目次
採用代行(RPO)とは
採用代行(RPO)とは“Recruitment Process Outsourcing”の略で、採用に関する業務の一部もしくは全部を第三者に委託することです。委託する業務の範囲には注意が必要です。「募集や選考に関する最終的な対応」も含めて委託する場合、法律上「委託募集」に該当することとなり、職業安定法の定めに基づいて、委託する側とされる側の双方が厚生労働大臣や都道府県労働局長の許可を得る必要があります。
採用代行(RPO)のサービスとは
採用代行(RPO)では、採用に関わる煩雑な業務を求人企業に代わって行います。また採用に関する豊富なノウハウを活用し、求人企業の採用活動の成果を高めるためのサービスを提供します。
採用代行(RPO)が求められる理由
採用代行(RPO)が求められる理由としては「企業の採用業務が煩雑化している」「企業の採用業務の難易度が向上している」などが挙げられます。
現在、人口減少にともない企業間での人材の奪い合いが激しさを増しています。またWebやSNSの発展による採用手法の多様化によって求人企業の採用活動に関わる業務も多様化しています。このような変化を背景に採用業務が煩雑化しているのです。さらに求める人材の採用には応募者に対する的確かつタイムリーな対応や内定後のフォローなどが求められており採用業務の難易度が向上しています。
採用代行(RPO)のメリット・デメリット
採用代行(RPO)を利用することで生じるメリットとデメリットを解説します。
採用代行(RPO)のメリット
採用代行(RPO)を利用することで、以下のようなメリットが得られます。
人事担当者の人件費コストの削減
採用代行(RPO)を利用することで、人事担当者が対応する採用に関わる工数を削減できる場合があります。そのため人事担当者の人件費コストも削減され、採用に関するコストパフォーマンスの向上が期待できます。
人事担当者が採用業務以外のコア業務に専念できるようになる
採用代行(RPO)を利用することで、人事担当者が採用活動に関する繁雑な業務から解放されます。それにより人事戦略の策定や人事制度の運用、社内教育の充実化といった人事に関するそのほかのコア業務に専念することができるようになります。
採用活動の精度を高めることができる
採用代行(RPO)を利用することで業務に余裕が生まれ、応募者に対するタイムリーかつ、きめ細かい対応が可能になる場合があります。また採用プロセスごとの成果の分析に基づいた対応の改善が期待できる場合もあります。このような理由から、自社の採用活動の精度を高めることができる可能性があります。
採用に関するノウハウを蓄積することができる
採用代行(RPO)企業は「応募者への対応」「採用業務の管理」「採用成果の分析に基づく対応」といった採用に関するノウハウを保有しています。
採用代行(RPO)を利用することで、こうしたノウハウが自社に蓄積される場合があります。
採用代行(RPO)のデメリット
採用代行(RPO)の利用にはさまざまなメリットがある一方、以下のようなデメリットが生じるリスクもあります。
採用コストが高くなる場合がある
自社で対応可能な業務も含めて採用代行(RPO)企業に採用に関する業務を任せすぎてしまうと、採用代行(RPO)企業に支払う費用が増大します。結果的に自社の採用活動における採用コストが高くなり、採用に関するコストパフォーマンスが悪化してしまうことがあります。
採用代行(RPO)企業との間で綿密な調整が必要になる
採用代行(RPO)企業が自社の求める人材像や採用に関するニーズを的確に把握しきれていなかった場合、採用ミスマッチが生じてしまう場合があります。こうした事態を防ぐためには、採用代行(RPO)企業との間で綿密な調整が必要になります。
※採用ミスマッチに関しては、以下の記事をご参照ください
応募者や内定者との関係が築きにくくなることがある
採用代行(RPO)企業に任せる範囲を広げた場合、求人企業が応募者や内定者と接する機会が減少し、求職者に対して自社の考え方などを正確に伝えることができなくなってしまう場合があります。それにより採用者が入社後にミスマッチを感じてしまい、早期離職につながってしまう可能性があります。
人事担当者の採用に関するスキルが向上しないことがある
採用業務を採用代行(RPO)企業に任せすぎてしまうと、人事担当者と採用代行(RPO)企業の間でのコミュニケーションが希薄化し採用に関するノウハウが自社に蓄積されない場合があります。そして人事担当者の採用に関するスキルが低いままの状態が続いてしまうことがあります。
採用代行(RPO)に委託できる業務
採用代行(RPO)に委託できる業務について、著者の見解を基に解説します。
採用計画の策定
自社の経営計画や経営戦略を実践するために適切な採用計画の策定を依頼することができます。どのような時期に、どの部門に、どのような能力や経験などを有した人材を、どの程度の人数配置することが望ましいのかといった観点から採用計画の策定が行われます。
※採用計画に関しては、以下の記事をご参照ください
採用計画の正しい立て方とは?具体的な手順、採用活動を成功させるポイントを紹介
求人広告掲載
求人広告の作成を委託することができます。求人企業の魅力や人材要件が適切に伝わり、ターゲット人材から応募が来るような形で作成されます。また作成した求人広告をターゲット人材の採用に適切な求人媒体に掲載することを委託することもできます。
応募者管理
求人媒体ごとに、応募の受付や応募者への必要事項の連絡、応募者との対応の記録といった「応募者管理の業務」を委託することができます。
応募者書類選考(スクリーニング)
あらかじめ書類選考の基準を採用代行(RPO)企業に伝えておくことで、たくさんの応募者の中から条件に合った人材を抽出する「応募者書類選考に関するスクリーニングの業務」を委託することができます。
