転職活動時に用いる転職サービスの1つにスカウトサービスがあります。欲しい人材に対して求人企業が、あるいはおすすめの人材に対して転職エージェントが応募を促すことができる機能です。
今回は採用活動におけるスカウト機能の利用について、メリットや使い方、応募数を増やすコツや注意点について解説します。

スカウトとは

転職サービスにおけるスカウトとは、転職サービスに登録をしている求職者が、求人企業の採用担当者もしくは転職エージェントの担当者から特定の求人案件への応募に対するスカウトを受け取ることのできる仕組みです。

スカウトされた求職者が正式に応募し、選考を行います。選考を通過し内定となった場合には、労働条件などのすり合わせを行い、応募者が入社の意思を示せば採用が実現します。

なお、採用代行(RPO)の事業者を介してスカウトを行う際に、募集や選考および採用通知の連絡など、採用に関するすべての業務を依頼するなど、最終的に委託先で採用業務を完結させる場合は「委託募集」に該当します。この場合、職業安定法の定めに基づいて、求人企業と採用代行事業者の双方が厚生労働大臣や都道府県労働局長の許可を得ていなければならないことに注意が必要です。

スカウト機能のメリット・デメリット

以下に、スカウト機能を利用することに関するメリットとデメリットを解説します。

スカウト機能のメリット

スカウト機能を利用することによる主なメリットとして、以下の4つがあります。

欲しい人材に対して直接的にアプローチすることができる

スカウト機能を利用することで、転職サービスに登録した人材の中から求人企業の求める人材要件にマッチした人、すなわち求人企業の欲しい人材に対して直接的にアプローチすることができます。

潜在的求職者からの応募を得ることができる

スカウト機能を利用することで、転職活動をまだ本格的に開始していない人材に対してもアプローチすることができます。

一般的な求人では転職活動を本格的に開始している人からの応募が多い傾向がありますが、スカウト機能を利用することで、転職活動をまだ本格的に開始していない人の中からも応募を得ることができるようになります。

転職市場における自社の認知度を高めることができる

スカウト機能を利用することで、求人企業の求める人材要件にマッチした層の人たちに対する自社の認知度を高めることができます。

一般的な求人では特定の層の人材に向けた求人を届けることが難しく、自社のアピールに関しても抽象的な内容になりがちです。しかしスカウト機能を利用することで、求人企業の求める人材に対して自社のアピールを行うことが可能になります。仮に応募につながらなかったとしても、前述した層の人たちに対する自社の認知度を向上させることができます。

採用活動を効率化することができる

スカウト機能を利用することで、求人企業の採用活動における作業量を削減することができます。一般的な求人では、求める人材要件に合致していない応募者からの応募もいったんは受け取り、その中から面接する人を選考する必要があります。

しかしスカウト機能を利用することで、特定の人たちに絞ったアプローチが可能になり、選考にかかる時間が短縮され、採用業務が効率化されます。

スカウト機能のデメリット

スカウト機能を利用することによる主なデメリットとして、以下の4つがあります。

文章作成力や対応力が必要となる

スカウト機能を利用する場合、欲しい人材に自社への応募動機を高めるためのメッセージを送る必要があります。

魅力的に感じる要素は人によって異なるため、スカウトした人材の経歴などから興味を惹く内容を考えたうえで、適切なスカウト文章を作成することが求められます。

また、応募につなげるためにはスカウトメールの送信のタイミングや内容についての対応力も求人企業に求められます。

スカウト応募への対応体制が必要となる

スカウトした人材から返信があった場合、そのあとの対応をタイムリーに行う必要があります。

対応が間延びしてしまった場合、求人企業への関心が薄れ、あるいは不誠実に思われることが応募意欲を低下させる可能性があります。

スカウトした人材からの返信には迅速に対応できる体制を構築することが求められます。

優秀な人材に関しては競合が激しくなる

昨今、スカウトサービスの有用性が企業に認知され、サービスを利用する企業の数も増えています。それにより、優秀な人材に大量のスカウトメールが届くという現象も生じています。ほかの求人企業との間で差別化を図れるような、自社の魅力や条件などを表現することが求人企業に求められます。

採用コストが増える

スカウト機能を利用する場合、サービスによっては転職エージェントのデータベースを利用するためのシステム利用料金やメール送信に対する料金などが必要となる場合があります。これらに関しては、採用が実現されたかどうかに関係なく発生します。また、スカウト人材の選定やスカウト文章の作成、スカウトメールの送信、スカウト結果の分析などに関してサポートを受ける場合、別途費用が必要となる場合があります。そのため、求人広告や自社サイトなどでの求人方法と比較してコストが増える可能性が高くなります。

