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コラム転職徒然草 - 悲喜こもごも編

ライバル企業への転職 (2013年10月2日)

個人情報を扱う転職は、内々に進めなければならない。これはどの方でも同じだが、海外営業Sさん(41歳)のケースでは特に気をつかう必要があった。彼は、現職メーカーA社のライバル企業B社に転職しようとしていたからだ。

A社とB社は業界の国内ツートップ、長年しのぎを削ってきた競争相手だ。お互いのことは、主要な社員の顔や経歴まで、よく見知った関係である。両社は仕事内容・待遇・知名度…、あらゆる面でほぼ同レベルであったため、これまでA社・B社間の転職は稀なことだった。
特に、Sさんのように、A社で指折り数えるほど早い昇進を遂げ、将来が嘱望されているようなエースがB社に転職するのは、B社役員も「間違いなく初めての事例」と認めていた。

そうしたなか、転職を考えるようになったきっかけを、Sさんは我々にこう説明していた。
「これまでほとんど差の無かったA社とB社ですが、ここ数年、グローバル化のなかで徐々に得意領域が出来てきました。私のキャリアを最大に活かせるのは、A社よりむしろB社の方なんです」
自分の力を思い切り活かせる会社へ行きたい、それがメインの理由だと言うが、しかし、Sさんは個人の利益のためだけに、転職を考えているわけではなかった。

「長年、お世話になったA社を裏切るような行為に、気が咎めないわけではありません。けれど、A社B社以外の外資の競争相手をみていると、去年C社にいた人が、翌年にはD社、次はE社と、どんどん同じ業界内で動いているんですよ。そして、そこで人も企業も成長している。A社とB社も、両社でつばぜり合いをしているだけでは行き詰まると思うのです」
つまり、A社B社間の交流を活性化させる起爆剤になりたいというのが、Sさんの目論見だったのだ。

Sさん応募の連絡は、B社のなかで我々が接触できる最上位の決裁者(専務)におこなった。しばらくして、専務から直接
「B社で会うわけにはいかないので、ホテルに来てほしい」
という旨の連絡があった。

面接は、初回から2時間半を超える長時間の話し合いとなり、専務はSさんの考え方に理解を示し「Sさんを歓迎したい」という言葉もあったという。ただ、B社としては、その場で内定を確約したわけではなかった。社内での根回しが残っていたからだ。
Sさんは間違いなく即戦力だが、彼の存在によって昇進が遅れる者があるやもしれない。部署の現担当者や関係部署のマネージャーともすり合わせが必要になってくる。
「なんとか前向きに話を進めるつもりだから、しばらく待って貰いたい」
それから、Sさんは保留の状態が延々つづくことになった。

Sさんの正式内定が決まったのは、実に5ヶ月後のこと。
「長いことをお待たせして、本当に申し訳ありませんでした。Sさんのような転職者を迎えるのは初めてのことなので、ご理解ください」
人事からの連絡に、Sさんはホッとした様子で
「これで、ようやく退職届けを出すことができます」
と、笑った。

しかし、問題はまだ残っている。受け入れ側のB社ですら、これだけ揉めたのだ。寝耳に水で退職を聞かされたA社は、必死で引き留めをしてくるに違いない。Sさんは「両社交流の架け橋になるように」という転職の意図があるため、後ろ足で砂をかけるような辞め方はしまい。引き継ぎやら、何やらの名目で、転職時期を先延ばしにされる可能性もある。
この転職は、まだまだ時間が掛かりそうだと思っていた我々だが、翌週、Sさんは「今月いっぱいで退職ということになりました。来月の1日から出社できますので、B社に伝えてください」というメールが届いた。その日は月初ではあったが、退職まで4週間しかない。

この話を伝えると、B社からは喜びよりも、いぶかしむ声が先に聞かれた。
「そんなに早くて本当に大丈夫ですか?それとも、最初からSさんに何か問題があったのか…」
しかし、B社がいくら聞いて回っても、Sさんの悪い噂はまったく入ってこない。一方、Sさんに入社時期は間違いないかと確認すると
「A社にも理解のある人がいて、いろいろ骨を折ってくれたんです。それですんなり退職できました」
という。

それを聞いたB社専務は、苦笑いをしながら言った。
「いくら、理解があるといっても、Sさんに辞められるのを見過ごすのはおかしい。おそらく、彼は上層部の誰かの尻尾をつかんでいるんでしょう。辞められる自信があるから転職活動を始めたわけだ。これは私たちも気をつけないといけないかな…」

さすがにライバル企業へ転職しようという猛者だ。転職の準備は周到に済ませていたということらしい。

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