SNSを活用した人材採用や、新卒採用で一般化したインターンシップ、コロナ禍で普及したオンライン面接など、採用活動は複雑化・高度化しています。そのため、採用担当者には高い情報感度が求められる側面もあります。だからこそ検討したいのが「採用コンサルタント」の力を借りること。今回は、採用戦略の立案や採用プロセス設計、採用サポートなど採用コンサルティングの概要についてご紹介しながら、活用のヒントをお届けします。

採用コンサルタント・コンサルティングとは

さまざまなノウハウを持つ採用活動の専門家

「採用コンサルタント」とは、一般的に人材採用に関するコンサルティングサービスを担う人を指す職業名です。企業の人事や採用担当に対してノウハウの提供や最適な戦略・プロセスの提案、一部の業務サポートなどを行っています。一口にコンサルティングといってもサービスメニューは多岐にわたり、コンサルティング会社によってオーダーできる範囲は、さまざまです。採用コンサルタントを名乗る人でも人によって知識・スキルにかなり幅があるので、自社のニーズにあったコンサルタントと出会うことが大切です。

社外に頼れるパートナーがいる感覚

例えば「採用を本格的に始めたばかりで、社内にノウハウがない」など、人事に十分な知見がないときにはコンサルタントの力を借りるのが有効です。他にも事業フェーズや採用市場が大きく変わった場合など、これまでの採用が通用しない局面などには専門家から助言をもらった方が素早く最適な戦略を遂行できます。また、自社で採用に割ける人的リソースが足りない場合などに、業務サポートも含めた支援を受けられることも、採用コンサルタントの価値です。

採用コンサルティングのサービスとは

サービス内容は採用活動の大前提である採用戦略の立案から一部業務のサポートまで多岐に渡ります。ここでは代表的な役割をご紹介します。

採用戦略立案

最新のマーケット環境、想定される採用競合情報、採用ターゲットの動向など、幅広い情報を提供しながら、人事と一緒に採用の目的を実現するための戦略を練り上げていきます。客観的な視点で採用活動を支援するため、自社では気づきにくい採用課題を発見し、本当に自社にあった人材の提案を行うなど、採用の根幹を担う部分にも深く介在していきます。

採用プロセス設計

戦略に基づいて適切な採用プロセスを組み上げていきます。採用予定人数や予算を踏まえてベストな母集団形成手段を選定します。内定までの効果的な選考プロセスを定める上でもコンサルタントの知見は有効です。また、採用プロセスにおいてキーパーソンとなる面接官やリクルーターなどにレクチャーするためのマニュアル作成や、研修・トレーニングを担ってくれる場合もあります。

母集団形成

コンサルティング会社によっては、求職者を集めるための採用広報を担ってくれる企業もあります。広告代理店や求人媒体(求人メディア)から派生しているサービスはここが強みであり、採用ブランディングの提案や各種広報物のメッセージに一貫性を持たせるようなコミュニケーションのマネジメントも担います。

イベント企画・運営

会社説明会やインターンシップ、社員座談会・懇親会の実施などのイベントの企画・運営を行います。採用イベントは新卒採用に多いイメージがあるかもしれませんが、近年は採用環境の激化や相互理解を深める目的で中途採用でもイベントを設けるケースが増えています。あくまでも主催は自社という形ですが、コンテンツの企画や当日の運営などを依頼できる場合もあります。

採用事務サポート(一部業務のアウトソース)

応募書類の受付や面接日程の調整、合否連絡などの実務をアウトソースできるコンサルティング会社もあります。大量採用や複数の職種・ポジションを募集している場合、各種連絡や手続きだけで採用担当者の手がまわらなくなってしまうこともあるため、自社のリソースが少ない場合は社外の力を借りるのも手段の一つです。煩雑な業務をいかにミスなく効率的に進めるか、プロセスを設計するところから相談できます。

活動報告・フィードバック

コンサルタントにとってはクライアントに成果を報告するために必要不可欠な業務です。人事や採用担当者にとっても、自社の採用活動における現状の分析、振り返りはとても重要です。ただ、自社だけで活動していると「実務に追われて振り返りがおざなりになってしまう」ことも起こりがちです。採用活動のPDCAを回し続けて、採用目標を実現していくためにも、自社の採用を客観的な視点で定期的に評価する役割をコンサルタントに担ってもらえるのは非常に有効です。

