
「何から始めたらいいのか分からない」「アピールできるものがない」「やりたい仕事が分からない」──。
働くこと、仕事のことで悩んでいる第二新卒のみなさんに向けて、第二新卒の方々の転職エピソードを、毎週1話ずつご紹介します。
フリーターから正社員になれますか?
25歳でフリーター経験しかないという人は、決して珍しくありませんが、そこから正社員としての就職をするとなると、皆それなりに苦戦をしているようです。
プロのダンサーを目指していたA・Yさんの事例
●大学在学時からプロダンサー志望。オーディションに合格するなど、若干の実績有。
●フリーター生活を続けながら夢追うも、実家からの仕送りがなくなり苦境に。
●ダンサーの夢断念。フリーター生活を抜け出し、正社員になるべく就職活動開始。
未経験でも応募可能な求人にいくつか応募し、なんとか書類選考は通ったA・Yさん。しかし、次の関門<面接>で「仕事での実績が何もない自分は、何をしゃべったらいいのかわからない」となかなか転職活動そのものに積極的になれない様子でした。「ダンサー目指していたなんて言ったら、それだけで落とされるに決まっている」という思い込みが、彼を面接ダメ男にしていたのです。
けれど、ここ6年ほど、ダンス一色の生活だったのなら、その話をしない手はありませんよね!聞けば、A・Yさんは大学の後輩たちに発表の場を与えようと、イベントのオーガナイザーをしたこともあり、手掛けたイベントのなかにはテレビから取材が入ったものもあったそうです。「その話を面接でしたことはないの?」と聞くと「こんな話、しても良いんですか?」と不安げな返答。
ためらう必要なんて、ありません。
A・Yさんに正社員としての就業経験がないことは、履歴書を見れば一発で分かること。それでも企業がA・Yさんを呼んで面接をしたのは、ここに書かれている以外に、何かヒカるものを持っているかも知れないと期待しているからなのです。
「ダンスのことなら」と目が輝きだしたA・Yさんからは、他に中高生向けのダンススクールを作ろうしていたこと、ダンサーのためのホームページ作りに参加していたことなど、いろいろな話が飛び出してきて、さらに話に厚みが加わりました。本気でダンスに取り組んできたなら、必ずそのなかに自分なりに工夫したことがあるはず。それがマニュアル的でない、本当の自己アピールになるのです。面接官の心を動かすことは、意外とこういうことなのです。その後、A・Yさんがアルバイト情報のネットサービス会社に内定したのも、ダンス活動のリーダーシップの高さが評価されたからだったのでした。
資格取得に挫折したB・Kさんの事例
●資格取得を考えて、就職浪人。
●趣味は大道芸。資格の勉強よりこちらに熱中。ボランティアで幼稚園・養護施設をまわるなど活動。
●制度変更のため資格取得は諦め、就職を考えることに…。
資格に向けて勉強していたというのも、フリーターにありがちな経歴です。理由がハッキリしているので、企業も事情は理解してくれますが、それがすぐに評価につながるわけではありません。自分がなぜその資格取得を目指したかを明確に説明出来なければ、ダンサーのA・Yさん以上に面接で苦戦してもおかしくないのです。
B・Kさんとの面談からは、資格取得のための動機は説得性が弱く、それよりボランティアでやっていた大道芸の方が彼の思い入れが強く伝わってきました。たとえプロ志望でなかったとしてもA・Yさん同様、懸命に打ち込んできたことには、その人の魅力が隠されているものです。あとは、それをいかに仕事につなげて相手を納得させるかです。
とはいえ面接の場で大道芸を披露するわけには行きません。応募先の企業はショップを経営している会社です。さて、どうするか。
私たちはB・Kさんと話し合い、大道芸でつちかった手先の器用さを活かし、自作のポップを持参することにしました。ポップを見た面接官は、それを持参した理由を尋ねました。そこからB・Kさんは、自分が大道芸をやっていること。ボランティアながら披露した先での評判はまずまずなこと。大道芸は手先の器用さが必要で、イラストや工作が得意なこと。それは御社の仕事でも<販促ツールの制作>などで生かせることなどを話したのです。その話に、面接官はきちんと耳を傾けてくれました。
B・Kさんのように面接に何かを持ち込むようなケースは多くはないのですが、面接で評価されるポイントは企業ごとに様々です。でも、その人がこれまで熱意を持って打ち込んできたことほど、相手の気持ちを動かすものはありません。たとえ、それが仕事ではなく、趣味のハナシであってもです。ある会社の面接で惨々だったとしても、打ち込んできた何かがあなたの中にあるのなら、あなたのアピールポイントは「それっ」です!
キャリアアドバイザーからのひとこと
今まで打ち込んできたことは、最後の切り札になる。
採用面接で「仕事に関することしか話せない」「こんな話をしたら、ひとりよがりじゃないか」と、遠慮してしまう人が数多くいます。しかし、フリーター生活のなかでも熱心に打ち込んだこと、工夫して取り組んだこと、目的意識を持って頑張ったことがあれば、それを認めてくれる会社はきっとみつかります。応募企業の業務とうまく関連づけてアピールすると効果倍増。何も話さないよりは、好きなことを情熱をもって語る方がずっと良いのです。勝手にタブーを作ってしまって、自分の良さを消してしまわないように!