※採用コストに関しては、以下の記事をご参照ください

採用コストの平均とは?新卒・中途の一人当たりの金額と削減方法を紹介

スカウト機能の使い方

以下に、スカウト機能を利用する場合の手順を解説します。

(1)スカウトサービスを選定する
自社の採用目的に適したスカウトサービスを選定します。
具体的には、インターネットで情報を収集し、関心のあるスカウトサービスに資料請求や問い合わせを行います。そして担当者から詳しい説明を受けたうえで、どのサービスを利用するのかを決定します。

(2)スカウトメールを送信する
サービスを利用するスカウトサービスからの人材データベースの共有を受けたあとに、スカウトしたい人材を選定し、スカウトメールを送信します。

(3)応募者への対応や選考を行う
スカウトメールに対する返信があった場合、応募につなげるためのやり取りを行い、応募後に選考を行います。

4)スカウト結果の分析を行う
スカウトを行ったことによる結果を分析し、スカウトメールの内容や応募者への対応などへの改善点を見出すことで、今後の応募や採用に対する成果を高めることにつなげていきます。

求める人材にスカウトで応募してもらうコツ

以下に、求める人材にスカウトで応募してもらうコツを解説します。

採用目的を明確に伝える

スカウトのメッセージが送られてきた場合、求人企業の採用目的が明確であることが応募意欲を高めることにつながります。

採用目的とは、以下のような内容のことです。

・求人企業がどのような事業の方向性を目指しているのか

・そのためにどのような人材を必要としているのか

・必要としている人材にどのような働き方をしてもらいたいのか(どのような成果を期待しているのか)

レスポンスを早める

前述したとおり、スカウトした人材からの返信に対する求人企業の対応が間延びしてしまうと応募意欲の低下につながる可能性があります。

反面、レスポンスをよくすることで、求人企業の本気度やスカウトした人材への関心度の高さが伝わり、応募意欲の向上につながる場合があります。

積極的にコミュニケーションを取る

スカウトをするということは、求人企業のほうからスカウトした人材に対して自社に応募してくれるようにお願いをするということです。

相手の心を動かし、相手からの関心を高めるためにも、求人企業から積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。

スカウト機能を使う際の注意点

以下に、スカウト機能を使う際の注意点を解説します。

自社の採用目的に適した内容のサービス形態を選ぶ

スカウトサービスには、以下のようなサービス形態があります。

(1)特定のデータベース内の人材に対して一斉にスカウトメールを送信する

(2)AIによる自動マッチング機能を使ってスカウトメールを送信する

(3)企業の採用担当者が個別にスカウトメールを送信する

(4)転職エージェントが求人企業に代わってスカウトメールを送信する

求人企業の人材要件が細かく設定されておらず、あるいは大人数を採用したい場合などは、(1)や(2)のサービス形態のほうが適していることが想定されます。
一方、求人企業の人材要件が詳細に設定されており、限定された人数の採用を行いたい場合などは、(3)や(4)のサービス形態のほうが適していることが想定されます。

このように、自社の採用目的に適した内容のサービス形態を選ぶことが効果的です。

自社の採用目的に対して合理的な料金体系を選ぶ

スカウトサービスには、以下のような料金体系があります。

(1)採用者1名当たりの成功報酬のみ(システム利用料金・メール送信料金不要)
(2)初期費用+採用者1名当たりの成功報酬
(3)月額でのシステム利用料金+メール1通ごとの送信料金
(4)半年、1年間などの一定期間に対するシステム利用料金(メール送信料金不要)

採用予定人数が少人数であり、かつ採用の難易度が高くない場合は(1)または(2)が合理的になることが想定されます。
また、採用活動期間が長期にわたることが想定される場合や大人数を採用したい場合は(3)が合理的になる可能性が高く、採用の難易度が高い場合は(4)が合理的になる可能性もあります。

このように、自社の採用目的に対して合理的な料金体系を選ぶことが効果的です。

無理の生じないスカウト体制を構築する

スカウトサービスを利用する場合、求人企業内に、スカウトする人材とのメッセージのやり取りや応募者への対応を行うための体制を構築する必要があります。

それらの業務に従事する担当者は、本来の業務と並行してスカウト業務を担当する必要があります。

これに関して無理が生じてしまった場合、スカウトする人材への対応が中途半端になりスカウトサービスを利用する成果が得られなくなってしまうリスクがあります。そのため無理なく対応を行える体制を構築する必要があります。

必要に応じて転職エージェントのサービスを利用する

転職エージェントのスカウトサービスにはさまざまな種類があります。まずは自社でできることを確認し、自社にノウハウがないことに関しては、必要に応じて転職エージェントのサービスを利用することが効果的です。

企業が環境変化に対応しながら成長を続けていくためには、戦略の実現を担う人材を迅速かつ確実に配置する必要があります。「迅速かつ確実」に人材を確保するうえで、スカウトサービスは効果的です。社内での育成や社員の紹介など、時間のかかる長期プランと、このような短期的に一定の成果を出せる手法をうまく組み合わせ、自社に必要な人材の確保を目指してください。

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