国内の限られた市場に依存するのではなく、広く海外市場での事業拡大を目指す企業が増えています。企業のグローバル化を牽引する一助となる「グローバル人材」。各企業でグローバル人材に対するニーズが高まる一方で、グローバル人材不足と感じる企業が約7割にのぼり、人材不足が大きな課題となっています。グローバル人材の採用を成功させるコツや採用に際しての注意点などを整理しました。

グローバル人材とは

近年、国内の限られたマーケットだけに依存するのではなく、世界各国へ拠点を展開し、海外市場のシェア拡大を狙う企業がますます増えています。それにともない、ニーズが高まっているのが、企業のグローバル化を推進する「グローバル人材」。では、どういった人材のことを「グローバル人材」と呼ぶのでしょうか。

企業のグローバル化とは

「グローバル化」と同じような言葉で、「国際化」という言葉がありますが、「国際化」とは日本対アメリカ、日本対中国のように、自国対他の国との交流の意味です。対して「グローバル化」は、国境を超えて世界を一つの場所と捉える考え方といえると思います。内閣府では、「グローバル化」とは「資本や労働力の国境を越えた移動が活発化するとともに、貿易を通じた商品・サービスの取引や、海外への投資が増大することによって世界における経済的な結びつきが深まることを意味する」と定義しています。

出典:内閣府 平成16年度版 年次経済財政報告書「日本経済とグローバル化」

つまり「企業のグローバル化」は、世界中で通用するサービス・商品を持ち、世界中で事業を展開することだと言えます。

グローバル人材の定義

企業がグローバル化を推進するためには、海外拠点設立に関する業務、海外市場のリサーチ、海外企業との業務提携、そしてM&Aなどを推進する人材、いわゆるグローバル人材が必要になってくるはずです。「グローバル人材」の定義も、企業によって異なっているのが現状です。経済産業省及び文部科学省が共同で推進している産学人材育成パートナーシップのグローバル人材育成委員会が2010 年4月に発表した報告書「産学官でグローバル人材の育成を」では、「グローバル人材」を以下のように定義しています。

「グローバル化が進展している世界の中で、主体的に物事を考え、多様なバックグラウンドをもつ同僚、取引先、顧客等に自分の考えを分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する価値観や特性の差異を乗り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、更にはそうした差異からそれぞれの強みを引き出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい価値を生み出すことができる人材」

出典:文部科学省「グローバル人材の育成について」

グローバル人材の採用の注意点

グローバル人材を確保する方法としては、①日本での採用、②現地で採用(グローバル採用)の2つのケースが考えられます。まず日本で採用する場合は、どのような点に注意すべきか考えてみましょう。

英語力(TOEIC)や留学経験など、語学力だけを重視しない

語学力はもちろん大切ですが、語学力だけでは業務を遂行することは困難です。重要なのは、任せたい業務に必要なスキル、経験を持っているかどうかだと思います。業務を遂行するために必要な経験・スキルに基づいて、英語力はどれくらいのレベルならいいのか、TOEICにすると何点程度かという考え方で採用基準を設定した方が、語学力、職務遂行能力のバランスが良い人材を採用できることが多いです。

「海外で働きたい」が目的になっていないか確認する

「学んだ語学を活かしたい」、「海外で働きたい」ことを目的にされておられる方もいらっしゃいます。なぜ海外で働きたいのか、海外での経験を自分のキャリアでどう活かしていきたいのかを、選考を通じて深くヒアリングし、ミスマッチを防いでいきましょう。

採用予定者の生活環境を確認

出典:総務省「グローバル人材育成の推進に関する政策評価 結果に基づく勧告」 2017年7月14日

企業が海外事業を実施する際の課題の上位に、従業員の「海外赴任の拒否」があがっています。「一年後なら赴任できるが、いまは家庭の都合で無理」「入社してすぐに、海外赴任の予定があるとは思っていなかった」などのケースがあるようです。海外赴任が前提の募集の際や、近い将来に海外へ赴任する予定がある場合は、募集の段階からその事実を伝え、本人の周囲の状況を確認していくことも必要です。

