採用活動のなかで、自社の求める人材を獲得するための採用手法の1つとして「ダイレクトリクルーティング」が定着しつつあります。この記事では、企業が求職者に直接アプローチする「攻めの採用」などといわれるダイレクトリクルーティングについて、その特徴、メリットとデメリット、成功させるためのポイントなどを解説します。

ダイレクトリクルーティングとは?

ダイレクトリクルーティングとは、企業が社外の専門業者などの第三者を介さずに、直接求職者にアプローチして採用につなげる手法をいいます。

海外では「ダイレクトソーシング」と呼ばれ、一般的な採用手法として活用されています。

ダイレクトリクルーティングの特徴

従来からの採用手法は、求人媒体や人材紹介など、社外の求人サービスを通じて求職者からの応募や候補者の紹介を待つ形が中心でしたが、これに対してダイレクトリクルーティングは、自社が求める人材を、まだ転職活動を始めていない潜在層を含めて自ら探索し、直接コンタクトを取りながら採用活動を進めていく点が特徴です。

具体的な方法としては、人材データベースを持つ企業のサービス利用、SNSを活用したソーシャルリクルーティングと呼ばれる方法、従業員からの紹介、自社ホームページの活用などがあります。

ダイレクトリクルーティングが注目される理由

ダイレクトリクルーティングが注目されている背景には、少子高齢化による労働力人口の減少が進むなかで、企業の人材確保が難しくなったことが挙げられます。さらに昨今のSNSをはじめとしたITツールの進化により、求職者へ多様なアプローチが可能になったことから、企業も積極的にこれらのツールを活用し始めました。その結果、求めている人材に直接アプローチできるダイレクトリクルーティングが注目されるようになったといえます。

ダイレクトリクルーティングのメリット

ダイレクトリクルーティングのメリットとしては、以下の項目を挙げることができます。

採用コストを抑えることができる

求人媒体への広告掲載や人材紹介を利用した場合、広告掲載料や入社時の成功報酬が必要となり、その費用が高額になることは珍しくありません。

その一方、ダイレクトリクルーティングの場合は、利用料が無料もしくは比較的低価格のSNSなどを活用して人材にアプローチすることができるため、従来からの採用手法に比べると採用コストを抑えることができます。人材データベースを使用する費用などが発生することはありますが、従来からの採用手法のように社外の業者による広告作成や、仲介を得るためのさまざまな手間が少なくて済み、採用活動における多くの作業を自社内で完結できるため、総合的な採用コスト削減を期待することができます。

転職潜在層を含めた多様な人材にアプローチできる

従来からの採用手法では、求人への応募や転職エージェントへの登録など、実際に転職活動を行っている人材以外との接点を持つことは難しいのが実情でした。しかしダイレクトリクルーティングでは、転職エージェントから紹介される人材とは異なる人材、たとえば「よい企業があれば」などと考えている潜在的な転職希望者や自社の求人情報を見ても応募しなかった人材にもアプローチすることができ、応募者の幅を広げることが期待できます。

求める人材に直接アプローチでき、ミスマッチが少なくなる

従来からの採用手法では、あくまで人材からの応募を待つことが中心になるため、自社が求める要件との間ではミスマッチが生じてしまうことがあります。

一方、ダイレクトリクルーティングでは、自社で求めている要件の人材を選んでアプローチすることができ、さらに自社から直接メッセージを伝えることができます。そのため自社の魅力を伝えたり、応募者の不安の払拭がより容易になり、選考過程でのさまざまなコミュニケーションを通じて、相互理解を深めることができます。こうしたプロセスを介することによって、人材とのミスマッチを少なくすることが期待できます。

※採用ミスマッチに関しては、以下の記事をご参照ください

採用ミスマッチが起きる理由とは?防止策、定着方法を解説

自社で採用ノウハウを蓄積できる

ダイレクトリクルーティングでは、対象とする人材の選定および人材へのアプローチから、実際に入社するまでのすべての採用プロセスを自社で行います。そのため採用活動内で発生した課題への対応ノウハウや習得した知識を社内に蓄積していくことができます。質の高い採用活動が自社で展開できるようになることが期待できます。

ダイレクトリクルーティングのデメリット

一方、ダイレクトリクルーティングにおけるデメリットとしては、以下のような項目を挙げることができます。

採用担当者の作業負荷が増加する

ダイレクトリクルーティングでは、採用活動に関するすべての業務を自社で行うだけでなく、SNSなどによる継続的な情報発信、接点が持てた人材との細やかなやり取り、スカウトメールの作成や送信など、従来の採用活動にプラスされる作業が数多くあるため、採用担当者への負荷が大きく増してしまう可能性があります。

