スティーブン・R・コヴィー著のベストセラー『7つの習慣』(FCEパブリッシング)。「読んだことはあるが、ビジネスの現場でどう行動するかイメージしづらかった」など、仕事への活用の仕方がわからない人も多いかと思います。ここでは7つの習慣で紹介されている「考え方」と、実際の仕事への活かし方をわかりやすく解説します。
※本記事で記載している内容は筆者の見解です

7つの習慣とは

『7つの習慣』とは、スティーブン・R・コヴィー博士が過去の偉人や賢人の共通点を研究し、成功するための「習慣」としてまとめた書籍です。これまで全世界で4000万部、日本でも240万部が発行されています。

7つの習慣の特徴

多くのリーダーシップ論は、ビジネスの特定の場面に絞って新たに発揮すべき能力・方法・考え方を説明しているものが多いようです。一方で『7つの習慣』では、物事の捉え方を変え、生き方を変えることまで言及しています。つまり、7つの原則を生活や人生のなかで「習慣化する」ところまで踏み込んでいるのが、『7つの習慣』の特徴のひとつです。
『7つの習慣』は、単なるビジネススキルではなく自己啓発のトレーニング(習慣化させること)の要素が強く、さらにステップアップ、ステージの変化を図っていくことができるのが特徴といえるでしょう。

『7つの習慣』が優れていると点は、1から順番に習慣化することで、確実にステップアップを図ることができ、ステージを変えることができる、ということです。
具体的には、最初の3つの習慣化により「私的成功の習慣」が、次の3つの習慣化により「公的成功の習慣」が、さらに最後の1つの習慣により「最新再生の習慣」がつくという構造となっており、依存のステージから自立のステージ、最後には相互依存のステージに登り詰めることができるようになる、と筆者は認識しています。

仕事に生かす7つの習慣

では『7つの習慣』の各習慣について筆者の見解を説明するとともに、仕事での活かし方についても紹介しましょう。
一部引用:スティーブン・R・コヴィー「完訳 7つの習慣 人格主義の回復: Powerful Lessons in Personal Change」(FCEパブリッシング)

第1の習慣

第1の習慣は「主体的である」です。
具体的には、仮に与えられた命令であっても、複数の選択肢のなかから自分で命令を受け入れるという選択をしていると認識し、すべてが選択の結果と考え、これから生じるすべてのものを積極的に自分で選択をしていくように変えていく、というものです。自分で選択をした、という認識を持てるようになるだけで主体的になり、自己責任を持てるようになります。

たとえば、上司から「売上を上げろ」という指示があったとします。今までは、上司にいわれたままやみくもに新規の開拓を図ろうとしたり、過去のお客様に連絡を入れたりしていたかも知れません。一方、第1の習慣を意識すると、まず「『上司の命令に従わない』という選択もできたが、自分で『命令に従う』という選択をした」と意識できるようになります。さらに売り上げを上げるための施策についても、「現在の顧客の深耕を図るのではなく、新規の開拓を図るという選択を自分でしている」あるいは「過去のお客様に連絡を入れるという選択をしている」と、すべてが主体的に行動している、と意識できるようになります。そしてその意識が持てるようになることで、自分の思考・言動に、自己責任を持てるようになります。

第2の習慣

第2の習慣は「終わりを思い描くことから始める」です。
具体的には、「ありたい姿・なりたい姿」をイメージし、それを実現するための行動をする、あるいは目的志向になる、ということです。

たとえば、「ビジネスでもプライベートでも幸せになる」という価値観を見出したとします。あるとき、休日に家族と旅行に行く約束をしていたものの、仕事の予定が入りそうになりました。今までは有無もいわずに仕事を優先させ、家族に我慢してもらっていたかも知れません。しかし第2の習慣を意識するなら、ダメ元でもよいので「すでにプライベートの予定が入っているので日程の変更はできませんか」と提案をする行動をとってみる、ということです。最初は周囲に非難されるかも知れませんが、だんだん周りから「ビジネスもプライベートも幸せにしようとしている人」と認識してもらえるようになり、何かの日程を決めるときには、事前に相談をしてもらえるようになるかもしれません。

第3の習慣

第3の習慣は「最優先事項を優先する」です。
具体的には、緊急・目先の重要度の高いものに振り回されず、自分自身の方向性にとっての最優先事項を優先する、ということです。

