採用活動のなかでも新卒採用は、採用したい学生の要件や人数などについて明確な目標を定めることが重要です。その目標に基づいて、インターンシップなどを行い、就活生との接点を増やしていきます。自社のアピールや、就活生とのやりとりについては、無理のない体制で進めていくことが大切です。今回は、これらの採用活動における採用スケジュールについて解説します。

24卒と25卒の採用スケジュール

まず24卒と25卒について、想定される採用スケジュールについて解説します。

24卒の採用スケジュール

2018年10月、それまで新卒採用の規準とされてきた、経団連の「採用選考に関する指針」が廃止されました。これをきっかけに、新卒採用は政府の「就職・採用活動に関する要請」に準拠して行われるのが一般的になりました。

具体的には、広報活動開始を卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降に、採用選考活動開始を卒業・修了年度の6月1日以降に、正式な内定日を卒業・修了年度の10月1日以降に実施することが要請されています。24卒の新卒採用については、「就職・採用活動に関する要請」を基に、次のようなスケジュールが想定されます。

24卒採用のスケジュール
2022年5月~8月夏インターンシップ実施 採用に関する広報、説明会などの計画
2022年9月~12月秋・冬インターンシップ実施 24卒採用計画の確定
2023年1月~2月インターンシップ参加者のフォロー 採用活動に対する社内体制の整備 採用活動の最終準備
2023年3月~5月採用活動開始 会社説明会の実施 エントリーシートへの対応
2023年6月~9月面接・選考 内定者決定 内定者フォロー
2023年10月~ 2024年2月内定式実施 入社前研修実施

出典:

内閣官房「就職・採用活動に関する要請」

厚生労働省「2024 年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」令和4年11月30日

25卒の採用スケジュール予測

2022年4月18日、大学側と経団連の代表者で構成された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」において、学生のキャリア支援に関する今後の考え方を取りまとめた「産学協働による自律的キャリア形成の推進」が公表されました。

そのなかで、企業がインターンシップに参加した学生の情報を採用選考に活用することを推奨する見解が示されています。

そのため、25卒の採用スケジュールについては、インターンシップに参加した学生の情報を採用選考に活用することを考慮したものになると考えられるため、面接や選考が24卒よりも前倒しになる可能性があると考えられます。

出典:

日本経済団体連合会「産学協働による自律的キャリア形成の推進」

新卒採用時期ごとの学生と企業の動き

新卒採用に向けて、学生と企業は、それぞれの時期にどのような動きをするのか、一般的に考えられる流れについて説明します。

5月~8月:夏インターンシップ

学生の動き

一般的に、大学は、7月中旬から9月中旬までの期間が夏休みです。

夏休み期間を利用して企業のインターンシップに参加する学生は多く、結果的に夏インターンシップに活発に参加する学生がいます。

インターンシップとは企業内で仕事の体験を行う制度であり、学生にとって、「就職したい企業の社風や就きたい仕事の実態を知ることができる」「自分自身の仕事に対する適性に気づく」「就業を通じてビジネスマナーや知識を習得することができる」などのメリットがあります。夏インターンシップの申し込みは6月頃からなので、早めに申し込みをする学生が多くなります。

インターンシップへの参加は本格的な就職活動に突入する前年の3年生時に行うことが一般的ですが、近年はインターンシップの対象となる学年を限定しない企業も多いため、1年生や2年生のときからインターンシップに参加する学生も見られます。

企業の動き

5月頃から前年度の採用活動の振り返りを行い、今後の採用に向けた改善点を洗い出したうえで、今年度の採用活動を最適に進めていくための対応を検討していきましょう。

さらに、夏期は学生のインターンシップへの参加率が高くなるため、説明会やイベントの実施、Webを通じての対応、リクルーター活動の実施などを通じて、学生と接点を持つ機会を増やすことが大切です。また、夏インターンシップへの応募状況を勘案しながら秋冬インターンシップの準備を進めていきます。

9月~12月:秋冬インターンシップ

学生の動き

夏インターンシップに参加できなかった学生は、秋冬インターンシップに参加することが多くなります。

一方で、既に夏インターンシップに参加済みの学生は、この時期に業界や個別企業の分析を行い、インターンシップの結果を踏まえたうえで、応募したい企業の候補を特定すると考えられます。また、夏インターンシップに参加済みの学生のなかには、企業や自分自身の研究を行うために秋冬のインターンシップにも参加する人もいます。

なお、この時期は大学の授業があるため、「ワンデー仕事体験」のような短期間でのインターンシップが中心となります。

企業の動き

企業は、今後のインターンシップ、説明会や座談会といったイベント、採用スケジュールなどについての案内を行い、インターンシップに参加した学生との接点を維持するための対応に力を入れます。また、OBやOGによる紹介や学校への訪問案内などもこうした取り組みに含まれます。

さらに、採用に関する広報活動の準備も進めていきます。自社サイトの採用ページの修正や求人媒体の選定、企業紹介のためのパンフレットや合同説明会で配布するリーフレット、採用動画などのツール作成の準備を行います。

1月~2月:最終準備

学生の動き

一般的に1月下旬に後期試験があるため、1月は学業優先となります。その後、2月上旬から3月下旬までの期間が春休みとなることが多いため、多くの学生が2月には就職活動を本格化させるといえます。具体的には、応募したい企業の情報収集や、合同説明会への参加などが活発になります。