採用コンサルティングのメリット・デメリット

採用コンサルティングのメリット

  • 専門家の知見を取り入れられる
  • 客観的な視点で自社の採用を評価できる
  • アウトソースによって社内の業務負荷を軽減できる

コンサルタントが保有しているレベルの知見を企業の人事が自力で得ようとすると、書籍を読んだり、人事カンファレンスに参加したり、横のつながりで情報収集をしたりと労力がかかります。その意味で、オンライン面接やインターンシップの活用など最新の事例にも精通したコンサルタントが自社の採用戦略に携わるメリットは大きいでしょう。

また、第三者として一歩引いた客観的な立場で見られるからこそ、自社にいては気づきにくい課題を発見することや、自社の魅力を掘り起こしてくれる効果もあります。

加えて、採用担当者の人手が不足している場合は、ルーティン業務をアウトソースすることによって、企業の採用担当者が採用戦略立案や業務・プロセス設計に集中しやすくなります。

採用コンサルティングのデメリット

  • コンサルティングフィーが、全体の採用コストに追加される
  • 関わる人が増えるため、コミュニケーションのコスト・リスクが上がる
  • 会社によって得意分野が異なり、選定が難しい

採用コンサルティングは、上記のように戦略から企業に深く入り込むサービスのため、依頼範囲によってはコストが割高になりやすいことがあるので留意しましょう。

また、関わる人が増える分、連携が取れないと採用の成果にも影響していきます。たとえば採用方針の変更がコンサルタントに伝わっておらず、ちぐはぐな採用プロセスで進行すれば思うような結果は得られません。採用担当者とコンサルタントの連携はもちろん、コンサルタントのプロジェクトマネジメントスキルが成否を左右する側面もあります。

そして、特に難しいのはコンサルティング会社によってサービス提供範囲や得意分野が異なるため、自社の目的にあった会社を見つけることです。自社との相性次第でコンサルティングの効果に大きな開きが生じてしまう可能性があります。

採用コンサルティングの上手な選び方・見極め方

コストだけで判断するのは危険

上記の通り、コンサルティング会社によってサービスの幅や強みが異なります。そのため料金体系もさまざまで、月額報酬制、サービスパッケージごとの課金、一定の成果に対する成功報酬制など多岐にわたるのが実態です。単純に金額の大小だけで判断するのは難しいでしょう。

自社の採用課題・リソースを整理する

採用コンサルタントを最大限有効活用するには、まず自社の採用状況や採用体制を整理して、できるだけ正確に把握することからはじめましょう。そもそも採用に精通した人がいないのであれば、やはり戦略から入ってもらえるパートナーがいると良いですし、ある程度採用課題が明確なのであれば、その課題に強いコンサルティング会社に頼むのが望ましいです。やみくもに複数社に声をかけて見積もりを取ると、どうしてもコスト優先で判断しがちです。自社の目的と選定基準を明確にしておきましょう。

コンサルティング会社の成り立ちからある程度の強みが想像できる

一般的に経営コンサルティングから派生した会社・サービスであれば、戦略の策定が洗練されていることが多く、PR会社や広告代理店から派生したコンサルティング会社は、採用ブランディングや採用広報が得意です。同様に、人材サービスから派生したコンサルティングは採用プロセスや実務の各論に強く、採用活動の伴走者としての役割に力点を置いている場合が多いようです。このように、各社の成り立ちやグループ会社の構成を確認すると、その会社がどの分野に強いかの判断材料になります。中小のコンサルティング会社の場合は、経営者や役員のキャリア・出身会社も参考になるでしょう。

採用コンサルティングを利用するときの注意点

あくまでも採用主体は自社

コンサルタントに採用活動を支援してもらうと、採用活動の各プロセスにプロの知見が入り、彼らが実際の業務を担当する場合もあるので、採用担当者の負荷が軽減できる効果は大きいです。その分、他の業務に時間を割くこともできるでしょう。ただし、注意したいのは、採用の主体者はあくまでも自社であり、採用の責任は人事や採用担当者にあるということ。コンサルタントは原則契約の範囲内でしか活動できないので、白黒がはっきりしないラインの判断や一歩踏み込んだ動きはしづらいものです。アウトソースする部分があっても専門家だからと任せきりにするのではなく、普段からコミュニケーションが取りやすい体制をつくりましょう。

状況によっては人事を採用した方が良い場合も

採用コンサルタントはあくまでも外部パートナーです。「部分的に知見を借りたい」「一時的に大量の採用ニーズが発生した」といった場合には外部のリソースを活用した方がコストメリットは高いといえますが、「通年で一定数以上の採用ニーズが発生する」「新卒・中途問わず常に何かしらの採用活動がある」といった状況で、内部のリソースが不足しているのであれば、人事・採用経験者を新たに採用した方が良いかもしれません。その意味でも自社の採用活動を一度整理して、コンサルタントに依頼・相談するか検討されることをおすすめします。

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