実施にあたっては、必要な人員や作業時間の確保など、適切な運用ができる体制を構築することが重要です。

短期的成果が求めづらく、中長期的な視点で取り組む必要がある

ダイレクトリクルーティングで接する人材は、企業側からのアプローチがきっかけになっているため、必ずしも転職意欲が高いとは限らず、すぐに結果に結びつかない場合もあります。志望度や入社意欲を高めてもらうための時間が必要なケースもあることから、短期的に成果を得ることは難しい手法だといえるでしょう。

また、自社なりのノウハウを確立するためには、課題の検証と改善を繰り返す経験の積み重ねが必要であり、そのためにはある程度の時間を要します。中長期的な視点を持って取り組まなければならないことを認識しておく必要があります。

対象人材の転職意欲が低いことがある

従来からの採用手法では、求職者自身が応募先企業を探して自らの意思で応募します。一方、ダイレクトリクルーティングは企業からのアプローチやスカウトが応募のきっかけになるため、転職意欲がなかったり志望度が低かったりする人材も含まれていることが考えられます。この場合は、さまざまな情報交換の場を使って自社アピールをしていくなど、入社意欲や志望度を高めてもらうための工夫が必要になります。

個別対応が多いため大量採用にはあまり向かない

ダイレクトリクルーティングでは、対象となる人材の一人ひとりに直接アプローチし、各自の志向に合わせた細かい対応をするなど、採用活動における作業量が多くなる傾向があります。そのため、一度に多くの人材を採用する場合には、効果を発揮しづらい手法といえます。大量採用を行う際には、従来からの採用手法を併用していく必要があるでしょう。

ダイレクトリクルーティングの料金体系

ダイレクトリクルーティングでは、SNSを利用することもありますが、基本的な機能については無料のものも多く、広告掲載などをおこなえば費用がかかるものの、従来からの採用手法に比べると費用は低い傾向があります。求人媒体でのスカウトメール機能を利用する場合や、人材データベースサービスなどを使って対象人材を検索したりする場合には、その利用に関する料金が発生します。

料金体系としては、大きく「成功報酬型」と「定額型」の2つに分けることができます。それぞれの概要は以下の通りです。

成功報酬型

採用人数に応じて料金が発生する形態です。費用発生のタイミングは、内定承諾時が一般的ですが、応募時や入社時など、段階によって成果報酬が課金されるものや、職種、勤務地などの要件によって金額が異なるものもあります。内定辞退の場合は料金の一部が返金されるサービスもあります。サービス利用の初期費用や基本料金が、採用人数にかかわらず必要になる場合もあります。新卒採用では1名あたりで固定金額、中途採用では「年収の○%」などの条件が一般的と考えられます。

定額型

サービスの利用期間に応じて、定額の料金が発生する形態です。

採用人数が多くなるほど1人あたりの採用単価が下がっていきますが、反対に1人も採用できなくても費用がかかる点には注意を要します。定額型のサービスでも、初期費用などが別途必要になる場合があるので、このあたりは事前に確認しておくことが必要と考えられます。

ダイレクトリクルーティングを実施する手順

ダイレクトリクルーティングを実施する際の手順について、以下で解説します。

使用するサービスと対象人材を選定する

募集職種や専門性、費用などを考慮したうえで、使用するサービスを選定し、そこから対象となる人材を検索してリストアップしていきます。検索条件を変えながら自社の要件に合う人材かを確認していきます。

人材へのメッセージやメールを個別に作成して送信する

リストアップした対象人材に対して、直接コミュニケーションを取るきっかけとするためのメールやメッセージを作成して送信します。自社に興味を持ってもらって、返信をもらう確率を高めるためには、画一的な内容でなく、それぞれの人材の経歴や保有スキルなどを確認したうえで、その人に合わせた文面を工夫して、個別に作成することが重要と考えられます。対象となる人材が興味を持ってくれそうな内容を考え、ぜひ自社に来てほしいという熱意をアピールしていくことが必要です。

返信には素早く対応して面接日程などを調整する

対象人材から返信をもらうことができた場合、その返信への対応はできる限り素早く行いましょう。可能であれば面接日程の調整も行うとよいです。他社からもアプローチを受けている可能性があるため、できるだけ早いアクションで人材との接点を広げ、面接までつなげていくことが重要といえます。志望度が低いと思われるような場合でも、面接よりも気軽な情報交換などの名目で、直接対面できる場を設定することが望ましいでしょう。

