが難しくなってきています。著者も多数の採用担当者から、このような悩みを聞くことが増えてきました。

そういったなか、工夫次第で人材の価値観に合ったコンテンツを発信することが可能なオウンドメディアは、有効な採用ツールとして注目を集めるようになったといえるでしょう。

高まる採用難易度

生産年齢人口の減少は多くの業界が影響を受けており、採用の難易度は高まっているといえます。

自社にあった優秀な人材を採用しようとする場合には、さらに難易度が高まります。そのため無計画な採用活動では、求める人材を採用し続けることが困難になってきています。

ITの進化による採用情報の収集が容易に

インターネットが普及・進化したことにより、求職者は企業の採用情報を簡単に手に入れることができるようになりました。昔は企業と求職者との間には採用に関する情報に格差のある「情報の非対称性」が少なからず存在していましたが、近年ではそれがオープンになり、求職者が気軽に企業の採用情報を検索できるようになっています。

企業側も同様に、透明性が高く信頼される企業であることを積極的に発信するようになっており、これは、オウンドメディアリクルーティングが広がる背景の1つといってよいでしょう。

オウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリット

オウンドメディアリクルーティングを進めるにあたっては、メリットとデメリットがあります。それぞれ例をあげて紹介します。

メリット

ミスマッチのリスクを軽減することができる

採用の難易度が高まるなか、せっかく採用した従業員に短期間で離職されてしまうのは大きな損失といえます。

こうした事態を防ぐためには、自社の社風や自社の求めている人材像に合致した人材を採用することが必要です。オウンドメディアリクルーティングを活用することにより、企業理念やビジョン、企業文化などを明確に発信することができるため、それらの姿勢に共感できる人材からの応募が集めやすくなります。

※採用ミスマッチに関しては、以下の記事もご参照ください。

【徹底解説】採用ミスマッチによるリスクと原因・理由や防ぐ方法

自社に対する従業員の帰属意識が高まる

オウンドメディアリクルーティングは自社の理念や価値観を発信し、人材採用に活かす手法です。これを実現させるためには、従業員が自社の価値観などを理解する必要があります。たとえば従業員インタビューや経営者からの発信などを共有することができれば、自社の考え方を深く理解することにつながり、結果的に従業員の自社に対する帰属意識や愛着が高まるきっかけにもなります。

クチコミを通じて認知度が高まる

オウンドメディアリクルーティングを継続していくことにより、自社のイメージを認知させる機会が増えます。目にする機会が増えれば、それだけ愛着を感じやすくなるものです。

認知度が高まり自社に関するよい印象が醸成されることで、いわゆるクチコミによる応募が来る可能性が高まるかもしれません。

オウンドメディアリクルーティングによって認知度が高まれば、人材採用だけでなく事業全体にも効果がおよぶ可能性があります。さまざまな問い合わせや取材依頼が増えれば、認知度はますます高くなるでしょう。自社が世間に多く知られることになり、結果として人材採用にもよい影響を与えられると考えられます。

採用コストが削減できる

コスト削減効果の実現は中長期的な観点から見ていく必要がありますが、オウンドメディアリクルーティングが浸透し効果が得られるようになれば、求人媒体や人材紹介サービスの利用に関するコスト削減を期待することができます。

デメリット

短期的な効果を期待するのが難しい

オウンドメディアリクルーティングの活用によって効果を得るには、中長期的な取り組みが必要になります。短期的な効果を期待するのは難しいといわれていることから、導入初期においては、求人媒体や人材紹介サービスの併用も選択肢となるかもしれません。

導入や運用に手間がかかる

前述したように、オウンドメディアリクルーティングを導入・運用するためには中長期的な継続が必要です。オウンドメディアにおけるコンテンツ制作には、企画立案、アクセスしたユーザーの目を惹きつけるためのアイキャッチ画像や文章の作成、従業員への取材など多くの手間を要し、こうした取り組みを継続することで効果が期待できます。そのための工数が必要になることを心得るべきでしょう。

自社従業員の協力が不可欠である

前述したように、オウンドメディアリクルーティングの推進には多くの工数がかかります。自社がいくらオウンドメディアリクルーティングを進めようとしても、社内の協力が得られなければ実現は困難でしょう。導入にあたっては、その重要性について社内にしっかり説明し理解を得ることが必要です。