グローバル人材を採用するときに重視したい能力

幅広い能力が要求される「グローバル人材」ですが、採用するときに重視したい能力としては、以下のような能力が考えられます。

語学力・コミュニケーション能力

ビジネスレベルで英語または進出する地域の言語が使えることはもちろん、異なる価値観、文化を理解できる感受性と、意見の違いを乗り越え関係性を構築できるコミュニケーション能力が求められます。

主体性・積極性

海外での問題解決にあたっては、国内で例のないケースも多く、自ら考え行動していくことが求められます。企業として社員の主体性・積極性を歓迎し、失敗してもサポートしていける体制を整えることも重要となってきます。

チャレンジ精神

海外進出そのものが、企業にとって新しいチャレンジであることも多いものです。国内での手法にこだわるのではなく、現地の文化に適した手法を試したり、新しいマーケットの開拓などに取り組む姿勢が求められます。

リーダーシップ

さまざまなバックグラウンドを持つビジネスパートナーと出会い、仕事をする機会があります。柔軟性に富んだ人材であれば、異なる価値観や異文化を理解したうえで、多様な人材と協働し、リーダーシップを発揮しながら業務を円滑に進行することができるでしょう。

責任感

海外では、国の法律や商習慣の違いから、さまざまなリスクや困難に対面することとなります。あらゆる課題や困難を乗り越えて、仕事をやり遂げる責任感が求められます。

異文化に対する理解

異なる文化・価値観を理解し、自社の企業理念やサービス・製品を、異文化と融合させ、さらに磨きをかけることができる能力は、グローバル人材として大切な能力だといえるでしょう。

グローバル人材の採用を成功させるポイント

採用を成功させるためには、どのようなポイントに注意すれば、いいのでしょうか。

自社が求めるグローバル人材、人材要件を定義する

グローバル化の進め方は各企業によって違いますので、自社が求めるグローバル人材像もそれぞれ異なって当然です。まず自社が求めるグローバル人材を定義し、人材要件を策定し、社内で共有していくことが必要となってきます。

即戦力だけではなく、社内育成も視野に入れる

海外事業に必要な人材については、有効回答数980社のうち約7割の企業(690社)が不足またはどちらかといえば不足していると回答しています。

下記図2点とも出典: 総務省「グローバル人材育成の推進に関する政策評価 結果に基づく勧告」 2017年7月14日

また必要な人材をどのように採用しているかについては、中途採用に次いで、新卒採用というデータがあります。

即戦力となる海外勤務経験有りの中途採用者を迎えるだけではなく、例えば、語学力があり、適性のありそうな新卒者の社内育成にも取り組んでいく必要があるでしょう。また、グローバル人材に特化した人材紹介会社を利用するのも、有効な採用手法の一つです。

グローバル人材を現地で採用するときの注意点

その国の文化、商習慣を熟知した人材が多くいる現地での採用は、企業のグローバル化を加速させる大きな力となり得ます。現地で採用する際の注意点は何でしょうか。

異なる文化・価値観を理解し、尊重する

どの国にも独自の価値観、法規制、商習慣、キャリア観があります。その国特有の文化・宗教を理解し尊重し、その人・その国に応じた柔軟な対応を心がけましょう。

明確なキャリアパスを提示する

転職回数の多さがハンディにならない国も多いので、自社に入社した場合、どのようなキャリアパスがあるかを丁寧に伝えることも、大切になってきます。またグロ―バル人材の採用においては、競合となる企業も国内での採用とは違ってくるケースが考えられますので、常に現地での情報収集を行い、求職者から見て、より魅力的な待遇なのかどうかを見極め、環境を整備することも海外の採用競合と戦う上では欠かせないこととなるでしょう。

企業がグローバル化を推進するときに重要なグローバル人材。社内の人材を育成するか、外部から採用するかは、今後の事業戦略、自社が置かれている状況、採用マーケットなどさまざま要因を踏まえて判断する必要がありますが、いずれにせよ海外での事業展開が決定した際はその国に適したグローバル人材確保が必要となるケースが多いため、前もってグローバル人材確保の準備をしておくことが重要です。

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