近年、採用活動でもオンライン説明会やオンライン面接が導入され、学生・社会人ともに転職活動がしやすい環境になっています。
こうした環境の変化のなかで採用活動を適切に行うためには、応募者を募る母集団形成が重要になります。今回は、人材を集めて母集団を形成するための手法とそのポイント、ステップについて解説します。

母集団形成とは?

企業の採用活動における母集団とは、「母集団=自社に応募した求職者の方々」のことであり、母集団形成とは、採用における応募者を獲得する活動のことを指します。

母集団形成は、学生を採用する新卒採用、主に即戦力を採用する中途採用、どちらにおいても重要な要素です。

母集団形成が重要となった背景

近年「人材獲得競争の激化」「転職市場の活性化」「戦略的採用への転換」などを背景に、企業の採用活動の中身が変化してきました。

著者が見聞きしてきた例を振り返っても、従来の採用活動は自社の魅力を打ち出し、目標とする応募者数を集めることに重点が置かれていたと感じます。しかし現在では、闇雲に応募者数を増やしても採用につなげることが難しいため、採用活動において採用要件に合致した母集団を形成する重要性が高まっているといえるでしょう。ここでは、採用要件に合致した母集団形成をすることが求められるようになった先述の要因についてそれぞれ解説します。

人材獲得競争の激化

人口減少による働き手の減少、イノベーションによる新たな事業を担う人材の必要性の高まりなどを背景に、採用市場では人材の獲得競争が激化しています。株式会社リクルートが発表した「2023年 転職市場の展望」によると、2022年度は求人数が調査開始以降最高水準となりました。この傾向は2023年も続くと述べられており、企業の採用活動の難しさがうかがわれる状況です。そのため企業には、応募が来るのを待つというスタンスではなく、応募者を自ら獲得しに行くという姿勢が必要になってきています。

出典:株式会社リクルート「2023年 転職市場の展望」2023年1月5日

転職市場の活性化

近年、転職が一般的になってきました。著者の経験上、従来の「新卒で入社した企業で生涯勤める」という意識が変化し、入社してから数年で何を得るか、自身がどのように成長できるかを意識する人が増えてきています。

中途採用においても、応募者が入社後に企業とのミスマッチを感じると、早期に別の企業へ転職するケースもみられます。そのため、応募者が企業やキャリアに求める要件と実際の業務内容とのマッチ度が重要になっているといえるでしょう。母集団形成についても、ただ数を集めるのではなく、自社が必要としている人材をどれだけ集めることができるかについて、多くの企業が重視するようになっています。

戦略的な採用活動への転換

筆者の経験では、従来の採用活動では新卒採用は採用人数を満たすことを、中途採用は欠員を補充することを重視する傾向がありました。事業戦略に紐づいた人材戦略(採用戦略)へと変化するなかで、採用要件にマッチした人材の明確化とそれにともなう母集団形成が重要な要素となっています。

たとえば戦略的採用においては、採用人数だけではなく、採用活動のフェーズごとに候補者数や選考通過人数を測り、何人以上の候補者および通過者で採用活動が順調であるとするかといったKPIを設定します。そして、その結果から振り返りを行い、採用活動の改善につなげます。また、採用ポジションによっても応募状況や選考通過率も変わるため、募集ポジションごとにKPIを設定し計測している企業もあります。

戦略的採用の数字分析例

求める人材が集まった母集団形成のメリット

事業成長に直結する可能性がある

先述の通り戦略的採用では、経営戦略に紐づく人材ターゲットを設定し、採用計画を立案することが不可欠です。求める人物像とはどのような経験をもったどのような人材なのかを明確にした上で採用活動をすることで、人材の採用が事業成長に直結していきます。

採用活動の効率化が図れる

筆者の経験上、募集時は広く応募者を募り選考で絞り込む採用活動から、募集の段階から自社の人材ターゲットを定めて行う採用活動へ変化してきています。このなかで、「求める人材にいかに応募してもらうか」が重要になっています。また求める人材の母集団をつくることで、その後の通過率も高まることから、結果として採用活動の効率化にもつながります。

