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コラム転職徒然草 - 採用する側の論理編

経営者の語る募集要項 (2013年10月30日)

ある日突然、教育事業のベンチャーA社のCEO:H氏から「海外進出のための、幹部社員を採用したい」というメールが送られてきた。それまでA社からの連絡はすべて人事経由で、我々がH氏から直接連絡をもらうのはそれが初めてだったので、驚きつつも早速A社へ出向いてみると、H氏は鼻息荒く自分の思いの丈を語り出した。

「定期的に参加している経営者フォーラムに、知り合いの社長が新しい社員を連れてきていたんだけれど、将来の海外進出を見越して、新しく採用した幹部候補だと言うんだよ。二人といろいろ話をして、A社もそろそろ海外進出に向けた人材を採用しなければと決断したんだ」

聞けば、『知り合い』の会社はA社よりも規模も従業員数もずっと少ないとのこと。まだ小さな会社が海外進出に向けて、数カ国を渡り歩いてきたグローバル人材を採用していることに、衝撃を受けたというのだ。

「とにかく、海外でビジネスが立ち上げられる人材。マーケティングや事業企画の経験が5年程度は欲しいね」

ただ、H氏の構想はまだ固まっておらず、当面の仕事も「まずはA社の通常業務を覚えてもらう」という。これでは、グローバルに活躍したい転職者にとって、魅力的な求人とは言い難い。

さらに、いつも打ち合わせをしている人事や他のスタッフに話を聞くと、次々と辛辣なコメントが飛び出してきた。
「あー、あの話ですか。いやあ、私にも指示はあったんですけど、エージェントさんには伝えなかったんです。他の会社の話を聞いて、羨ましくなっただけでしょう。すぐに熱は冷めますよ。そもそも、そんなキャリアのある人が、A社に入ってくれるわけがない、ハハハ」
「しかし、H氏は本気のようですよ。いい人がいれば、最初から自分が面接をするって…」
「ダメですよ。なまじ優秀な人に会ったら『年収はいくらでも出す』とか言い出しかねないんですから。やってもらう仕事もないのだし、お互いのためにならないのは目に見えています」

なんとか、あいだに入って両者の温度差を解消しようと努めたが、H氏は「これはトップが決断すること」と言って譲らず、人事は「部下が、そこまで社長に直接言うことはできません。エージェントさんが諭して、やめさせてください」と、自分が前に出ようとしない。そうこうしているうちに、転職者への求人広報は始まってしまった。

しかし、上にも述べたようにグローバルビジネスのキャリアがある人にとって、海外進出の計画があやふやなA社は魅力に乏しい。応募がないまま数週間が経過するなか、今回のグローバル向け求人ではなく以前から募集していた営業職に、変わった経歴の応募者があった。

Yさん(30歳)は難関国立大学を休学し、ボランティア活動のために海外へ。多くの国々を巡り、慈善活動に携わってきた経験があった。一般企業で働くようになったのは帰国後に大学を卒業してからで、年齢を考えると、キャリアが浅いと言わざるをえない転職者だった。そして、Yさんには良く言えば純粋、悪く言えばやや世間知らずのところがあった。

「日本と海外をつなぐ仕事がしたいと考えています。そのためのキャリアが積めれば…」
というものの、実はYさん、あまり語学力が高くはなかった。長く海外にいたので、日常会話はできるのだが、ビジネス上での経験が全くなく、別に応募した外資系企業の英語面接では、ブロークンイングリッシュだと不採用になっていた。
もちろん、マーケティングや事業企画の仕事をした経験もなく、とてもH氏が幹部候補として望んでいたようなタイプの人材とは言えない。A社の営業に応募したのも、なかなか転職活動がうまくいかないので、とにかく手広く応募していきましょうと話をしたなかで選んだ数多くのうちの一社だった。

A社でも、営業としての評価はそれほど高くなかったようだが、人事は何か感じるところがあったようで、YさんをH氏に引き合わせた。すると、これが大当たり。
「彼なら何年か先の海外進出時、中核になってくれそうな予感がする」
と、ぜひ採用したい旨の連絡があった。

経営者から「こんな人が欲しい」と夢のような希望を聞かされたのに、実際内定になったのは、ごく普通のキャリアの人だったというのは、実はよくある話。今回は、A社人事の機転で思わぬマッチングが成立したのであった。

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