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効果的な求人票・求人広告の書き方!コツとNG表現も解説

求人票に記載すべき項目

企業が求人票を出す場合、必ず記載しなければならない項目は以下のとおりです。主な項目について詳しく説明しましょう。

<求人票の必須項目>

・業務内容

・契約期間

・試用期間

・就業場所

・就業時間

・休憩時間

・休日

・時間外労働

・賃金

・加入保険

・募集者の氏名又は名称

・派遣労働者として雇用する場合は、「雇用形態:派遣労働者」のように、雇用形態を明記

・受動喫煙防止措置の状況

参考:厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」

業務内容

求職者にどのような業務を行ってもらうのかを記載する項目が「業務内容」です。基本的な職種を記載し、求職者にどのような業務内容を行うのかを明示します。
職種として一般事務、貿易事務、秘書、営業、製造など、基本的な業種を記載して求職者にどのような仕事が与えられるのかを明確にします。
営業職であれば、担当領域を記載するなど、実際の業務内容を明確に記載し、求職者が就職したあとに行う仕事内容を、できるだけイメージできるようにするのがポイントです。

契約期間

「契約期間」とは、求職者を雇用する期間のことです。募集職種が正社員の場合には「期間の定めなし」の記載となりますが、契約社員やパートタイムの場合には、契約期間と更新の可否などを明記する必要があります。
また、試用期間がある場合は「試用期間あり(3カ月)」といった記載が、ない場合は「試用期間なし」といった記載が必要です。

就業場所

求人票における「就業場所」とは、採用した求職者が実際に働くことになる場所です。本社など企業の所在地と就業場所が異なる場合に、就業場所ではなく企業所在地しか記載していない例を見かけますが、必ず、実際に働く場所を明記する必要があります。
また、入社後に転勤などがある場合は、別途、転勤となる地域や場所を記載しておきましょう。

就業時間など

労働時間として、「就業時間」「休憩時間」「休日」「時間外労働」の4項目について記載する必要があります。

「就業時間 9:00〜18:00」「休憩時間 12:00~13:00」「休日 完全週休二日(土日、祝日)」「時間外労働あり(月平均20時間)」など、具体的な数字を記載しましょう。
また裁量労働制の場合は、「企画業務型裁量労働制により、○時間働いたものとみなされます。」といった記載が必要です。
休日に追加して、夏休み、年末年始、有給休暇日数についても記載しておくと分かりやすいでしょう。

賃金

「賃金」の項目には、月給などの基本給を記載します。月給の幅がある場合は、下限金額と上限金額を記載します。また、試用期間中の賃金が変わる場合には、その旨を明記し、実際の給料を記載する必要があります。
時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度(たとえば「固定残業代」など)を採用する場合は、以下のような記載が必要です。

① 基本給 ××円(②の手当を除く額)
② □□手当(時間外労働の有無に関わらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)
③ ○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給

最低賃金を満たさない給与で求人を募集することはできません。令和4年10月から最低賃金改定が施行されています。以下で確認のうえ、求人票には正しく賃金を記載しましょう。
参考:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

加入保険

「雇用保険」「労災保険」「厚生年金」「健康保険」など、各種保険についての明記も必要です。
その他の労働条件(企業年金や定年制、再雇用制度など)についても明記しましょう。特に定年制や再雇用制については、定年年齢なども記載すると求職者にとってわかりやすい求人票となるでしょう。

募集者の氏名又は名称 など

「募集者の氏名又は名称」「雇用形態」「受動喫煙防止措置の状況」の3項目は、2018年以降、記載が必須となりました。
「募集者の氏名又は名称」では、雇用主となる事業者名を記載します。
「雇用形態」については、派遣労働者として雇用する場合「派遣労働者」と明記する必要があります。
「受動喫煙防止措置の状況」については、「屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)」などといった記載が必要になります。
いずれもハローワーク等のサイトで書き方が紹介されていますので、参考にしてください。

