近年、IT化やテレワーク推進が進み、メールでの連絡や自宅での業務が可能になり、結果として人と人との繋がりが薄れて対話をする機会が失われつつあります。そのような環境で生じるコミュニケーションの問題を改善するためにも「ダイアローグ」の必要性が高まっています。
ここではダイアローグとはどのようなコミュニケーション手法なのか、また、組織やビジネスでの活かし方とポイントについて解説していきます。

ダイアローグとは

ダイアローグ(dialog/dialogue)とは、通常「(2人以上の間での)会話・対話・対談・話し合い・会話文」などと訳されますが、ビジネスの環境では特定のテーマに対して、互いに理解を深めながら、考え方や行動に変化を起こすコミュニケーション手法のひとつとされています。

どちらの意見が良いか悪いかなどの優劣をつけることではなく、相手の伝えたい内容を理解すること、そして自分の伝えたい内容を理解してもらうことが重要となります。対話をすることを契機として信頼関係構築ができることは大きなメリットとなるでしょう。さらに視点が拡大することにより新たなテーマを発見し、行動に繋がるなど、創造性が育まれるコミュニケーションがダイアローグです。

昨今テレワークを推進する企業が増加し、またフレックスタイム制の導入などで、同じ部署にいても社員同士が対面をする機会が減っている状況が見られます。コミュニケーション不足により社内の意思疎通が円滑に図れないといった課題が今後も増加することが予想されます。

このような状況の打開策として、ダイアローグが注目されているのです。
ダイアローグは課題解決や仕事のパフォーマンス向上に有効な手法として、ビジネスの場において人材育成にも取り入れられています。

ディスカッションとの違い

ダイアローグが特定のテーマに対して互いに理解を深めながら、考え方や行動に変化を起こし視点を広げる創造的なコミュニケーション手法であるのに対して、ディスカッションはどのような手法なのでしょうか。

ディスカッション(discussion)とは「議論や討論」と訳されており、あるテーマについて複数人(チームなど)で自由に各々の意見を出し合い、検討を重ねていき、納得できる結論や解答を導きだすことをいいます。
出し合った意見の交換を通して本質的な課題・問題を見つけ出し、それを解決するためにはどのような方法があるのかアイディアを出し合い、複数の選択肢の中からチームのベストな答えを選択する、つまりチームの意思決定の話し合いという意味合いになります。

ダイアローグのポイント

ビジネスの場において視点の拡大や信頼関係構築、そして新しい行動に繋がるなどのメリットが多いダイアローグですが、具体的にどのように進めれば良いのでしょうか。
ここでは5つのポイントを挙げて説明します。

①ファシリテーターを置く

ダイアローグに慣れていない人達が集まると、相手の話を最後まで聴かずに途中で反論してしまう場合もよくあります。円滑な進行のためファシリテーターを置くことが望ましいでしょう。
ファシリテーターとは、対話がスムーズに進むようにフォローをし、ときには対話の途中で仲裁をしたりする進行役のことです。

※ファシリテーターについては、以下の記事をご参照ください。
【人事必読】ファシリテーターとは?司会との違い、役割、必要なスキルを徹底解説

②アイスブレイクを導入する(緊張した空気を和ませる)

テーマを決めていたとしても、最初に誰がどこから話し始めれば良いのかメンバー同士で警戒することもよくあります。そのような雰囲気を話しやすく変えるために導入するのがアイスブレイクです。
例として、自己紹介をする、簡単なゲームをする、最近興味を持ったことを話す、他己紹介をするなど、リラックスして場の雰囲気が和むようにコミュニケーションを取りましょう。

③テーマを決めて話し合う(参加者が平等に意見を述べる)

アイスブレイクで場の雰囲気が和んだら本格的な話し合いに入ります。ファシリテーターがテーマを発表し、参加者全員が平等に、自由にかつ本音で自分の意見を発言していきます。発言の回数は参加者全員が平等になるように機会を設けましょう。

ここでは、お互いの考えを明確に述べて相互理解を深める段階として、自分の意見をはっきりと伝えましょう。

疑問や質問がある場合は、その都度発言者の内容に対して質問する時間を取ります。
意見の対立が起こったり、話し手が聞き手を説得したりする場合もありますが、そのときは進行役が調整をして、次のステップへと促しましょう。

④相手の立場で話を聴く(傾聴)

