コロナ禍で、リモートワーク・テレワークという働き方が注目を浴びています。在宅勤務を中心としたオフィスの外で働く勤務形態のことであり、導入する企業はコロナ禍を背景に倍増しています。リモートワーク・テレワークは、感染対策という側面だけではなく、仕事の効率や従業員の満足度を高めるという面でのメリットもあります。この記事では、リモートワーク・テレワークのメリットや導入のための注意点などを解説します。

リモートワークとは

リモートワークとは、「遠隔」という意味を表す「remote」と、「働く」という意味を表す「work」を組み合わせた言葉であり、オフィスなどの勤務地以外で働くことを意味します。

テレワークとの違い

テレワークとは「離れた」という意味を表す「tele」と、「働く」という意味を表す「work」を組み合わせた言葉であり、意味はリモートワークと同じです。
所定の勤務地以外で働くことに関して、国や自治体はテレワークという呼び方で統一しており、テレワークに関して「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義しています。
引用:厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト」

一方、民間企業では、リモートワークという呼び方も広がっています。

在宅勤務とは

在宅勤務とは、自宅で働くことです。リモートワーク・テレワークの形態の一部です。
リモートワーク・テレワークには在宅勤務以外に、企業が所定の勤務地以外に設けた仕事場で働く「サテライトオフィス勤務」、社外での移動中や外出先などでノートパソコンやタブレットを駆使して働く「モバイル勤務」という形態があります。

リモートワーク・テレワークの普及状況

総務省が全国の企業2,393社を対象に実施した情報通信サービスの利用状況に関する調査によると、51.9%の企業から、現在テレワークを実施しているという回答が得られました。

引用:総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」(2022年5月27日)

業種別では、情報通信業が最も高く、実施率は97.7%に上っています。

引用:総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」(2022年5月27日)

導入形態は在宅勤務が圧倒的に多く、テレワークを実施していると回答した企業の91.5%が在宅勤務に対応していると回答しています。

引用:総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」(2022年5月27日)

導入目的に関しては、「新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため」が圧倒的に多いものの、「勤務者のワークライフバランスの向上」や「業務の効率性(生産性)の向上」と回答した企業も、それぞれ30%近く存在しています。

引用:総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」(2022年5月27日)

企業がリモートワーク・テレワークを導入するメリット・デメリット

リモートワーク・テレワークの実施は、企業にとって、経営の効率化が進むといったメリットがある反面、従業員の業務管理が難しくなるといったデメリットも存在します。

企業にとってのメリット

リモートワーク・テレワークによる企業にとっての代表的なメリットは、主に以下の4つが考えられます。

事業コストを削減できる

リモートワーク・テレワークを実施することで、オフィスに出社する従業員数が減少した場合、通勤費や光熱費などのコストを削減することができます。さらに、出社する従業員数が減ることで、現在よりも狭いオフィスへの移転が可能になるなど、地代や家賃のコストを削減することもできます。

優秀な人材の雇用や定着化が進みやすくなる

リモートワーク・テレワークを実施することで、遠隔地や在宅での勤務が可能になります。それにより、遠隔地に居住する優秀な人材を雇用することが可能になり、育児や介護などで優秀な人材が離職することを防止することもできます。

営業効率が向上する

リモートワーク・テレワークを実施することで、営業業務の実施に関して、オフィスへの出社や帰社、オフィス内での事務作業などの時間が不要になります。それにより、顧客対応のための時間を増やすことができるようになり、営業効率が向上します。

生産性が向上する

リモートワーク・テレワークを実施することで、仕事中に話しかけられる、外部からの電話で作業が中断される、社内での会議に時間を拘束されるなどの状況から解放されます。それにより、生産性が向上します。

※生産性に関しては、以下の記事をご参照ください

【事例付き】労働生産性を向上させるには?計算方法や業界ごとの違いを解説

企業にとってのデメリット

メリットがある反面、企業にとって、次のようなデメリットが存在すると考えられます。

勤務状況を管理しづらくなる

リモートワーク・テレワークを実施することで、仕事中の個人の行動を上司が把握することが難しくなります。それにより、勤務状況を管理しづらくなります。

人事評価が難しくなる

リモートワーク・テレワークを実施することで、個人の仕事への取り組みや能力の成長などを上司が把握することが難しくなります。それにより、人事評価が難しくなります。

※人事評価に関しては、以下の記事をご参照ください
人事評価制度とは?種類や基準の作り方など、コツを詳しく解説

機密情報等の漏えいリスクが高まる

リモートワーク・テレワークを実施することで、従業員が会社の見えないところで取引情報や個人情報などを取り扱うことが可能になります。それにより、機密情報等の漏えいリスクが高まります。

リモートワーク・テレワークを実施する従業員のメリット・デメリット

リモートワーク・テレワークの実施は、従業員にとってもメリットとデメリットがあります。

従業員にとってのメリット

リモートワーク・テレワークは、従業員にとっては、主に生活面においてさまざまなメリットが存在します。例として以下の3つを説明します。

1.通勤の負担が軽減される

リモートワーク・テレワークを実施することで、オフィスに出社するための移動が不要になります。それにより、通勤時間の拘束がなくなり、長時間満員電車の中で過ごすことなどによるストレスからも解放されます。

