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人事戦略に使えるフレームワーク、活用するコツや立て方を徹底解説

人事戦略とは?

人事戦略とは、経営戦略に沿った人事業務の遂行を実現するための戦略です。人事は、企業経営に必要なヒト・モノ・カネのうち、ヒトを司る役割。つまり、「人材という経営資源を使って企業価値を最大化させること」が人事のミッションです。人事戦略は、人事が経営戦略や事業戦略の達成に貢献するための方法や道筋を示すものだといえます。

※人事戦略については、以下の記事もご参照ください。
人事戦略の立て方とは?進め方やメリットなど成功させる方法を解説

人事戦略の目的と課題

人事戦略の目的

上述した通り、人事戦略の目的は上位の戦略である経営戦略や事業戦略を達成することです。加えて、人事戦略を立てて組織内に示すことで、人事部の役割や業務を明確にすることも狙いの一つ。個々の人事担当者に任せる仕事やミッションについても、「何のためにやるのか」を分かりやすく示すことができます

人事戦略の課題

人事戦略の大きな課題は、直接部門である営業戦略や商品戦略、企業運営の生命線である財務戦略などに比べて、人や組織に関する戦略は間接部門の話として優先順位が下がりがちなことです。
しかし、経営陣が人事戦略を意識していないと、社内で人事戦略を立案できる人材も育たず、人事戦略が疎かになりがちです。場当たり的な人事施策に追われることが多くなり、人事の仕事を事業運営に活かしにくくなります。

人事戦略に効果的なフレームワーク

人事戦略を検討する上では、以下のようなフレームワークによって現状認識・分析を行ったり、打ち手を考えたりすることが効果的です。

SWOT分析

SWOT分析とは、マーケティングで用いられているフレームワークの一つです。下図のように、今自社が置かれている状況を縦軸「内部環境/外部環境」と横軸「プラス要因/マイナス要因」の4象限で整理します。

  • 内部環境×プラス要因…強み(Strength)
  • 内部環境×マイナス要因…弱み(Weakness)
  • 外部環境×プラス要因…機会(Opportunity)
  • 外部環境×マイナス要因…脅威(Threat)

に分けてみることで、客観的に自社を把握しやすくなる効果があります。

筆者作図

TOWS分析(クロスSWOT分析)

SWOT分析は、あくまでも現状認識・分析に用いられるため、より具体的な戦略を考えるために有効なのが、TOWS分析(クロスSWOT分析)です。「強み/弱み」を「機会/脅威」とどう掛け合わせるか、その組み合わせをフレームに合わせて思考することで、戦略の方向性や妥当性を検討していくことができます

筆者作図

ロジックツリー分析

ロジックツリー分析とは、一つの課題や目標に対して、その要素を分解して課題の真因や解決手段を特定していく手法です。
たとえば、「1年後に従業員規模を2,000名にする」という目標があるとします。これを実現するためには、「不足している○○○名を採用する」ことが必要な一方で、採用だけで達成できるとも限りません。「離職率を下げる(人が辞めない)」というアプローチも必要だと要素分解ができます。さらに、離職率を下げる方法には、「労働環境を改善する」「待遇を改善する」「やりがいを醸成する」など複数の要素に分解が可能です。このように分解していくことで、一番効果的な手段や、最も影響の大きな課題に辿り着くことができます。

筆者作図

フレームワークを活用するコツ

フレームワークはあくまでも手段

フレームワークは戦略を企画・立案するときに有効ですが、あくまでも考え方の枠組みであり、手段でしかありません。そのため、フレームワークを使うこと自体が目的化しないように注意が必要です。そもそも人事戦略は、経営戦略や事業戦略を達成するための戦略の一つです。人事戦略にフレームワークを活用する際は、本来実現したいこととずれないように、ワークシートの上段に書き留めておくなど、いつでも目的に立ち返れる状態にすると良いでしょう。

人事戦略の立て方・ステップ

必要な情報を確認・収集する

まずは、上位戦略である経営戦略や事業戦略を確認しましょう。短期戦略だけでなく、中長期の方向性や、企業の存在目的であるビジョン・ミッションをおさらいしておくことも大切です。

また、戦略を立てるうえでは、自社の人員体制や人事機能の現状を把握しておく必要もあります。採用マーケットの環境や人事のトレンドなど、社外の動向も戦略策定に役立つ情報です。

経営目標を起点として、人事の目標を決める

人的側面から経営戦略にどう貢献するのか、目標設定をします。単純化して例えるならば、ある年の経営目標が「売上200億円の達成」だとして、その実現のために人事が貢献できることを考え、「50名増員」という目標を立てるような流れです。

目標を実現するにあたっての課題を洗い出す

人事で立てた目標を実現するために、理想の人員体制や組織編成を描いて、現在の人員構成とのギャップを比べてみましょう。採用や育成、配置転換などで簡単にギャップが埋まることもありますが、中には、ギャップが大きく理想に到達するのが難しいものも見えてくるはずです。それを人事課題と設定し、解決すべき注力テーマとします

課題解決の手段を広く検討する

課題を解決していく上では、より効率的な道のりに進んだり、実現を阻む壁を取り除いたりする必要があります。その検討のため情報を整理して俯瞰してみることで、一つの解決策にこだわらず幅広い選択肢を模索することが有効です。

このように、人事戦略策定のプロセスには、現状を把握・整理したり、解決策を検討したりする場面が多くあり、これらのフェーズで思考のフレームワークを用いることが有効です。

人事戦略を検討する上でのポイント

人事部内の課題にも目を向ける

人事戦略は企業全体の人・組織について検討するものですが、いかに良い戦略を立てたとしても、実際に戦略を実行するフェーズ(採用や育成などの実務)でリソースやノウハウが不足していれば、その戦略の実現は難しいでしょう
戦略を描く際は、現状の人事部の体制や仕組みに無理がないかを確認することも大切です。必要であれば人事コンサルタントなど社外リソースを活用することや、人事部自体の採用をして戦力強化することも有効な手段の一つです。

※BPOについては、以下の記事をご参照ください。

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは?活用例や選び方を紹介

※HRBPについては、以下の記事をご参照ください。
HRBP(HRビジネスパートナー)とは?役割と求められるスキルや導入方法を解説

※RPOについては、以下の記事をご参照ください。

RPO(採用アウトソーシング)とは?メリットや依頼のポイントなど事例も紹介

戦略の内容を人事部内に留めず、企業全体にメッセージする

せっかく人事戦略を立てることができても、従業員や経営陣が知らなければ社内の協力が得られません。人事担当者だけで頑張っても推進には限界があります。経営戦略と接続する上では、経営へ提案し承認を得ることが欠かせませんし、従業員からの共感も必要です。そのためには、人事にだけ分かる専門的な表現に留めるのではなく、みんなに分かりやすく簡潔なフレーズ・スローガンをつくり企業全体に発信していくことも有効です。なお、こうしたメッセージの発信は従業員を通じたリファラル採用や、従業員エンゲージメントの向上にも効果的です。

※リファラル採用については、下記の記事もご参照ください。

リファラル採用とは?メリットや定着・促進させる方法を解説