オウンドメディアリクルーティングで発信するコンテンツ

オウンドメディアリクルーティングで発信すべきコンテンツには、大きく分けて2つあります。

1つは、将来的に就職・転職する可能性のある「転職潜在層へのアプロ―チ」です。

このような転職潜在層にアプローチするために、従業員インタビューや自社サービスの紹介などを発信します。サイト上に「お役立ちコラム」を掲載したり、転職に興味を持っている人材が抱える課題や質問に答えたりするコンテンツもあります。

そしてもう1つは「ブランディング」です。

将来的に就職・転職する可能性のある人材に対して有益となるコンテンツを提供し、信頼感や安心感を与えます。自社の商品やサービスだけでなく、自社の企業価値を高めることに寄与するものです。

具体的なコンテンツ例については後述します。

オウンドメディアリクルーティングを始める際の期間と費用イメージ

オウンドメディアリクルーティングを始めるにあたっては、その構築にどの程度の期間や費用がかかるのかについてイメージしておく必要があります。

オウンドメディアをすでに持っているかどうかで、構築にかかる期間が変わってきます。一からオウンドメディアを作成するとなれば、内容にもよりますが、初期設計・サイト構築・コンテンツ制作から実装するまでに2~3カ月はかかると思われます。

オウンドメディアにかかる費用には「初期費用」と「運用費用」があげられます。

初期費用は設計からサイト実装までにかかる費用ですが、一般的には100~300万円程度はかかるといわれています。コンテンツ制作などを社内人材で対応するにしても、その人件費を考慮する必要があります。外注の割合が高くなれば、その分コストが上乗せされるでしょう。
最近では、ウェブサイトを統合的に管理・保守できるシステム「CMS(Contents Management System)」の利用も増えています。CMSには無料のものや安価なものも多く、このようなシステムを活用することで費用を大幅に抑えることもできます。
自社の予算やリソースに応じて、かかる費用は異なってきます。検討にあたっては事前に費用をイメージしておくことが必要です。

オウンドメディアリクルーティングのKGI/KPIの考え方

KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、「重要目標達成指標」と訳されます。KPIとは「Key Performance Indicator」の略であり、「重要業績評価指標」と訳される英語です。 

では、オウンドメディアリクルーティングにおいて「KGI」と「KPI」は、どのように関係するのでしょうか。

人材採用を進める際には、採用計画を立て、計画に掲げた目標を達成するための具体的なプロセスを構築します。このように、目標に対する達成度を数値化して計測できるようにするのがKPIです。

これに対して、「〇〇年度までに〇名の人材を採用する」など、最終的に自社が達成すべき目標を掲げ、自社全体として進むべき方向性を決めるのがKGIになります。

これが明確になっていないと、ただ何となくオウンドメディアリクルーティングを活用するだけになってしまい、思うような成果が達成しにくくなるので注意が必要でしょう。

オウンドメディアリクルーティングを始める手順

ここでは、オウンドメディアリクルーティングを始める際の手順の一例について解説します。

・オウンドメディアの作成

自社でまだオウンドメディアがない場合は、その立ち上げからのスタートとなります。作成方法としてはWeb制作会社に依頼するか、自社で制作するかのどちらかになるでしょう。

外注するWeb制作会社を選ぶ際のポイントの1つとして、依頼者の意向を十分にヒアリングしてくれるかどうかがあげられます。十分なコミュニケーションが取れる制作会社を選択することが重要です。

またWeb制作会社によって得意・不得意な分野があるため、採用を目的としたオウンドメディア制作について、豊富な実績のある会社に発注するとよいでしょう。過去の実績はもちろんのこと、制作会社への発注企業が、その後どのようにして人材獲得に成功したかについてヒアリングするのも一案です。

「外注してまでサイト作成をするまでもない」といったケースや、テストケースとして試してみたいのであれば、無料あるいは安価で簡単に作成できるオウンドメディアを活用する方法もあります。SNSなどであれば、比較的安価で活用することも可能でしょう。

オウンドメディアリクルーティングの運用方法

実際にオウンドメディアリクルーティングを上手に運用するためには、どうすればよいでしょうか。以下にオウンドメディアリクルーティングの運用にあたってのポイントの例を解説します。

