「従業員」とは、一般的に企業と雇用契約を結び、雇用契約に基づいて雇用されている労働者を指す言葉です。正社員、契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイトなど、雇用契約の期間や勤務時間が異なる労働者が含まれますので、社会保険の手続きなどを慎重に対応することが必要です。従業員を募集する際の注意点や事前準備、募集する際のポイントを解説します。

従業員とは

「従業員」に法律的な定義はなく、一般的には”企業と雇用契約を結び、雇用契約に基づいて雇用されている者”を指す言葉として使われています。

従業員と社員の違い

「社員」とは会社法上は、合名会社、合資会社、合同会社の構成員を社員と定義されています。しかし一般的には「社員」も「従業員」と同様に、企業と雇用契約を結び雇用契約に基づいて働く労働者を指す言葉として使われています。一般的には社員とは企業の正規雇用社員を意味することが多いようです。就業規則に「社員」「従業員」の言葉を記載する場合は、例えば、社員=無期雇用、従業員=無期雇用+有期雇用など、その範囲を定めて明示しておきましょう。

従業員の種類

「従業員」と一口に言ってもさまざまな立場の人たちが含まれており、以下に分類されることが一般的なようです。

正社員

一般的には雇用契約において期間の定めがなく(無期雇用)、会社が定めた正規の所定労働時間を全時間(フルタイム)勤務する者のことです。

契約社員

契約社員とは、会社と雇用期間の定めのある労働契約(有期雇用)を締結した者のことです。契約社員との労働契約は、雇用期間の満了により自動的に終了となるのが基本です。

嘱託社員

嘱託社員は法律による明確な定義はありませんが、退職後の再雇用で、雇用期間が決められている有期雇用の労働者のことを指す場合が一般的です。

パートタイマー

法律は、パートタイム労働者(短時間労働者)を「1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者」と定義しています(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律・第2条1項)。
「パートタイマー」「アルバイト」以外にも、「嘱託社員」「契約社員」「臨時社員」「準社員」なども、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」(短時間労働者)として「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)の適用対象となります。

従業員を採用する際に必要なこと

労働条件の明示

採用はまず労働条件を明示して募集します。募集時には雇用期間や給与、勤務時間などの労働条件の明示が必要です(職業安定法5条の3 第1項)。また労働契約の締結にあたっては「雇用契約書」を作成しお互いに保管しましょう。その際も労働条件の明示が必要となってきます(労働基準法第15条)。文書で確認し残しておくことが、後々のトラブルを防ぐことに役立ちます。

所得税の手続き

従業員には所得に応じた納税義務があります。税の納付分を企業が従業員の給与から予め差し引き、従業員の代わりに納付するのが「源泉徴収」です。なお、扶養控除等の計算が必要か確認するため、年末調整の対象となる従業員には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう必要がありますが、入社時に提出してもらうことが一般的です。

住民税の手続

住民税も所得税と同様に給与から差し引く形で納付します。これを「特別徴収」と呼びます住民税は前年の所得に対して課税されるため、前年に所得がない従業員の場合、当該従業員につき住民税の納入手続きの必要はありません。逆に前年に所得がある場合は、その従業員が前職からの特別徴収の継続を希望する場合と、従業員自らの納税から特別徴収に切り替えることを希望している場合で対応が異なります。

社会保険への加入手続き

従業員に社会保険への加入義務が発生するか否かは、原則、勤務時間や勤務日数などの条件をもとに決定されます。契約社員やアルバイト・パートなど有期雇用の場合も加入義務の対象となる場合があるため、採用する際には社会保険加入義務者に該当するかを予め確認し、入社後の手続きを迅速に進めましょう。

従業員に関する保険の種類

労働保険・社会保険はそれぞれ加入の条件が異なっていますので、確認のうえ手続きを進めていきましょう。特に健康保険・厚生年金保険については2022年10月に法改正(社会保険の適用拡大)が行われますので、今から対応の準備を進めていきましょう。

健康保険・介護保険

健康保険とは、労働者やその家族が業務外の事由により病気やけがをした場合や亡くなった場合、あるいは出産をした場合など、必要な医療給付や手当金の支給をする保険制度です常時5名以上の従業員を雇用するほとんどの個人事業所や国、地方公共団体または法人の事業所に加入義務が適用されます。また介護保険は第1号被保険者と第2号被保険者の2つの種類があり、第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40歳~64歳の医療保険加入者が対象になります。