相手の述べた意見に対して興味関心を持って共感的に話を聴き、理解を深める段階です。相手の意見の否定や、自分の意見を押し通そうとするのではなく、相手の立場に立って共感的に理解をすることが必要です。
決して相手の役職や年齢によって見下したりしてはいけません。

相手の意見に対してなぜそう思うのか?を考え共有することで、自分の中にある今まで気づかなかった固定観念に気づくこともあるでしょう。また逆に、自分の述べた意見に対して他者からなぜそう思うのか?を問われることで、自分の中に新たな気づきが生まれ、新しい視点へと発展していくことがあります。

※傾聴力を高める方法については、以下の記事もご参照ください。
ビジネス力を高める「傾聴」とは?効果や種類など傾聴力を高めるトレーニング方法

⑤互いの考え・意見を認めて新しい発見を

他者の話に対して興味関心を持って聴き、質問を経てなぜそう思うのか?が理解できてくると、参加しているメンバーに視野の広がりや新しい視点への気づき、そして、参加メンバーへの共感が生まれてきます。

そうなると、メンバー間の共感や一体感が醸成されて参加者が満足感を得てチームの結束が強まることになるでしょう。

ダイアローグのビジネスへの活かし方

先にも述べましたが、テレワークの推進やフレックスタイムの導入などで社員同士の対面の機会が減ることにより、コミュニケーションのあり方が変わり、組織の結束の弱体化といった問題も生まれています。ダイアローグを活用して従業員同士の結束を強め、協力して業務を行う姿勢の大切さを再認識することが大切です。
ダイアローグを含めて組織の中でのコミュニケーションのあり方は今まで以上に重要なものとなってきます。

ダイアローグのポイントにて解説しましたが、組織の中に導入するにはいくつかの方法がありますので、その方法自体を組織のメンバーで一緒に考え導き出すということもダイアローグをビジネスの場で活かすひとつの方法でしょう。

たとえば以下のような例が考えられます。
・これまでオンラインで行っていたミーティングでもダイアローグを活用して、より
直接的に会話をすることで新たな気づきや、視点の発展を促す
・上司と部下との1on1(1対複数人でも可)ミーティングにダイアローグを活用して、
相互理解を深める
・結束力を高めるためにダイアローグを使い組織メンバーが納得できるような人事制度を検討してみる

※1on1については、以下の記事もご参照ください。
1on1とは?効果的なやり方、導入方法、具体的なテーマ例を紹介

今までになかった新たな取り組みについて、ダイアローグ形式で組織のメンバーに話し合ってもらうことも個人の能力開発、視野拡大、信頼関係強化、そして組織の結束化に繋がります。

また、研修を受けてより効果的なダイアローグの方法を身につけることもおすすめします。たとえば以下は、ダイアローグの基礎を学び、現場実践のための知識やスキルを体験ワークで身に着ける実践的なプログラムです。

リクルートマネージメントソリューションズ「ダイアローグ・ジャーニー ~創発と協働に効く!人・自己・課題と向き合い、探求する「対話の旅」~(203)」

研修に参加することでダイアローグのポイントを実体験し、実際に活用してみることで個々の能力開発、向上につながり、さらには全員が発信し他者に耳を傾けてもらう経験をすることで満足感が生まれ、結果として組織への帰属感や主体的な貢献意識に繋がっていくでしょう。

多様化が進む時代にこそ、オンラインやSNSなどデジタルツールに頼るだけでなく、発想力を豊かにするダイアローグを活用して組織全体の結束力を高めていきましょう。

ダイアローグ活用でコミュニケーションが円滑な組織を目指す

ダイアローグの概要やディスカッションとの違い、ビジネスでの活かし方やポイントを具体的にご紹介しました。
ダイアローグを活用することで、組織の一人一人が新しい価値やビジョンを生み出し、相手の話を傾聴する力が身につくと同時に個人発想力を強化し、また、主体的に創造力を培うことができるメリットがあります。
組織にとって大切なことは、一人一人が臆することなく自分の意見を伝えられる状態にあることです。
たとえば、新入社員であることを理由に遠慮をして自分の意見を自由にいえない組織では、心理的安全性が保たれていないといわざるを得ません。
誰もが自由に自分の意見をいうことができて、その意見を理解しようと周りが耳を
傾ける、そして自分の意見を聴いてもらえる環境であると感じられることが、組織の
中に信頼関係を築いていくことに繋がるでしょう。

※心理的安全性については、以下の記事をご参照ください。
心理的安全性とは?高い組織を作る方法、効果、メリットを解説

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