求人媒体は、求人サイト、転職情報、紙媒体やWEBなど多岐に渡ります。そのため採用活動を行う企業にとって、適切な求人媒体の選択は簡単なことではありません。そこで今回は、さまざまな求人媒体のなかから企業にとってメリットのある求人媒体の特徴やその選び方を解説します。

求人媒体とは

求人媒体とは、「仕事を提供したい企業」と「働きたい人」をつなぐ媒体のことを指します。

最近ではWebを利用する媒体(メディア)の印象が強いかもしれませんが、新聞や折り込みチラシ、掲示物といった紙媒体も従来から使用されてきました。

そのほか、ハローワークなどの直接人から人へ紹介するサービスや、転職フェアなど会場を利用した企業説明会なども、広い意味では求人媒体といえるでしょう。

求人媒体の種類・特徴

一口に求人媒体といっても、その特徴や効果は媒体によって異なります。「費用だけかかってしまって応募がなかった」といった事態を防ぐためにも、媒体ごとの特徴を理解したうえで適切な媒体を選択することが重要です。ここでは、それぞれの求人媒体の特徴を解説します。

紙媒体

紙媒体の代表的なものは「新聞の求人広告」です。掲載サイズ、掲載曜日、配布地域など、さまざまな条件によって細かく価格設定が分かれています。

新聞と並んで活用されているのは「チラシ」です。チラシには新聞の購読者層をターゲットにしたもの、直接ポスティングされるものなどがあります。

多くの人が訪れる駅構内やコンビニエンスストア、ショッピングモール、量販店、公共施設などに置かれる求人媒体が「求人情報誌」で、無料版と有料版があります。

Webサイト

Webサイトは、新卒や中途、アルバイト、パートなど、採用目的に合わせた求人を出すことができるのが特徴です。また、全世界に向けた募集も可能な求人媒体です。

ハローワークインターネットサービスなどの利用料が無料のものや、Indeedなどの一部課金型、リクナビNEXTなどの先行投資型があります。

ハローワーク

ハローワークとは、「憲法に定められた勤労権の保障のため、障害者や生活保護受給者の方など民間の職業紹介事業等では就職へ結びつけることが難しい就職困難者や人手不足の中小零細企業を中心に、国が無償で支援を行う雇用のセーフティネットの中心的役割を担うもの」です。

引用:厚生労働省「公共職業安定所(ハローワーク)の 主な取組と実績 」(2022年4月)

ハローワークは全国544カ所(令和4年4月1日時点)にあり、そのすべてをネットワークでつなげた地域密着型の就職支援を実施しています。

出典:厚生労働省「公共職業安定所(ハローワーク)の 主な取組と実績 」(2022年4月)

大学や短期大学、専門学校等の教育機関

大学1年生や2年生でも参加が可能な業界別の就職ガイダンスを実施したり、授業として単位に組み込まれたインターンシップや、企業と提携して実施されるインターンシップなどがあります。また、キャンパス内で合同企業説明会が行われたり、その大学出身のOB・OGが合同企業説明会へ一緒に来て説明をする場合もあります。

転職エージェント

転職エージェントは、採用を考えている企業に、入社してもらいたい人物像や経験、スキル、提供できる条件面を確認し、それを求人情報として保有します。そして、マッチしそうな転職希望者に対して求人を紹介し、面接の日程調整など、入社までのフォローを行います。

※転職エージェントに関しては、以下の記事をご参照ください

中途採用における人材紹介・転職エージェントサービスの特徴とメリットを解説

合同企業説明会

リクルートのような就活情報サイトを運営する企業や各地方自治体が主催し、複数の企業が同じ会場で一斉に会社説明会を行うイベントです。昨今では、WEB上で開催される合同説明会もあります。

各求人媒体のメリット・デメリット

各求人媒体の主なメリットとデメリットについて紹介します。

紙媒体のメリットとデメリット

新聞のメリット

・インターネットを使い慣れていないなど、Webが苦手な層にもアプローチができる
・新聞各社は自社の購読者について、その属性調査を実施し、広告出稿を検討している顧客に向けてそのデータを提供しているケースがほとんどです。これらの購読者属性を踏まえ、自社のターゲットに合った新聞を選んで広告を出すことで、効率的に求人活動につながる可能性があります。