参考:ハローワーク「求人申込書の書き方」
参考:厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」

求人票でNGとなる表現

求人票には、記載してはいけない項目や内容が法律によって決められています。たとえば性差別表現、年齢差別表現、国籍による差別、特定の人を差別・優遇する表現などは禁止されています。

性差別表現

性差別表現は「男女雇用機会均等法」によって禁止されています。
たとえば「主婦」は「主婦(夫)」に、「ウエイター、ウエイトレス」は「ホールスタッフ」にといった表記が求められます。
男女で異なる条件を記載したもの、たとえば「店舗スタッフ(男性:マネジメント経験あり、女性:未経験可)」なども記載できません。

年齢差別表現

年齢差別表現も禁止されています。特定の年齢に限って募集をすること(「募集年齢:40歳まで」など)、特定の年齢に対して条件をつけたような表現など(「40歳以上の方は適正による」など)は、認められていません。
ただし「若年者を採用し、(中略)キャリア形成を図る」ためや、深夜に行う業務の場合など、年齢制限が認められる「例外事由」を厚生労働省が整理しています。その場合も表記にはさまざまな注意が必要であり、詳しくは、厚生労働省のQ&Aなどで確認をしてください。
参考:厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」

国籍による差別

特定の人種や国籍を限定して、採用の対象外または対象とする差別や優遇措置のような表記をしてはいけません。
また、「外人」は差別用語に当りますので「外国人」に、「後進国」は「発展途上国」などの表現にするとよいでしょう。

特定の人を差別・優遇する表現

特定の人を差別・優遇する表現は労働基準法で禁止されています。居住地、身体的特徴や障害、性格などの表記をしてはいけません。
たとえば、「就業先近くにお住まいの方」→「土地勘のある方」、「ブラインドタッチ」→「タッチタイピングができる方」、「明るい方」→「接客に抵抗感のない方」、「体力に自信のある方」→「5㎏の荷物を運ぶ仕事です」など、性格ではなく能力に関する表現、客観的に判断しやすい事実を記載するようにしましょう。

最低賃金による求人

最低賃金法により使用者が労働者に支払う最低賃金を定めています。最低賃金は各都道府県別に定められており、最低賃金未満の募集を求人票に表記することはできません。

たとえば、求人票には「基本給25万円、残業代支給、年間休日115日」と記載されているのに、実際は給与の中にみなし残業代が含まれており、休日出勤もあるなど、虚偽の労働条件は職業安定法に抵触する可能性があります。

求人票の表記には十分注意して、偽りのない内容にしましょう。

参考:厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ~労働者の募集や求人申込みの制度が変わります~ <職業安定法の改正> 」(施行日:2018年1月1日)

参考:労働基準法 厚生労働省「労働基準情報:労働基準に関する法制度」

参考:職業安定法 厚生労働省「令和4年職業安定法改正について」(公布日: 2022年3月 31 日)

参考:厚生労働省「男女雇用機会均等対策基本」

参考:雇用対策法 厚生労働省「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律」

参考:最低賃金法 厚生労働省「最低賃金制度の概要」
最低賃金制度の概要|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

求人広告に応募が集まらない理由

求人広告を出しても、一向に応募者が集まらないことも多々あるでしょう。筆者はこれまで多くの企業の求人票を見てきました。その経験から、応募者が集まらない求人広告には、主に4つの理由があると考えています。

求人媒体のミスマッチ

よくあるのが、自社が希望している職種に合った求人媒体を利用していないケースです。求人媒体が多様化している昨今では、職種・業界によって専門の媒体があります。求人媒体ごとに特徴があるため、自社に合った媒体を選ぶことが必要です。

※求人媒体に関しては、以下の記事をご参照ください

求人媒体とは?求人媒体ごとの特長・違い・選び方をわかりやすく解説

職務内容が不明瞭

職務内容が明確ではないため、求職者にとって訴求が十分にできていない可能性のあるケースが多くあります。求職者は求人票を見るとき、どのような仕事なのか、具体的な業務内容を知りたいと思っています。
業務内容の記載が不足し、業務のイメージができない場合、求職者は集まりにくくなると考えられます。詳細を具体的に記載して、訴求力をアップさせましょう。