ダイレクトリクルーティングが向いている企業

ダイレクトリクルーティングは、どのような企業が効果的に活用できる手法なのか、その要件を解説します。

求職者の目に触れておらず従来の手法では採用しづらい企業

求職者の目に触れておらず、従来からの待ちの手法では採用が難しかった企業です。自社から直接人材とコンタクトして、その人材に合わせたさまざまなコミュニケーションを取ることができるダイレクトリクルーティングの手法は、対象人材の興味や志望度を高めて、採用力の向上につながることが期待できます。

自社の魅力や特徴に自信がある企業

自社の魅力や特徴に自信があるにもかかわらず、従来からの採用手法では多くの求人情報の中に埋もれてしまい、せっかく持っている魅力の発信が難しかった企業です。人材に直接アプローチして企業アピールができるダイレクトリクルーティングの手法は、採用力の向上につながることが期待できます。

自社の状況に合った採用ノウハウを蓄積したい企業

ダイレクトリクルーティングでは、採用プロセスのすべてを自社内で行うため、人材要件の設定や対象となる人材の選定方法、自社アピールの内容や方法、メールやメッセージでの効果的な文面作成、面接日程の調整、内定から入社までのフォロー、選考中のコミュニケーション方法など、多くの採用ノウハウを自社内で蓄積することができます。このことは、自社の中長期的な採用力の向上につながることが期待できます。

ダイレクトリクルーティングを成功させるポイント

ダイレクトリクルーティングを成功させるうえでのポイントとして、以下のような項目が挙げられます。

自社の魅力を高めて、その情報発信に力を入れる

ダイレクトリクルーティングでは、これまで以上に「働いてみたい」と思われるような自社の魅力が必要です。認知度を高めてより多くの人材の目に留まるように、自社の魅力の向上と、その内容を情報発信していくことが求められます。

魅力を高めるには、働きがいの創出や職場環境の改善、良好な人間関係作りなどの取り組みを進める必要があります。社長をはじめとしたすべての従業員が関わるような、全社的な協力体制も必要と考えられます。

採用関連の情報を効率的に管理して活用する

応募している人材の状況を細かく管理して、活動を効率化していくためには、採用に関連する情報の管理方法が重要となります。それぞれの人材の職歴や経験、保有スキルに関する情報、選考の進捗状況や評価結果などの情報を適切に管理、活用することで、ダイレクトリクルーティングを効率的に進めることができ、自社の採用力向上につなげることができます。
ダイレクトリクルーティングは、一般的に採用までの時間と業務負荷が多くなる傾向があります。業務負担軽減のためには専任の担当者を決め、関連情報を一元的に管理することが必要と考えられます。さまざまな管理ツールなども提供されているので、業務負荷の軽減や効率的な情報管理のために活用を考えてもよいでしょう。

素早く細やかな対応を徹底して行う

ダイレクトリクルーティングは、個々の応募者に合わせた細やかな対応ができることが特徴であり、これを十分に活かせるような取り組みが重要になります。

その人だけに合わせた内容でメールやメッセージを送ることや、興味を持ってくれた人に素早く返信することで、相手の興味を維持、向上することができ、面接などにつなげやすくなることが期待できます。

人材への対応では、素早く細やかな対応を徹底することが望ましいと考えられます。

中長期的な視点でノウハウを蓄積する

ダイレクトリクルーティングでは、対象人材が求人応募に至る前段階から関係作りが始まるため、一般的に採用までの時間は長く要することが考えられます。また、自社における採用ノウハウの蓄積でも、同じように相応の時間を要します。

中長期的な視点を持ち、過去の状況を検証しながら採用活動を進めることが重要です。

これら成功のためのポイントの実践や、作業負荷の増大をはじめとしたダイレクトリクルーティングを行ううえでの課題を解消する方法の1つとして、「リクルートダイレクトスカウト」のようなサービスを利用することが考えられます。

「リクルートダイレクトスカウト」では、幅広い職種のハイキャリア人材が登録されているデータベースを利用することができ、スカウト人材の条件設定や求人情報作成などのサポートを受けながら、選んだ対象人材には送信数の制限なくスカウトメールを送ることができます。

ここで返信があった人材とはシステムを介して直接やり取りすることができ、ダイレクトリクルーティングをスムーズかつ効率的に行うことが可能になる場合があります。

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