新聞のデメリット

・新聞購読者が減少しており、地域によっては効果が薄い場合がある

チラシのメリット

・新聞購読者の層の目にとまりやすい
・チラシを入れてから数日で応募者が集まり、短期間で採用できる可能性がある
・インターネットを使い慣れていないなど、Webが苦手な層にもアプローチができる

チラシのデメリット

・新聞購読者が減少しており、地域によっては効果が薄い場合がある

求人情報誌のメリット

・インターネットを使い慣れていないなど、Webが苦手な層にもアプローチできる
・掲載枠の大きさによって価格が決まっていることが多く、比較的低コストで求人を出すことができる

求人情報誌のデメリット

・設置場所によって効果が変わる
・求人情報誌に限ったことではないが、募集定員に達していても、応募がくる可能性がある
・週ごとや月ごとで掲載内容が入れ替わることが多く、長期的に募集したい場合はあまり向かない

ハローワークのメリットとデメリット

メリット

・無料で利用できるため、採用コストを抑えることができる
・公的機関であるため、求職者にとっては政府が運用しているという安心感がある
・追加費用などがかからず募集期間の延長ができる
・利用者が多い など

デメリット

・求人はハローワークインターネットサービスなどを通じ、日本全国に向けて掲載することができるが、利用者は管轄地域の住人が中心となるため、広範囲からの応募を獲得することが難しい

教育機関のメリットとデメリット

メリット

・大学や専門学校など、ターゲットとなる教育機関の学生に対して、効率的にアプローチすることができる
・教育機関と関係性を築くことで、学生に対して学校側が自社をアピールしてくれることもある

デメリット

・教育機関との関係性で成果が変わるため、関係性を作るまでに時間がかかる

・教育機関の所在地によっては、移動コストなどが高くなることもある

Webサイトのメリットとデメリット

メリット

・職場の雰囲気が伝わる動画など、文章だけでは伝えきれない情報を伝えることができる
・ハローワークインターネットサービスといった求人掲載料が無料の媒体もある
・企業が保有する自社メディアである場合、文字数や写真の枚数などに制限がなく、情報をたくさん載せることができる

デメリット

・求人媒体内に掲載されている求人情報数が多いと自社の求人が埋もれてしまうことがある
・求人掲載に費用がかかることが多い

転職エージェント

メリット

・著者の経験上、キャリアへの意識が高かったり、自身がもつスキルの市場価値を認識している求職者が多いと考えられる
・異業種や異なる職種で活躍していた人材に出会える可能性がある
・ミスマッチや採用したい人材に辞退されるリスクが軽減できる
・成功報酬型の転職エージェントであれば、採用時に紹介料がかかるがそれ以外には費用がかからない場合が多い
・非公開で採用活動できる

デメリット

・一般的にかかる費用は成功報酬型なら年収の30%から35%となるので、費用が比較的高額になる

合同企業説明会

メリット

・大学や地方自治体など、公共性の高い団体が主催する場合、出展費用を抑えることができる場合がある
・偶然の出会いから自社の認知を広げる機会が生まれることがある

デメリット

・有名企業を中心に人が集まりやすい
・就職活動シーズンのピークが過ぎると学生の参加者の人数は大幅に減少することがある

各求人媒体の注意点

求人媒体によって費用や特徴、アプローチできる求職者の層などにおいて異なり、その活用方法もさまざまです。利用を考えている求人媒体の担当者から説明を受け、自社がターゲットとする人材の層や今後の採用計画、これまでの採用状況を含めて検討しましょう。

また、複数の求人媒体から比較するかたちで選定するとよいでしょう。

ここでは特に、教育機関、ハローワーク、合同企業説明会を利用する際の注意点を解説します。

教育機関を利用する際の注意点

著者の経験上、どのような企業でも基本的に求人を受け入れてくれますが、著名な企業やOB・OGが勤務している企業は歓迎されることが多いと考えられます。学校内で求人情報は学生向けに公開されますが、学生が知らない企業名だと応募が少ない傾向にあります。また、教育機関によって就職に対しての力の入れ方が違うので、熱心に紹介してくれるところとそうでないところで差が感じられることがあります。