・求職者に対して「働くイメージ」を持ってもらうための情報を掲載する

求職者に向けて「具体的な業務内容」「必要とされる知識やスキル、経験」「職務の目的」などの情報を掲載する必要があります。これを「ジョブディスクリプション」といいます。
いくらオウンドメディアを持っていても、求職者に伝わらなければ意味がありません。
ジョブディスクリプションを明確にすることにより、自社で働くイメージを求職者に持ってもらうことが可能になります。具体的なスキル要件などを記載することで、企業情報が求職者の検索にヒットしやすくなり、結果的にマッチングが実現する可能性が高まります。

オウンドメディアリクルーティングのコンテンツ例

オウンドメディアリクルーティングにおいて、自社のメディアに掲載するコンテンツについては、さまざまなものが考えられます。以下に、コンテンツ例をいくつかご紹介します。

・従業員インタビュー

自社の従業員に対してインタビューする方法です。

インタビューの対象者は、自社が欲しい人材像に近い従業員を選択すると効果的です。

インタビューの内容としては、

  • 自社に入社した経緯
  • 自社に入社して感じたこと
  • 日々の業務内容や1日の流れ
  • 仕事のやりがいや会社のよいところ
  • 仕事をしてきてうれしかったこと
  • この会社で自分はどうなりたいか

などが考えられます。

インタビューの形式は1対1で行う以外にも、対談や座談会形式もあります。掲載したい内容によって、使い分けるとよいでしょう。

・経営者の考えを発信する

自社の代表者・経営者が直接、自分の考え方を発信します。代表者が起業した経緯や企業の価値観、事業をする上で大事にしていることなどを、オウンドメディアに発信する事例です。

経営陣の考えは、求職者の仕事観に少なからず影響するものです。求職者が自社の経営方針に共感できれば、応募に結びつくかもしれません。

決算時期や年始において今後の自社将来展望について記事にする方法も有効でしょう。

・自社サービスや新規事業に関する内容を発信する

自社が提供している商品やサービスなどについて発信します。

ただ商品やサービスの紹介をするだけでなく、たとえば「商品やサービスの開発経緯」「自社サービスで社会にどのような影響を与えたいか」など、支障のない範囲でオウンドメディアに紹介することで、求職者の琴線に触れるかもしれません。

求職者の琴線に触れることで、「こんな会社でぜひ働きたい」と思ってもらうためにも、この方法は有効といえるでしょう。

・社内イベントに関する情報発信

社内で行われているさまざまなイベントを発信するのも一案です。

たとえば「社内セミナー」「展示会の開催」といったものや、社内運動会などがあげられます。

写真やコメントなどを交えながら掲載すると、実際の会社の雰囲気を求職者にイメージしてもらいやすくなるでしょう。

オウンドメディアリクルーティングを実施・運用する際の注意点

オウンドメディアリクルーティングを実施する際に注意したほうが良い点について、いくつか例をあげて紹介します。

・成果を上げるには一定の時間がかかることに留意する

前述したように、オウンドメディアリクルーティングは実施してすぐに爆発的な成果が上がるものではありません。試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ成果を期待することができるものです。長期的な視野に基づいた運用を心がけましょう。

・軌道に乗るまでにはある程度費用をかける必要がある

サイトは一度作成したら終わりではなく、PDCAを回しながら都度修正などを施す必要があります。初期費用もさることながら、運用に際してのランニングコストがかかることを知っておく必要があるでしょう。

・社内連携が不可欠である

オウンドメディアリクルーティングを成功させるには、社内連携と協力が不可欠です。

コンテンツ作成や運用に携わる一部の従業員がいくら頑張っても、ほかの従業員と温度差があってはうまくいかないものです。

ただし、あまりに従業員に対して負荷をかけすぎては逆効果になりますので、無理のない範囲で協力してもらう環境作りを心がけましょう。

本記事ではオウンドメディアリクルーティングについてご紹介しました。

オウンドメディアにコンテンツを掲載し、それを継続することは決して簡単なことではありません。しかし採用のミスマッチを解消させ、人材の定着率を高めたいとお考えであれば、オウンドメディアリクルーティングという手法は有効な手段の一つとなり得るでしょう。

自社の魅力を存分に発信し、自社に合った人材採用のために本記事がお役に立てば幸いです。

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