入社後の定着率向上につながる

マッチする人材の募集・採用に重点を置くことで、採用活動の効率化だけではなく入社後のミスマッチも軽減でき、定着率向上にもつながります。転職が珍しくなくなってきた現在、応募者も企業とのマッチングをこれまで以上に重視していることを考えると、精度の高い母集団形成の重要性は、ますます高まるといえるでしょう。

母集団形成のポイント

ここまでの内容を踏まえ、母集団形成では単に「応募者数を増やす」のではなく、下記のポイントが重要になります。

・募集ポジション、人材ターゲットに合った応募者を獲得する
・事業戦略に紐づく採用職種/ポジションの明確化、人材ターゲットを設定する

このようなことを踏まえて母集団を形成するためには、職種/ポジション・人材ターゲットごとに母集団形成のツールを使い分けることも大切です。それでは母集団形成のステップに沿って、活用ツールなどの例をご紹介します

母集団形成のステップ

採用計画を立てる

まず事業戦略に基づき、その事業を実現するためには、どのようなポジションで何名の採用が必要なのか、またどのようなスキルや経験がそのポジションには必要なのかといった人材ターゲットを明確にします。新卒採用者であれば、人物イメージやポテンシャルイメージを具体化するとよいでしょう。中途採用者であればどのようなスキルや経験を持つ人物なのか、具体的な経験企業名や業務上の役割まで落とし込み、採用したいペルソナを描いてみるとよいでしょう。

そのうえで、このような人材をいつまでに採用するのか、そのための準備期間や予算も含めた採用計画を整理します。

採用手法選定

次に、求める人物に出会うにはどのような媒体やツールを使うとよいのか、採用手法を検討します。

近年採用ツールはさまざまなものがあり、募集ポジション、採用人数、人材ターゲットに合わせたツールや採用手法を選定することが大切です。母集団形成の採用手法は次の章で詳しく説明します。

募集活動

次に実際に応募者を集める募集活動に入っていきます。

募集活動をスタートしたら、応募者の量と質をチェックすることが大切です。具体的には応募者数の推移や、応募者の経歴と求める経験・人物像とズレがないかマッチ度を確認します。求人媒体、人材紹介、SNSなど複数の採用ツールを活用している場合はツールごとに分析していくとよいでしょう。

振り返り・改善

応募者状況をチェックしていく中で、応募が少ない、応募者が募集ポジションとマッチしていないなどの場合は早期にツールを見直していく必要があります。

たとえば求人媒体などの原稿は、募集の打ち出し方から見直していくことや、人材紹介サービスに依頼している場合は、求める経験・人物像を人材紹介サービスの担当者と再度すり合わせていくなどができます。このように募集を開始したら応募を待つだけではなく、よりマッチする応募者を獲得していくための振り返り・改善活動を行っていくとよいでしょう。

母集団形成の手法

求人媒体(メディア)

求人媒体とはWebや紙面での求人広告などを指しており、転職サイトや新聞の折り込みチラシ、求人フリーペーパーなどが含まれます。

求人媒体は広く求人募集を告知する手段として使われるため、募集人数が多いポジションや、未経験など経験を問わないポジションにおいて、有効な手段となり得ます。

※求人媒体に関しては、以下の記事をご参照ください
求人媒体とは?各媒体の特徴や選び方を徹底解説

合同説明会・学内ガイダンス

新卒採用において活用されるケースが多いのが合同説明会や学内ガイダンス(学内説明会)です。複数の企業が会場内でブースを設けたり、会場内で企業説明会を開いたりして自社のアピールが可能です。メリットは、参加した学生や転職希望者と直接話ができることです。直接自社の強みやメリットを相手の反応を見ながら伝え、印象づけることもできます。

参加する学生は、多くの企業と接点をつくり、イベント内で自分に合う企業を探したいといったケースが多いようです。そのため、元々自社に興味のなかった学生や転職希望者に対して自社をアピールし、応募につなげていくことが可能な場合があります。