ハローワークを利用する際の注意点

ハローワークや民間の人材紹介会社で求人募集を行う際には、職業安定法に基づき、最低限明示しなければならない労働条件があります。

求人情報の必須項目

・業務内容

・契約期間

・試用期間

・就業場所

・就業時間

・休憩時間

・休日

・時間外労働

・賃金

・加入保険

・募集者の氏名又は名称

・派遣労働者として雇用する場合は、「雇用形態:派遣労働者」のように、雇用形態を明記

・受動喫煙防止措置の状況

参考:厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」

※求人情報に関しては、以下の記事をご参照ください

効果的な求人票・求人広告の書き方!コツとNG表現も解説

また、募集内容について、誇大な表現をしてはならないなどの注意事項もあります。

募集内容の的確な表示に関する指針

1 明示する労働条件等は、虚偽又は誇大な内容としないこと

2 求職者等に具体的に理解されるものとなるよう、労働条件等の水準、範囲等を可能な限り限定すること

3 求職者等が従事すべき業務の内容に関しては、職場環境を含め、可能な限り具体的かつ詳細に明示すること

4 労働時間に関しては、始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働、休憩時間、休日等について明示すること

5 賃金に関しては、賃金形態(月給、日給、時給等の区分)、基本給、定額的に支払われる手当、通勤手当、昇給に関する事項等について明示すること

6 明示する労働条件等の内容が労働契約締結時の労働条件等と異なることとなる可能性がある場合は、その旨を併せて明示するとともに、労働条件等が既に明示した内容と異なることとなった場合には、当該明示を受けた求職者等に速やかに知らせること

7 労働者の募集を行う者は、労働条件等の明示を行うに当たって労働条件等の事項の一部を別途明示することとするときは、その旨を併せて明示すること

引用:厚生労働省「平成11年労働省告示第141号 第3

また、男女雇用機会均等法に基づき、労働者の募集や採用において、性別を理由とした差別は禁止されています。さらに、雇用対策法の改正により、事業主は労働者の募集および採用について、年齢と関係なく均等な機会を与えることが必要になったため、一部の例外を除き、年齢制限の禁止も義務化されています。なお、採用にあたっては、家族の状況や生活環境などといった、応募者の適性や能力と関係のないことによって採否を決めることはできません。

さまざまな注意事項がありますので、詳しくはハローワークや厚生労働省のWebサイト、パンフレットなどをご確認ください。

参考:ハローワークインターネットサービス – 事業主の方へのサービス

合同企業説明会を利用する際の注意点

規模によってかかる費用が大きく変わるので、詳細を確認してから参加を決める必要があります。ブースへの装飾にバリエーションがあって、すべてがオプションになっていたり、出展の場所によっても金額が変わることがあります。また、当日の天候や交通機関の乱れによって来場者数が変わるなど、不可抗力によって期待していた来場者数が見込めない場合があります。学内での説明会では、学生への事前告知の浸透度合いによって来場者数が上下します。

求人媒体を選ぶ前に確認すること

いずれの求人媒体を利用する場合でも、媒体選びの前に確認すべきことがあります。

まずは、自社の採用基準を明確にしておくことが必要です。即戦力となる人材が必要なのか、それとも未経験者でもよいのかなど、それだけでもかかる費用は違ってきます。

また、採用にかけられる予算などについても明確にすることが重要です。採用活動に面接はつきものなので、人件費についても計算したうえで予算を組みましょう。

さらに、採用人数や入社時期によっても費用は変わります。入社時期を急ぐ場合には短期間で多数の候補者に声がけをしなければならないため、そうした事情を踏まえて費用を計算しましょう。