2.ワーク・ライフ・バランスが実現しやすくなる

リモートワーク・テレワークを実施することで、家にいる時間が長くなり、プライベートのための時間を増やすことができます。それにより、ワーク・ライフ・バランスが実現しやすくなります。

3.育児や介護との両立をしやすくなる

リモートワーク・テレワークを実施することで、育児や介護の対象者のそばで仕事をすることができるようになります。それにより、育児や介護との両立をしやすくなります。

従業員にとってのデメリット

リモートワーク・テレワークは従業員にとって、たとえば次のようなデメリットも存在します。

作業効率が低下してしまうことがある

リモートワーク・テレワークのなかでも、多くの企業が対応しているとする在宅勤務の場合、テレビやゲームなどの娯楽が間近に存在する環境下で仕事をしなければならなくなります。それにより、仕事に集中しにくくなり、作業効率が低下してしまうことがあります。

業務上の必要な情報を得にくくなる

リモートワーク・テレワークを実施することで、職場内で上司や同僚に不明点を都度確認したり、社内の書類やデータを閲覧して確認したりといった行動が取りづらくなります。それにより、業務上の必要な情報が得にくくなることがあります。

ほかの従業員との連携が取りづらくなる

リモートワーク・テレワークを実施することで、チーム内でほかの従業員と協力し合いながら仕事を進めることがしづらくなります。それにより、ほかの従業員との連携が取りづらくなることがあります。

リモートワーク・テレワークにおける個人の満足度とストレス調査について

リモートワーク・テレワークにおける個人の満足度とストレスに関して、株式会社リクルートキャリアが2020年9月に調査を行いました(※)。2種類のアンケート調査から、リモートワーク・テレワークは、満足感だけではなく、新たなストレスももたらしていることが見えてきています。

※出典:株式会社リクルートキャリア
「新型コロナウイルス禍における働く個人・企業の意識調査トピックス編」(2021年2月17日)
「新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査」(2021年1月22日)

調査結果を詳しくみていきましょう。

満足感の源泉は、働く時間や場所の柔軟性

働く個人と企業の人事担当者2,213名を対象としたアンケート調査によれば、現在のテレワークでの働き方について「総合的な満足度」は51.2%に上りました。
満足する理由として、働く時間や場所に柔軟性があること、有給休暇が取得しやすくなったことなどを挙げる人が多くなっています。オフィス出社が義務ではなく、通勤から解放されたことが、多くの人の満足度を上げたと考えられます。

引用:株式会社リクルートキャリア「新型コロナウイルス禍における働く個人・企業の意識調査トピックス編 テレワークでの働き方の満足度、新型コロナウイルス禍の影響で導入した人事制度など ―2020年9月調査―」

家族との関係や雑談のある・なしがストレスの原因に?

一方で、リモートワーク・テレワークにおけるストレス状況はどうでしょうか。

同調査から家族形態によるストレス状況の違いを分析したところ、テレワーク前には感じなかったストレスを最も感じていたのは、「夫婦(子どもあり)」でした。これに「ひとり暮らし」、「夫婦(子どもなし)」が続きます。

引用:株式会社リクルートキャリア
「新型コロナウイルス禍における働く個人・企業の意識調査トピックス編 テレワークでの働き方の満足度、新型コロナウイルス禍の影響で導入した人事制度など ―2020年9月調査―」

年代別ではストレス状況に大差はなく、全年代について約60%の人がテレワーク前には感じなかったストレスを感じたと回答しています。ただ、そのストレスを解消できたかどうかは、年代によって差が出ています。
たとえば20代では41.1%がストレスは解消されたと答えているものの、50~60代では83.6%の人がストレスを解消できずにいると回答しました。
興味深いのは、50~60代はテレワーク中の雑談が最も少ないことです。それがこの年代でストレスがいまだ解消されていない原因の一つと推測されます。

参考:株式会社リクルートキャリア

「新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査 テレワーク経験者の6割、テレワーク前にはなかったストレスを実感 仕事中の「雑談」有無の違いでストレス解消具合に14.1ptの差」

リモートワーク・テレワーク導入時にやるべきこと

リモートワーク・テレワークは従業員の働き方に変化をもたらしますが、ルールが不明確なことで、企業と従業員との間でトラブルが発生することがあり得ます。また、セキュリティ面で企業側のリスクが高まる懸念もあります。
これらのトラブルやリスクを防止するためには、リモートワーク・テレワーク導入時にどのような対応を取ればよいのでしょうか。対応策の例を挙げました。

ルールの明確化と周知徹底をはかる

リモートワーク・テレワークに関するルールを明確にした上で、従業員に周知徹底する必要があります。
従業員とのトラブルを防止するために、少なくとも以下に挙げた事柄についてルールを明確にし、規定化することが望ましいでしょう。

対象者を明確にする

リモートワーク・テレワークを実施できる対象者の範囲を明確にする必要があります。たとえば、現場業務以外の全従業員や、自分自身で仕事を管理することのできる一定年数以上の業務経験を積んだ従業員など、対象者を明文化して社内で共有します。