DM配信
ターゲット人材に対して直接スカウトメールを送信するダイレクトリクルーティングを実施する場合に、適切なメール文章を作成したうえで送付する「DM配信の業務」を委託することができます。
選考日程調整
応募者との間で面接の日程を調整したうえで、面接に関する事務連絡や最終確認連絡といった「選考日程調整の業務」を委託することができます。
業務内容による料金イメージ例
採用代行(RPO)に関する料金イメージについて解説します。
料金の算出パターン
採用代行(RPO)に関する料金の算出パターンは、「定額型」「業務ごとの料金型」「成功報酬型」などがあります。
定額型とは、業務内容に応じた1カ月、3カ月などの一定期間ごとの料金が設定されている形です。
業務ごとの料金型とは、業務内容とボリュームに応じて個別に料金が設定される形です。
成功報酬型とは、あらかじめ双方で合意した採用の成果が実現されるまでは料金は発生せず、採用決定時などの成果が生じた段階で料金が発生する形です。
採用代行(RPO)の料金例
リクルートの採用代行(RPO)企業、株式会社リクルートスタッフィングでは以下の月額の定額料金を設定しています。
採用プロセス 全般の代行 | 応募~内定までのプロセス・もしくはプロセスの一部を企業様カスタマイズで代行 | 月額固定 ※受託範囲によって異なります。詳細はリクルートスタッフィングへお問い合わせください |
スカウトメール送信 | ターゲット人材に該当する求職者に対するスカウトメール送信 | スカウト送信数:50件/月 5万円~ |
応募受付 | 応募者から履歴書や職務経歴書を取り寄せ、情報登録を行い、必要に応じた追加書類を回収する | 応募処理数:50件/月 4万円~ |
書類選考一次スクリーニング | 求人企業の選考基準に則った書類選考上の合否判定、結果の登録 | 応募処理数:50件/月 4万円~ |
お見送り連絡代行 | 選考不合格者に対する通知連絡 | お見送り処理数:50件/月 2万円~ |
参考:株式会社リクルートスタッフィング「リクルートスタッフィング定額料金プラン」
そのほかの業務の一般的な料金の目安は、以下のようになっています。
採用媒体管理 | 採用媒体ごとの応募者とのやり取りなどの管理 | 月額5万円~70万円 |
選考日程調整 | 応募者との面談日程の調整 | 月額5万円~ |
面接代行 | 応募者との面接の代行 | 月額30万円~ |
採用代行(RPO)を委託する際の流れ
採用代行(RPO)を委託する場合の一般的な流れは以下の通りです。
委託する業務を決定する
採用に関して、どの業務を採用代行(RPO)企業に委託するのかを決定します。
採用代行(RPO)企業と打ち合わせをする
採用代行(RPO)企業との打ち合わせを行い、自社の採用に関する課題や要望、求める人材像などを採用代行(RPO)企業に伝え、認識にズレがないことを確認します。そのうえで、採用代行(RPO)企業から受けられるサービス内容を確認し、採用代行(RPO)へ委託することを正式に決定します、
契約を締結し採用活動をスタートする
採用代行(RPO)企業との間で、採用代行(RPO)サービスの内容や料金、法的な責任の範囲などを明確にした契約を締結します。契約内容に双方が合意したあとに、採用活動をスタートさせます。
モニタリングを実施する
採用活動を開始したあとも、採用代行(RPO)業務に関して採用代行(RPO)企業に任せっきりにするのではなく、定期的に状況を確認し、今後の対応に関して要望がある場合は明確に伝えます。
採用代行(RPO)を委託する際の注意点
採用代行(RPO)を委託する場合には、以下のことに注意しましょう。
対応範囲
あらかじめ採用に関するどの業務を委託するのかを十分に精査したうえで、採用代行(RPO)企業に委託する業務範囲を決定しましょう。自社で容易に対応できる業務は自社で行い、自社で行うことが非効率な業務のみを委託することで、採用活動のコストを最適化できます。
過去実績
職種や業務経験などの人材要件によって、採用活動のポイントとなる部分が異なります。そのため、自社と似た業界業種や似たニーズに関して実績があるかどうかも、採用代行(RPO)企業を選ぶ際の重要なポイントとなります。
運用方法
採用代行(RPO)企業に委託した場合であっても、相手に任せっぱなしにしてしまうと採用のミスマッチが生じるリスクが高くなります。そのため進捗状況の確認や情報共有の方法などについてもあらかじめ決めておき、気になったことがあればその都度確認するなどして、認識合わせを丁寧に行っていきましょう。これらのやり取りを通じて丁寧に対応してくれる採用代行(RPO)企業を選ぶことも大切です。
見積もり
採用活動では想定外の業務が生じることがあり、採用代行(RPO)企業から想定以上の費用請求が発生することで予算内での採用活動ができなくなるリスクが存在します。そのため採用代行(RPO)企業から委託する業務内容と料金が具体化された書面での見積もりを取得するようにしましょう。
担当者
採用代行(RPO)を利用する目的は、採用代行(RPO)企業のノウハウを活用し採用に関するコストパフォーマンスの最適化を図ること、そして必要な人材を採用することです。そのため、自社の要望に真摯に耳を傾け積極的に進捗報告や情報共有を図るなど、自社に寄り添った対応をしてくれる担当者かどうか十分に見極めることが必要です。
複雑化した採用業務に対応するために採用に関するノウハウを有した採用代行(RPO)企業のサービスを利用することは大変有意義なことです。しかし採用活動は今後の自社の経営に大きな影響を及ぼします。そのため採用代行(RPO)企業に任せっきりにするのではなく自社が主体的に採用業務に関わることが重要です。