求人媒体の選び方

有料求人媒体の多くは、求人が掲載されると同時に課金される「掲載課金型」になっています。求人媒体のなかには、1つの媒体に求人を出せば、すでに利用している会員や登録者だけでなく、複数の媒体にも同時に掲載してくれるサービスを行っているものもあります。
こうした求人媒体の強みを比較して、ターゲットとする人材にアプローチできるか、その導線が描けているかなどについて確認しましょう。

求人媒体の利用手順

新聞

基本的に新聞掲載は、広告会社を通して行われます。掲載時期や掲載する新聞、予算などについて広告会社と相談しながら見積もりを作ります。新聞への広告掲載が初めての場合は、企業審査があるため、謄本などの書類が必要になります。また、広告内容の審査を通すことも必要です。これらのプロセスを経て、新聞紙面へ掲載されます。

折り込みチラシ

Webまたは電話で問い合わせをしたあと、営業担当から連絡があるので、担当者と求人内容や希望をすり合わせ、使用する媒体や料金などについての説明を受けます。その後、申し込みを行い原稿を作成します。取材や撮影が必要であれば実施し、紙面に掲載して発行してもらいます。

求人情報誌

求人広告を扱っている会社へ広告掲載についての問い合わせをメールや電話で行います。その際、自社の採用条件や広告費の予算などの相談をし、最適なプランの提案を受けましょう。自社の求人紙面の場所など、広告の掲載条件に納得ができたら申し込みをします。その後、申し込んだ求人広告会社から、紙面に掲載するための企業紹介となる取材を受けます。求人広告会社が作成した原稿に必要であれば、自社原稿を追加して完成させ、紙面に掲載して発行してもらいます。

ハローワーク

事業所の所在地を管轄するハローワークで「事業所登録シート」と「求人申込書」を提出し、申し込みをすると求人情報がハローワークの情報端末内に掲載されます。希望すればハローワーク内の端末だけでなく、ハローワークインターネットサービスでも公開することができるので、全国からの応募に対応することもできます。

大学や短期大学、専門学校等の教育機関

多くの大学をはじめとする教育機関では、掲示板や学生専用の学内システムを所有しており、求人情報を掲載してくれます。大学などの就職課やキャリアセンター(各教育機関で名称は異なる)に各教育機関のホームページから所定の申込書(求人情報)をダウンロードしFAXまたは郵送、メール添付のかたちで申し込みをします。教育機関によっては、企業側で用意した求人情報でも受け付けてくれる場合もありますので、詳細については問い合わせるとよいでしょう。

Webサイト

求人を扱うサイトの運営会社と契約をしたあと、運営会社の担当が募集したい役職や就いてもらいたいポジションの職務内容、希望する人物像などについて、ヒアリングシートなどを使用し、サイトに掲載するための原稿を作ります。原稿には写真や動画が使用できる場合もあるので、各運営会社に確認しましょう。いったんでき上がったサイトに修正が必要な場合は依頼をし、完成したら求人広告として掲載がされます。

転職エージェント

リクルートエージェントの場合、まずは申し込みを行い、必要な人材要件のヒアリングを受けます。そのあと、キャリアアドバイザーが条件に合った人材に求人情報を紹介し応募を募ります。そしてリクルーティングアドバイザーが採用候補者のスキルや経験を確認し、最適な人材を紹介します。採用にあたっては、候補者への連絡や面接日の設定、交渉などのサポートだけでなく、候補者と事前に面談して会社との合致度を確認したり、採用手法やノウハウも提供しています。

合同企業説明会

出展ブースごとに決められた出展料を支払って参加します。開催地域や出展ブースの大きさ、オプションの有無などについて決めることができます。最近では、出展料とイベントのWEB告知をセットにした広告掲載料も含んだ形で募集されることも多くなっているので、担当者とよく相談したうえで詳細について決めるとよいでしょう。

求人媒体の活用は退職者が出て初めて準備にとりかかるようでは、手おくれの状態になってしまいます。よい人材にめぐり合うためには、理想とする人材がどのような思考のもとに生活し、行動しているのかについて普段から研究し、備えておく必要があります。そのうえで自社にとって最適な求人媒体を活用し、安定した企業経営といきいきとした職場づくりを目指しましょう。

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