待遇面が他社と比較して劣っている

求職者は複数の求人票を比較して、よりよい条件の求人へ応募を検討します。同じ職種でも給与、年間休日、賞与、福利厚生などの待遇面で他社と比較し、劣っているのであれば見直す必要がありそうです。常に最新の採用市場を把握して、他社との比較検討をしていくとよいでしょう。

自社が求める人物像の条件が厳しい

希望の人材を求めるあまり、求職者に求める採用の条件が厳しくなりすぎてはいないでしょうか。採用に当たって完璧な人材に巡り合うことは、とても難しいと思われます。譲れる条件、そうでない条件等を再検討し、入社後でも習得可能な条件は外してみることも必要かもしれません。

求人広告を書く前にやるべきこと

人材を募集することが決まったら、やるべきことは何でしょうか。求人広告の作成を始める前に、どのような人材を採用したいのか明確にすることが大切です。

必要なスキル、技術、知識、実務経験は何か、任せる業務内容は何か等を話し合い、自社にとって必要な人材について、深く絞り込んでいくことで必要な人材像が明確になります。
さらに、明らかにした人材像を、採用に関わるメンバーで共有しておくことで、スムーズな採用につなげることができます。

効果の出る求人広告の書き方

魅力的な求人広告を作るには、仕事を探している求職者にアピールするポイントが、明確になっている必要があります。以下に、具体例をご紹介します。

キャッチコピー

求人のキャッチコピーとは、応募者を集めるために自社の訴求内容を印象強く伝え、求職者の注意を引く魅力的な言葉のことを指します。読めばすぐわかるように具体的な言葉を使いましょう。

【例】
地元に愛され50年 素材にこだわり続けます (地域密着型 飲食)
物づくりの原点から未来創造へ (製造業)
頼られる〇〇パートナー(IT業界)

親近感が持てる、安定している様子がうかがえるなど求職者の心をつかみ、応募しやすい表現を心がけましょう。

募集背景

求人募集をする時にはなぜその職種で募集をすることになったのか、その具体的な理由を書くことが大切です。

【例】

増員の場合:アジア市場への進出に伴い、人員を増やす必要があるため

欠員の場合:これまで担当していた社員が家庭の事情で退職するため

その求人が増員なのか、欠員募集なのか、またその理由を明らかにすることで、求職者の納得感が高まるでしょう。

業務内容

募集している職種の仕事内容をイメージしやすいよう工夫し、専門用語や企業独自の呼称を避けた表現で記入しましょう。
たとえば、「営業事務」と書く場合、「電子部品メーカーの営業事務」と詳しく書くことで、より具体的な内容になります。

【例】職種 貿易事務
主な業務は、商品の輸出入に関する海外代理店との折衝および事務手続きで、これらの業務が労働時間の60%を占めます(取り扱い商品は、コーヒー豆、冷凍菓子などです)。
その他の業務として、市場分析と生産管理をお願いします。

貿易事務およびそれ以外の業務内容も具体的に示されており、どのような業務なのかについて、具体的に理解しやすい表現で説明されています。

求人に関する特記事項

求人広告に書ききれなかった内容や応募上の注意事項、採用にあたって参考となる情報などを記載しておきましょう。

【例】
国内では〇〇社などの企業と取引実績があり、安定した収益を上げています。現在、多彩なバックグラウンドの方が在籍し活躍しています。今後はアメリカ、オーストラリア、インドといった地域にも販路を拡大する予定です。

企業の現状や今後の展開を情報として示すことは、応募を検討するうえで大きな判断材料となるでしょう。

求人票を作成する際は、求職者にとって明確でわかりやすいこと、安心できる職場であること、働くメリットがあることなどを具体的にアピールすることが大切だといえるでしょう。

常に現在の採用市場を確認し、他社と比較しながら求職者にとってより訴求力のある求人票を作成することで、より多くの求職者が集まると考えられます。