勤務できる場所を明確にする

リモートワーク・テレワークで勤務できる場所を明確にします。自宅でもよいのか、会社が指定したサテライトオフィスのみでの勤務を認めるのかなど、企業の状況に合わせて設定しましょう。

実施期間中の出社や労働時間算定ルールについて明確にする

「毎週水曜日はオフィスに出社する」、「オフィス外での勤務は、勤怠管理ソフト上に記録された作業の開始時刻と終了時刻を始業・終業時刻として取り扱う」などの、リモートワーク・テレワーク実施期間中の出社義務や労働時間算定に関するルールを明確にします。

実施期間中の業務報告のルールを明確にする

リモートワーク・テレワーク実施期間中の業務報告に関するルールを明確にします。たとえば、「会社が指定した日報を作成し、業務終了時に上司にメールで送付する」といったルールが考えられます。

勤務に必要な費用の負担についてルールを明確にする

リモートワーク・テレワーク実施期間中の費用負担に関するルールを明確にします。たとえば、Web会議に必要な周辺機器の購入や、日中在宅勤務を行うことによる電気代の増加想定額を会社が負担するなどを打ち出している企業もあります。

実施の終了についてのルールを明確にする

リモートワーク・テレワークの終了に関するルールを明確にすることも大切です。たとえば、「会社は業務の必要がある場合、特定の従業員もしくは対象者全員のリモートワーク・テレワークの実施を終了させることができる。その場合、終了日の2週間前までに通告する」といった形で決めておきます。

誓約書などを締結する

リモートワーク・テレワークを実施することで、従業員が会社の見えないところで業務に関する情報や機器等を取り扱う状況が発生します。それにより、以下のようなリスクが生まれてきます。

  • 従業員による機密情報の社外流出
  • 従業員による取引情報や個人情報の不正利用
  • 従業員による貸与機器の破損や紛失

これらのリスクに関して抑止力になるとともに、責任の所在を明確にするために、以下のような誓約書等をリモートワーク・テレワークの対象となる従業員との間で締結することが望ましいといえます。

  • 秘密保持の誓約書
  • 貸与機器類の確認書
  • 貸与機器類の使用に関する誓約書

リモートワーク・テレワークの注意点

リモートワーク・テレワークに関しては、部下が上司の目の届かないところで仕事をするため、次のような課題が発生しやすくなります。

  • 上司が部下に対するマネジメントをしづらくなる
  • 上司が部下の作業進捗を管理しづらくなる
  • 部下のストレスが増すことがある
  • 長時間労働リスクが発生しやすくなる

これらの業務上の課題についても、対策を取る必要があります。対策の例を挙げました。

部下に対するマネジメントへの対応

対面では、雰囲気やニュアンスで伝えるマネジメントも可能でしたが、リモートワーク・テレワークでは、より明確に伝える必要が出てきます。ポイントは、明確な言葉とキーワードで伝えることです。
たとえば、部下に対して仕事の指示を行う場合、「いつまでに、何について、このような成果を出してほしい」「そのキーワードとなるのは〇〇だ」というような伝え方をするとよいでしょう。

また、リモートワーク・テレワークでは、時間を管理するのではなく、目標に至るまでのプロセスを管理するマネジメントが求められます。
部下に対して出してほしい成果を明確に伝えた上で、目標への到達状況やアウトプットを把握し、管理していきましょう。

部下の作業進捗管理への対応

リモートワーク・テレワークでは、上司が部下の稼働状況を直接見ることができないため、部下の作業進捗管理がしづらくなります。
それに対して、「今日(今週)は必ずここまでの工程部分を仕上げること」など部下に対して求める成果を明確に伝えることを徹底した上で、一日の作業終了時の報告ルールを明確化することが望ましいです。

部下のストレス増加防止への対応

子どもが騒ぐなど家では作業に集中できない、孤独を感じてしまう、上司が頻繁に連絡をしてくるなどの理由で、リモートワーク・テレワークを行う部下のストレスが増加することがあります。

それに対しては、サテライトオフィスを用意する、出勤日を定期的に設ける、管理職者に対する意識付け教育を行うなどの対応を取る必要があります。

長時間労働リスク防止への対応

リモートワーク・テレワークでは、部下が自分自身のペースで仕事をすることが可能になります。それによる長時間労働が発生してしまうリスクが存在します。

そこで、定時に必ず作業の進捗状況を上司に報告させ、その上で残業を許可するなどの運用を徹底する、テレワーク用の労働時間管理ソフトを活用するなどの対応を取る必要があるでしょう。

社外研修の活用でノウハウを素早く吸収する

リモートワーク・テレワークに関しては、リスクを回避しながら効果的な運用を行うためのノウハウが必要となります。特に管理職層に対して、リモートワーク・テレワーク下でのマネジメント手法を提供することは急務といえます。
そのために、社外研修を活用するのも効果的です。

社外研修に関しては、コンサルティング会社や人材紹介会社などが、企業経営者や管理職者向けのカリキュラムを提供しています。以下の例を参考にしてください。

▼参考サイト

リクルートマネジメントスクール(リモートマネジメント講座)

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