人材紹介

人材紹介サービスを活用することで、自社にマッチした人材を効率よく採用できる確率が高まります。自社の募集するポジションや業務内容、求める経験・人物像などについて人材紹介会社と共有し、マッチした人材を登録者や人材データベースの中から紹介してくれるサービスになります。こうしたサービスの特性から、自社の求める要件にマッチした人材に絞って選考ができます。そのため、効率的に選考を進めることが可能になり、サービスの費用についても成功報酬型が主流なため、時間的、金銭的コストが無駄になりにくいと考えられます。

※人材紹介に関しては、以下の記事をご参照ください
人材紹介・転職エージェントの料金・手数料は?契約の前に知っておくべきこと

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、SNSや人材紹介サービスの人材データベースを通じて候補者に直接アプローチをする採用手法です。従来の採用活動では求人媒体などで広く求人の告知をし「応募を待つ」という採用方法が主流でした。しかし売り手市場の環境下では応募がないことも珍しくありません。そのため従来の「待つ」採用ではなく、企業から候補者にスカウトなどで直接アプローチをしていくダイレクトリクルーティングが新卒採用・中途採用とも近年注目を浴びています。ダイレクトリクルーティングは応募に至っていない候補者にも直接アプローチが可能なため「攻めの採用手法」として有効な手段と考えられます。

※ダイレクトリクルーティングに関しては、以下の記事をご参照ください
【最新】ダイレクトリクルーティングとは?他の採用手法と比較解説!

リファラル

リファラルとは紹介・推薦の意味で、リファラル採用とは従業員の紹介を通じて採用する手法になります。在籍している従業員が自社にマッチしていると感じる知人や友人を紹介するため、ミスマッチが少なく定着率が高いことが特徴です。採用難易度が高いエンジニア職や専門ポジションなどでは多く活用されており、リファラルが促進されるように紹介従業員への報奨金制度を設けたりする企業もあります。

※リファラルに関しては、以下の記事をご参照ください
リファラル採用が失敗する、ありがちな理由。成功させるポイントを紹介

母集団形成の注意点

求める人材ターゲットを明確化する

著者の経験上、採用計画においては採用人数や募集ポジションについては明確化されていても、求める人材ターゲットについては明確化されていないケースがあります。求める人材ターゲットを人物像がイメージできる段階まで明確化していくことが重要です。求める人材ターゲットが明確になれば、それに合わせた採用ブランディングの構築や採用ツールの選定などにもつなげていくことができます。

人事部門だけではなく社内を巻き込む

近年採用活動は人事部門だけが行うのではなく、配属先の部門を巻き込んで進めていく流れがみられます。面接はもとより人材ターゲットの設定や選考基準のすり合わせなどについて、配属先の部門とすり合わせをしながら進めていきます。その結果、その後の選考通過率向上や辞退率軽減、入社後の定着率向上が期待できると考えられます。

振り返りと改善が重要

欠員補充など緊急性が高い場合、準備を十分に行わないだけでなく採用活動の振り返りも不十分なケースが散見します。応募者数や選考通過率などは具体的な数値で表されるため、採用活動は比較的数値化しやすく、数値に基づいた振り返りがしやすい活動です。そのため母集団形成の手法、ツールごとの応募者数やその後の進捗の推移などについてできる限り計測し、振り返りと改善を行うことが大切です。

母集団形成は採用活動の根幹といえます。しかし企業や採用担当者が採用活動に慣れていない場合や忙しくて余力がない場合には、今回解説した母集団形成について自社で十分に取り組めないこともあるでしょう。

そのような場合には、リクルートエージェントなどの人材紹介サービスの利用を検討してはいかがでしょうか。人材ターゲットの明確化や、配属先の部門へのヒアリング、採用活動の振り返りまで、人材紹介会社が手助けしてくれ、人材紹介会社が採用成功のためのフォローを行います。本記事が御社の母集団形成の一助となり、採用活動の向上につながれば幸いです。

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**登録者数:約135万4,000名(2021年度実績:2021年4月1日~2022年3月31日の間に申し込みをいただいたサービス登録者数)

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