企業の動き

面接官の選定やトレーニング、面接官とのスケジュール調整や面接会場の確保、求人媒体に掲載する原稿の確認や企業紹介のためのパンフレットなどの制作状況の確認など3月から採用活動を開始するにあたっての準備を行う時期です。

また、学生の後期試験が終了する2月以降、インターンシップなどで接点を持った学生へのフォローも強化していきましょう。具体的にはインターンシップ中の様子を撮影した録画映像を送付したり、その他の自社に関わる動画やWebコンテンツを紹介するなどして、接点を持った学生が自社に対する理解と興味を深めることを後押しします。

3月~5月:採用活動開始

学生の動き

基本的に3月の採用広報解禁に合わせて、学生の就職活動が活発になります。応募したい企業の採用ページを訪問したうえでエントリーシートを入手・提出し、企業説明会出席の予約を入れるなどします。

企業の動き

この時期になると企業の採用担当者は、学生への各種連絡や企業説明会などがスタートし、選考活動に忙殺されます。

3月から4月にかけて企業説明会を集中的に行い、その後、6月以降に実施する面接や最終選考をスムーズに進めていくための準備を行います。

6月~9月:選考・内定・内定者フォロー

学生の動き

内定を得られていない学生は、企業へのエントリーシートの提出や企業説明会への参加に勤しみます。また、複数の企業から内定を得た学生は、就職先を一社に絞り込み、ほかの企業に対して内定辞退を行います。さらに、就職先企業の同期学生との交流を深める学生もいます。

企業の動き

書類選考や適性試験に合格した学生との面接、選考、応募した学生に対する合否連絡を行います。また、内定を出した学生に対して内定辞退を防止するための内定者フォローにも力を注ぎます。具体的には、内定者を対象とした懇談会や交流会、入社前研修を実施するなどの対応を行います。

近年の学生が親に就職先に関する相談をすることを考慮し、一部の企業は、親に対してアピールを行うケースもあるようです。

10月~2月:内定式・入社前研修

学生の動き

10月に内定式が行われるのが一般的です。そのため、内定式に合わせて就職先を最終的に決定し、就職活動を終える学生が増えます。一方、内定辞退の選択肢を持ち続けたまま、ほかの内定者や、内定を得た企業の社員とのコミュニケーションを取り、慎重に「この企業に入社してもよいのか」についての見極めを行う学生もいます。

企業の動き

内定者の人数が採用目標人数に達していない場合には、引き続き学生と接点を持ちながら面接や選考、追加の採用を進めていきます。

内定者の人数が採用目標人数に達している場合には、内定者の入社までのモチベーションを保ち、入社後に即戦力となれるように、配属先での業務に関連した実用的な知識やパソコンを使いこなすためのスキルの習得、社会人としての心構えの理解などを目的とした入社前研修に力を入れます。

採用スケジュールの組み方のポイント

採用スケジュールを組むにあたって、次のような点に留意することが重要です。

採用したい学生の動向をチェックする

毎年、さまざまな形で学生の就職活動を支援するための就活イベントが開催されています。企業が主催するもの以外にも、採用支援や就職支援を行う企業主催の合同説明会やセミナー、学生コミュニティ主催の交流会などが随時催されます。こうした就活イベントを機に動き出す学生も多いため、イベントのスケジュールや内容を事前に確認し、学生と接点を持つ方法やアピール内容などについて、検討を重ねるとよいでしょう。

競合他社の動向をチェックする

著者の経験上、競合他社とは新卒採用に対するニーズが重なってしまうケースが多くなります。そのため、採用に関する競合他社の動向を注視する必要があります。

競合他社に関して、採用活動の開始時期や活動の方法、選考日程などをチェックし、奪い合いが生じない状況にすることが賢明だといえるでしょう。中小企業の場合は同業界の大企業の選考時期を確認し、採用スケジュールを後にずらして学生へのアプローチを行うことで、同業界を志望する学生を採用できる可能性が広がります。

自社のリソースをチェックする

理想的な採用スケジュールを組めたとしても、実行できなければ意味がありません。学生が就職活動を行う時期は決まっているため、人員不足によって出遅れてしまったり、学生に対する対応が中途半端になってしまった場合、採用活動の遅れを取り戻すことが難しくなります。そのため、自社のリソースで必ず実行できる採用スケジュールを組むことが重要です。策定した採用スケジュールに自社単独で対応することが難しい場合には、採用サポート業者などの外部リソースの活用を検討することも考えられます。

前年度の対応をチェックする

新卒の採用活動は毎年行われるものですが、採用の環境は変化するため、過去の手法が今後も通用するとは限りません。そのため、前年度の対応を振り返ったうえで、改善点を認識し、今年度の採用スケジュールの策定に活かすなど、環境の変化に合わせて採用活動を変化させる必要があります。

※採用計画の立て方については、こちらもご覧ください。

失敗しない採用計画の立て方とは?具体的な手順と求める人材を採用するためのコツ

新卒採用も、新製品の販売などと同様に、戦略的な思考で行うことが大切です。採用したい学生像(ターゲット)を明らかにしたうえで、ターゲットと接点を持つための最適な方法やタイミング、アピール内容などを考え、ターゲットとマッチングする可能性を高めることで、採用目標が達成されやすくなります。今回は、採用活動の流れから、採用スケジュールを組む際のポイントなどについてご紹介しました。こうしたポイントを踏まえながら、採用スケジュールを検討してみてはいかがでしょうか。

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