仕事においては、たとえば「皆から頼りにされるようなリーダーになり、強いチームを創る」とイメージしたとします。すると突発的な業務が発生したとき、今までなら自分で対応していたところを、なりたいイメージと照らし合わせることで、たとえ時間がかかっても対応は部下に任せて自分は指導にまわるべきだ、と考えることができます。最終的には部下から頼りにされ、指導を通じてチームの力を強くしていくことができるようになります。

第4の習慣

第4の習慣は「Win-Winを考える」です。
これは一般的にイメージされる「Win-Win」の意味とは異なるかもしれません。一般的なWin-Winは「自分も相手も双方が得をする」という考え方です。一方、第4の習慣でいわれているWin-Winは、自分から相手が喜ぶことを積極的にすることで、結果的に相手から自分が喜ぶことをしてもらえるようになり、今までと異なる関係性を構築できるようになる、ということです。

たとえば、細い道に入ろうとしたときに反対側から相手が来たとします。一般的なWin-Winの形であれば、お互い止まることはせず前に進みながらできるだけ左に寄って、双方が通れるようにするかもしれません。一方、第4の習慣の考えに基づくと、細い道に入る手前の段階であなたが止まり、相手が通り過ぎるまで待ちます。すると相手は気持ち良く通れ、すれ違う際に相手からも感謝される合図をもらうことで、あなたの心も満たされ、良い関係性を構築することができます。

これを仕事の例に置き換えてみましょう。あなたが翻訳の仕事を外部スタッフにお願いするとします。原文を渡し、提出された翻訳文をチェックして誤訳の修正を依頼するといった事務的なやりとりに終始したら、最終的に翻訳文は完成したもののお互いに「相手はこちらの意図を汲んでいない」と不満を持ったまま終わるかもしれません。
一方、第4の習慣に基づいた行動では、依頼する際に翻訳文の目的やそれを読む人の背景、期待される要素、誤訳で過去に困ったことがあったことなどをあなたから訳者に伝えます。そうすることで訳者はあなたの期待に応えようとするため、単に原文だけを渡したときよりも良い訳文ができるばかりか、最終的には仕事をしてよかった、と相手との関係性も構築できるようになる可能性があります。

第5の習慣

第5の習慣は「まず理解に徹し、そして理解される」です。
具体的には、自分が何か伝えたいとき、まずは相手の話を先に聞きます。その後、相手が話を聞きたい気持ちになってから、話をするようにします。

たとえば、部下が失言をしてお客様を怒らせてしまいクレームが来たとします。部下に指導が必要ですが、このときいきなり部下を叱りつけるのではなく、「お客様からクレームが来たのだけど、あなたはどう思いますか?」と先に部下の気持ちを引き出す質問をします。部下は、はじめは言い訳などをして正当性を主張するかもしれません。しかし、あなたが話を遮ることなく聞き役に徹することで、部下は次第に自分のことを理解してくれたと感じるでしょう。すると一通り話をした後で、自分も失言をしたかもしれないと気づき、お客様やあなたの話を受け入れようとする姿勢を取りやすくなります。その結果、お客様からクレームが来た件についてのあなたの話に耳を傾けてもらえるようになり、実りあるコミュニケーションがとれるようになる可能性が高まります。

第6の習慣

第6の習慣は「シナジーを創り出す」です。

たとえば、ある営業部門において、顧客の新規開拓が得意だがフォローアップが苦手なAさんと、新規開拓が苦手だがフォローアップが得意なBさんがいたとします。多くの場合、理想の営業社員になるようAさんにもBさんにも同じように、顧客の新規開拓を行い、フォローアップをきちんとするよう、画一的な指導がなされます。しかし、第6の習慣の考え方に立てば、AさんにはBさんの分も含めた積極的な開拓を任せ、BさんにはAさんの顧客のフォローを任せ、それぞれの個性(多様性)を活かしお互いが協力的に活動してもらうよう役割を与えます。
本来の得意分野で力を発揮するよう促すことで、これまで攻略することができなかったようなお客様を攻略したり、今まで提供できなかったサービスを提供できたりするなど、革新的な解決策が導き出せるようになるかもしれません。