厚生年金保険

「厚生年金保険」とは、労働者が高齢のため働けなくなったり、病気やけがによって身体に障害が残ってしまったりと、生活を支えていた方を亡くし遺族が困窮してしまうなどの場合に、保険給付を行う保険制度です常時5名以上の従業員を雇用するほとんどの個人事業所や国、地方公共団体または法人の事業所に加入義務が適用されます。
健康保険・厚生年金保険とも、パートタイム労働者も勤務時間および日数が正社員の4分の3以上である場合や、「週の所定労働時間が20時間以上であること」、「賃金月額が8.8万円以上であること」、「雇用期間が1年以上見込まれること」、「学生でないこと」という4つの条件を満たしていれば保険の加入対象となります。
※社会保険の加入条件については、以下の記事をご参照ください。

【社労士監修】社会保険の加入条件とは?加入義務や罰則をわかりやすく解説

労災保険

「労災保険」とは、労働者の業務に起因した病気、けがなどの災害および通勤災害に対し、保険給付を行う制度です。雇用形態にかかわらず、常時使用する労働者が1名でもいる事業場は基本的に加入対象となります。
出典:厚生労働省 日本年金機構 「社会保険への加入手続きはお済みですか」

雇用保険

「雇用保険」とは、失業や退職、解雇時に失業手当として給付が行われる制度です。パートやアルバイトなど雇用形態や、事業主や労働者からの加入希望の有無にかかわらず、以下の1および2の要件にいずれも該当すれば加入する必要があります。
1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
2. 31日以上の雇用見込みがあること

出典:厚生労働省 「Q&A~事業主の皆様へ~」

従業員の募集方法

従業員の募集方法は、求人媒体、人材紹介、社員紹介やソーシャルリクルーティングなど多様です。多くの選択肢の中から自社の従業員募集に適した方法を選びましょう。ここでは代表的な募集方法をご紹介します。

ハローワーク(公共職業安定所)

全国544カ所(令和3年4月1日時点)のネットワークがあり、身近な相談窓口として親しまれています。無料で情報を掲載でき、通勤圏内の求職者の目にとまりやすいメリットがあります。

求人媒体(WEBメディア)

求人媒体(リクナビNEXTなど)に求人情報を掲載し、応募者を集める手法です。場所・時間を問わず、多くの転職希望者にアプローチできます。

求人媒体(紙メディア)

新聞、折り込みチラシ、フリーペーパーなどへ求人情報を掲載する手法です。細かくエリアを分けて地域限定版を発行している場合が多く、狙った層へ情報を届けることができます。

検索エンジン

WEB上の採用の求人情報を検索できる求人情報専門の検索エンジン(Indeedなど)を利用する手法です。無料で掲載が可能で、多くの求職者の目にとまる可能性が高まります。

SNS(ソーシャルリクルーティング)

Facebook、Twitter、Instagramなどを採用に活用する手法です。求職者とタイムリーに、気軽な双方向のコミュニケーションがとれるほか、拡散や口コミなどの効果も期待できます。

人材紹介

人材紹介会社(リクルートエージェントなど)に、自社が求める人材の職種・スキルなどを伝え、要件にマッチする人材を紹介してもらう方法です。日程調整など候補者との連絡もすべて人材紹介会社が対応しますので、人事のマンパワーが足りない企業などに有効な手法です。

社員紹介(リファラル採用)

社員の知人・友人を紹介してもらう採用手法です。自社の仕事や企業文化、候補者の人柄を理解している社員が紹介するためマッチングの精度が高くなる可能性があります。

従業員を募集する際のポイント

人材要件と役割の明確化

正社員、契約社員、嘱託社員、パートタイマーと、雇用期間や勤務時間の異なる従業員にどのような役割を期待するのか。またどのようなスキル・業務上の志向を持つ人を採用するのか。「人材要件」と「役割」を明確にしましょう。人材要件を決める際には会社のビジョン・ミッション、現場からヒアリングした必要な経験・スキル、職場にマッチする人物タイプを合わせ、MUST、WANTなど優先順位をつけていきます。人による解釈の違いがないよう誰でも理解できる具体的な文言に落とし込むことが必要です。

自社の強みの明確化

採用を成功させるためには求人媒体(メディア)の広告制作、人材紹介での求人情報、そして面接などの選考過程で、候補者に自社の強み・魅力をわかりやすく伝えることが大切です。そのためには企業力、組織・風土、仕事の魅力などに分けてそれぞれの魅力を言語化し、採用に携わるすべての人で共有しましょう。

採用ターゲットに適した採用手法の選定

求めるスキルや採用人数などの採用難易度、採用コストや人事のマンパワーの有無、労働市場の変化などを含めて総合的に判断し、多様な募集方法の中から自社が採用したいターゲットに適した手法を選択することが大切です。

従業員と一口に言っても雇用契約期間、勤務時間はもちろん、価値観やライフスタイルなど多様です。企業の事業を成長させるうえで、自分に合った働き方を実現したいと願っている従業員の能力を最大化させることは必要不可欠です。

※人材募集の詳しい手法については、以下の記事をご参照ください。

人材募集の13の手法と企業が人材採用を成功させるコツとは

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