第7の習慣

第7の習慣は「刃を研ぐ」です。
1から6を習慣化することで、自己肯定感が高まり心豊かになってきます。その結果、安定志向が芽生え現状維持を好むようになり、活力が低下するかもしれません。それを防ぎ持続的な成長意欲が持てるよう、内発的動機の種を探すことが7つめの習慣です。
なお、自己肯定感が低い状態で過剰な危機感に迫られて成長意欲だけを高めようとしてしまうケースがありますが、この習慣は一足飛びに身に付けられるものではありません。この習慣が最後(第7の習慣)に位置付けられているのにはそういった理由があります。

第7の習慣を仕事にあてはめると、自分の強みを伸ばす、ということになります。そのためには、まずあなたが周囲からどのように見られているのかという自己認識が必要です。自分で認識できない場合は周囲に聞いてみるのもよいでしょう。たとえば、「あなたは調整力に優れているから、私だと頼めないような人に対してアプローチしてくれるから助かる」などと言われたら、自分の強みは調整力だと認識しそれを伸ばす、ということです。
具体的には、会議で他部門に依頼をしないといけないがなかなか難しい、というような状況のときに「私がやってみましょうか」と手を挙げてみたり、あるいは普段からさまざまな人と飲食をする機会があったとしたら、より深い話や本音が聞けるような関係を築き、いざというときのための人脈を作ってみたり、というようなことです。

私的成功の習慣

1~3の習慣を身に付けることで「私的成功」の習慣がつくというのが『7つの習慣』の考え方です。

私的成功の習慣とは、自己満足の範囲であるものの、「成功をし続けている」という実感が持てるようになることだと考えられます。具体的には、「日々、小さなことでも、物事が前に進んでいる実感が持てるようになる」ということです。今まで何をやっても空回りに感じたり、疎外感を持っていたりしても、この習慣が身に着くことで何か前に進められている、周囲から受け入れられている、認められている、という実感が持てるようになります。
この実感が持てるようになると、人に気に入られるように生きてきた/人目を気にして生きてきた状態から、「人は人、自分は自分」と、他人と自分を区別して考えることができるようになります。そして意思決定において、人目を気にする「依存」から自分の意思を持つ「自立」へと、ステージを変えることができます。さらに、少しずつ「成功グセ」がついているように生きることができるようになります。

公的成功の習慣

私的成功の習慣がついた後、4~6の習慣を身に付けることで「公的成功」の習慣がつきます。公的成功の習慣とは「人から助けられながら、あるいは人に支えられながら、成功をし続けている」という習慣が身につくことと考えられます。

私的成功の習慣がついた状態は、自分が気づかないうちに相手に「信頼」を与えています。人は「信頼」をもらうと信頼を返そうとするため、結果的にあなたを助けたり支えたりして、あなたに貢献をしようとしてくれます。これが公的成功の習慣です。
公的成功の習慣がつくことで、精神的には「自立」から「相互依存」の状態になります。依存というと自立した状態から逆戻りと勘違いされがちですが、ここでの相互依存は、相手を尊重したうえで相互に協力し合うという意味での依存であり、一般的にいわれている依存とはまったく異なるものです。言い換えれば、相手から信頼されるようになり、相手から頼られるようになる、という状態になることです。

再新再生の習慣

相互依存の状態で、7つ目の習慣を身に付けることで、あなたの人間としての器が大きくなっていきます。ここまで成功すると、徐々に自分の得意分野や、相手が自分に期待していることなどが自分でわかってきます。そこで自分の得意分野を極め、自分が期待される範囲や自分が取り扱える幅を広げていくことで、常に人生をブラッシュアップさせることができるようになります。

周囲からは常に活き活きしている、何か新しいと感じてもらえるようになり、声を掛けたい、関係を持ちたい、何か一緒に物事を成しとげたい、というような期待を持たれている状態になります。

リクルートが提供する7つの習慣のプログラム

『7つの習慣』は、書籍を読めば内容は理解できます。しかし理解することはできても実践すること、また習慣化することは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。さらに『7つの習慣』は1から順番に実践することで着実なステップアップを図れますが、普段の生活の中で1から順番に実践することは困難と思うかもしれません。普段の生活の中で実践的な機会があることを気づかせてくれる、専門のプログラムを受講することで、短期間に7つの習慣を身に付けるきっかけがつかめるでしょう。

リクルートマネージメントソリューションズ-「7つの習慣」

この研修を受講することで、生き方を変えるきっかけとなる、パラダイムシフトを実感することができるかもしれません。

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